フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第18話

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高野聖子が神妙な顔で立っていた。


聖子とは入学以来、同じクラスだが

親しくもなく会話らしい会話をした記憶もない。


聖子はいわゆる、地味なタイプだった。

化粧っ気のない顔に古着のような服を着て、チョット太めな体格。

由美がよくダサイ女の代名詞と言ってネタにしていた。


それでも3年生になってからコンタクトに変えて

髪にパーマをかけたり垢抜けたという噂も聞こえていた。


そして、それは苗代のためではないかという噂もあった。


「何?」


「実は見たの」


「…?」


「あなたと苗代先生が一緒に歩いているところ」


「いつ?」


「一週間位前。あなた、すごく派手な服装してた」


もしかすると無理やり同伴させられたときだ。

嫌だったが、苗代がどうしてもと言うので

仕方なく応じた。

確か料亭で食事して、それからパテオへ行った。


あのとき、どこかで聖子に見られていたのだ。


「偶然会ったの。それでゼミの課題について

  聞いていただけだけど?」


私はできるだけ自然にそう言った。


「へえ…そうなの」


聖子はまだ何か言いたそうな顔をしていた。

「苗代先生って誰にも優しいでしょ。ああいう良い人が

  何か面倒なことに巻き込まれるのは、私嫌なんだ」


「え、それどういうこと?」


聖子は私をキッと睨んだ。

「前のあなたならともかく、今のあなたは

  苗代先生にふさわしくないって言ってるの

  今のあなたはただの不良だから」


聖子はそれだけ言うと、私に背を向けて

なぜか校舎の方へ戻っていった。


私は坂を下った。


面倒なことに巻き込まれてんのは私じゃない


情けないし、腹立たしかった。

昔から自分の方が彼女より優位にいると思っていた。

とんだ勘違いだった。

あの子からあんなこと言われきゃならないなんて。

私も落ちぶれたものだ。



また夜が来た。

そしてショーが終わるとまたあいつがいた。


また新しいボトルを開けている。

そして、最近お気に入りらしいへルプの茜の肩を抱いている。


「あれ〜?もう戻ったの?せっかくいいとこだったのに」

このデレっとした赤ら顔を今夜も見なくてはならないのだ。


座ってから、変な違和感があった。

ヘルプの茜が席を退かず、苗代にくっついたままなのだ。


私の怪訝そうな表情に気がついて苗代が

「あ、そうそう。これからは茜も指名することにしたから。

   なあ、茜。健気にもさ2人目の女でもいいって言ってくれたんだよ」


「は〜い。私健気な女ですう〜。ねえ〜〜ナシロ先生」


茜が苗代の腕に自分の腕を絡ませたとき


私はどっかがキレそうになった。

コイツら何!?

この人どこまでエスカレートすれば気がすむの!?

私は立ち上がった。


「あれ〜篠田、どちらへ?」


「化粧室です。ここでは杏って呼んでください」


私が言い背を向けると

「ゆっくりして来ていいぞ〜。

もうちょっと化粧濃くした方が俺の好みだ」


苗代の声に茜の笑い声がうるさくまとわりつく。


イラ立ちマックスの私に

待機中のホステスをからかっていた佐々木が

何か話しかけて来たが

聞く耳が持てなかった。

「イライラしてんな〜。今月何回目の生理だ、杏ちゃんよ」

という紛れもないセクハラ発言だけが

しっかり耳に届いて来たのも癇に障った。



茜の指名料まで入ると結構な支払いだった。

このままこれが続くのだろうか。



閉店した店では遅番のホステスだけ残される。

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