フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第18話

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私は更衣室に入り鏡の前に座っていた。

コットンで化粧を拭っていると

ホステスたちのヒソヒソ声が聞こえて来た。


「茜ってさ、今日指名多くなかった?」


「知ってる?1人は杏さんのお客さんだよ」


「え!?それってマズくない?」


「あ、でもね。茜から聞いたんだけどさ

   なんか、杏さんとその客の関係がおかしいんだっって…」


「えー!それマジ!?支払い杏さん持ちってこと?」


驚きと笑い声が聞こえる。

茜はすでに早帰りしてたし、帰り支度で急ぐホステスで

人口密度の多い中

彼女たちは私の存在に気がついていないようだ。


「じゃあ、ただってわけだよねー。その客どんな人〜?

指名してもらえないかな 。今月まだ一本も取れてなくてさ」


笑い声が大きくなった時だった。


「やめなよ」


という声がした。


そっと振り返って様子を見ると


店のナンバーワンのミサキが髪をとかしながら言った。


「そういう考え方、個人的に嫌い」


更衣室が静まり返った。


私はそそくさと鞄を持って外に出た。



地下からの階段を登りきったところに佐々木が立っていた。


「お疲れ様でした」


行こうとする私に佐々木が言った。


「杏、お前さ、なんかヤバイ状況なんじゃないのか?」


私は振り向いて佐々木を見た。


強面でガタイのいい男が派手なネクタイに黒いスーツ姿で

凄んで来たら誰でも真っ当な人間じゃないと思うだろう。


「別に…そんな」


「バーカ、オマエ、俺バカにしてんの?

   何も知らないと思ってたのかよ。

   脅されてんじゃないのかって聞いてんだよ!」


私は佐々木の顔をマジマジと見た。

初めてかもしれない。

柄にもなく、いつものふざけた薄笑いは1つも見えなかった。


私はその時、なぜだか

目頭が熱くなった。

私は小さくコクンと頷いた。


「でも、大丈夫です。なんとかします」


「そうか。マジで困ってんなら言えよ」


「はい」


立ち去ろうとする私に佐々木言った。


「それと…杏、コレ持っとけ」


私はそれを見た。

そしてそれを受け取った。

小さなテープレコーダーだった。









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