占いを実行して、占いの意味を知る 【出会い】

2 / 5 ページ

次話: 占いを実行して、占いの意味を知る 【変化】

手取りいくらになっちゃうと思っているのよ。

それでも、会社の方針で鎌倉店はタイ古式マッサージをしません、と言われれば私にはすることがなかった。

 

あのまま整体師、やっていたら良かったなぁ。

後悔が頭をよぎる。

これが修行の結果じゃ、仲良くしてくれたお客さんたちに別れを告げて出てきた意味がないよ。

今すぐ他のお店に動くべきか。

いやいや、それは我慢が足りないんじゃないか。

根性なしなだけじゃないか。

でもダイエット合宿のスタッフ?

それが嫌なら渋谷で働け?

藤沢に引っ越してきたのに?

もう、自分でお店を持つか。

でも、ここで開業するの?

なんの地合いもないここで?

貯金もできてないし、今は厳しいよなぁ。

 

うーん、と唸っているときに、高校時代の友人から連絡が入った。

彼女は学生時代、ショートカットを金髪にして物理で100点を取るような子だった。

決して勉強ができなかったわけではないのに、行けたであろうに大学も受験せず、専門学校に進学し、卒業して実家に戻って就職もしたが、どうしてか数年経つと彼女の勤め先は閉店や倒産し、いつの間にか失業保険で暮らすことに慣れ、フリーターになり、今は無職だった。

 

30歳過ぎて無職で実家暮らしは結構辛いものがありまして、でもなんかやる気も出ないので友達に勧められた占いにでも行ってこようと思う、と言う電話だった。

 

へぇ。めずらしい。そういうの行くんだ。

私の最初の感想はそうだった。

もう本当に藁にもすがることにしたんだな。

頑張っていたのに、この10年、散々だったしね。

動物のしつけの専門学校にも行ったけど、ダメだったしなぁ。

それでも何かを変えるのに、占いかぁ。

それもありだけど、どう出るかなぁ。

 

当時、彼女の生きる気力はカスカスだったと思う。

何を言っても、どうせダメだし、と返ってくるばかりだった。

 

後日、彼女がそれこそ10年ぶりくらいに弾んだ声で電話をかけてきた。

引っ越すことにした。貯金もないけど、とにかく行けって。アルバイトでもなんでも時給850円で8時間働けば月に16万円にはなるから、とにかくそこから始めるつもりで行けって。

やってみようと思う。

 

彼女はとにかく実家を出たかったのだ。何を言われてきたのか、出るきっかけをつかんだ。

あんなに動かなかった彼女が、家を出るという。仕事も決まっていないのに。

長い付き合いだが初めて見る彼女の張り切りぶりに、私も興味を持った。

私もその占い師にみてもらいたい、開業するなら藤沢が良いか実家に戻るのが良いか、聞いてみたいと思った。

コイントスのようなつもりでいた。

裏が出るか表が出るか。どっちでも良かったのだ。鎌倉のお店を辞める決心がつけば。

私は今まで、自分がぐずぐず考える方ではないと思っていた。

それなのに次への動きに躊躇していた。守りに入ったのかな、年取ったな、くらいにしか思っていなかった。

 

彼女は私の生年月日と名前を占い師に伝え、費用は3万円だよ、と言った。

正直、今の収入で占いに3万円も出すのは痛かった。それでもまだ貯金はある。

これで踏ん切りがつくなら、かけてみるか、ぜんぜん見知らぬ第三者に、何が見えるのか聞いてみたいな、と思った。

なけなしの3万円、という金額が私の意識を変えるほどの投資になるとは、このとき全く思いもしていなかった。

 

予約の当日を迎え、八王子にある指定された事務所のドアを開けた。

そこは不動産業も営んでいたようで、パーティションの向こうで数人が電話の応対をしている。黒いソファがローテブルを挟んで並んでいる、応接室のようなところに通された。

占いの館、を想像していた私は少し面食らった。

 

こんな面接のような感じで占いをするのか。

 

私がソファに腰を下ろしきょろきょろと周りを見回していると、男の人がやってきて、私の目の前に座った。

顔の輪郭がずれて見えるほどの分厚いレンズの眼鏡をかけ、丸く出っ張ったお腹を包み込むようにズボンを履き、そうではなかったと思うが波平さんのような髪型をしていた。

著者の三輪 ミキさんに人生相談を申込む

著者の三輪 ミキさんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。