一人の発達障害児が、健常への道を諦めて天才に至る道を選択する話 4
雑草タバコを極める
カレーのハーブを吸ってみたり、雑草を片っ端から吸っていくに従って、色々なことが分かりかけてきた。
まず第一に、自分は「サイコアクティブ(向精神、意識変性)」の研究をしているのだということ。
大麻やアヘン、ヘロインやコカインが示すように、自分の精神を普段とは別の状態に持っていきたいがために吸っている、という方向性がそれだ。
だったらと、Encyclopedia of psychoactive plants(向精神作用のある植物の辞典)という洋書を取り寄せてみた。また、2chスレだけでなく海外のそういったフォーラムも覗いてみたりした。
またそれとは別に、「新しい形の漢方」の研究をしているのだということ。
翌日に軟便が出るバジル、お肌がつややかになる益母草など、自分の体を健康な状態に変えたいがために吸っているという方向性がそれ。ラマトゥルシーなどは本当にいい結果が出た。
吸って良かった草は情報系同人誌という形に編纂してコミケで売り、そのお金で海外から本と種を取り寄せ、育てては吸い、吸うだけじゃなく向精神作用を最大限に引き出す方法を探り、含有するアルカロイドの関連論文を引き……。
そして、一周回ってある情報に行き当たった。
アルバート・ホフマン博士の作り出したLSD。副作用なしで幻覚の見られる最高峰の幻覚剤。もちろんセッティング次第では極端なBADに入って精神を傷つけることもあるけれども、うまく使えば解鬱や曝露療法にと非常に優秀な心の治療薬となる。
サイコアクティブ研究者の末席を汚す者としては、目指すべき高みの一つだった。
そのLSDの作り方。
「LSDは、麦角菌の出すエルゴタミンという物質から作られた。エルゴタミンは菌がトリプトファンを食べたときに排泄物として産み出される」
有名な話だ。
じゃあ、トリプトファンを植物に食べさせたら?
ちょうど今育てていたボアカンガという木が目に入った。この木はイボガイン(LSDに似た幻覚アルカロイド)を産生する木だ。トリプトファンを水に混ぜて、腰水から与えてやる。
翌日か翌々日、いつも新芽から出る樹液が5倍くらい多めに出ていた。
(まじか……。これは、もしかしたら……)
海外では含有量があまりにも少ないということで見過ごされていたヤマハギに、トリプトファンを添加してやる。目標アルカロイドはDMTと5MeO-DMT。両方ともLSDに負けず劣らず幻覚性の強い物質だ。
もし、これで幻覚を見るのに成功したなら、自分だけの「本当に新しい概念」が見つかることになる。そうしたらなんて名前をつけよう。
この頃になると、もはや吸うという手段にこだわる必要はなかった。海外のフォーラムで仕入れた新しい概念「アヤワスカ・アナログ」の手法に則って、MAO阻害剤と一緒に煎じたヤマハギを飲み下す。
そしてそれは起こった。
瞼の裏で揺らめく水面。
その水底で笑いかける小さな豆。
赤、橙、水色とカラフルな降り注ぐ櫛の歯。
完全なる幻覚。目を閉じていても明るい、ひまわりの種のような配列の光たち。フィボナッチ数列。
こうして、雑草タバコ研究は二年弱の歳月を経て、新しいところまで辿り着くこととなった。
が、しかし。
ドヤ顔でフォーラムに書き込んだら「それ、過去にすでに研究されてるよ」と指摘をくらう。
どうやらカナリーリードグラス(クサヨシ)の含有DMT量を増やすためにトリプトファン添加が有効だということはすでに海外で指摘されていたようだ。
何がクリプト−ファン栽培法だ!死ね!死んでしまえ! ていうか死ぬ!死んでしまう!恥ずかしさで死ねる!!
天才への道のりは遠く厳しい。
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