【第18話】離れて暮らしていた父の介護のこと、死んだときのこと、そしてお金のこと。
甘いもの祭り
老健に入ってからも、私と姉は毎週のように面会に行った。父は麻痺があるものの、内臓的な点では何ら問題がないため、ご飯さえきちんと食べられれば、基本何でも食べて良かった。
唯一、グレープフルーツだけは高血圧の薬に影響してしまうのでダメだったが。
父は昔から酒もタバコも一切やらない。ちなみに母は酒は好きだがタバコは吸わない。
なぜ娘二人は酒もタバコも好きなのか。どこの遺伝もってきた。
老健に関わらず、集団で生活するところは大体禁酒・禁煙だ。そういう意味では、そこで苦労する(させられる)ことがなかったのは助かった。
その代わりなのかは分からないが、父は甘いものが大好きだ。
フルーツ、スイーツ、いちご牛乳、ミルクティーなどなど。
病院では基本的に飲食の持ち込み(?)は禁止だったので、私達はここぞとばかりに、お菓子やらフルーツを買ってきては父に食べさせた。
あまりに口に詰めるので、皿のものを遠ざけると、まあ怒る怒る。
怒ったところで、少し時間を空ければ、それを忘れてしまうのだけれども。
でも、私達はできるだけ父に食べてもらいたかったから、父が体調を崩さない(お腹痛くなったりしない)程度を踏まえて、できるだけ色々持っていった。
きっと、食べられなくなったら先は長くない。
食べられる時に、できるだけ美味しいと思えるものを、一緒に食べたかった。
ワガママ大王降臨
家族水入らずで過ごせる時間ができ、それはとても幸せなことだったが、同時に困ったことも起きた。
父は昔から外面がいい。ものすごくいい。
認知症になっても、そういうのって変わらないのね。
部屋からデイルームに移動するときは、ヘルパーさんにニコニコしていたのに、3人になった途端
そして怒りとともに最初のトークに戻り、以下ループ。
同じ会話を続けるだけなら全然よいが、怒りだけが積み上がっていく。
なだめすかして切り上げるのだが、プンスカしている父と別れる時の悲しさよ。
せっかく来たのに!という苛立ちもあって、モヤモヤしながら帰ることも多々あった。
そして、私達は次の一手をうつ。
父との「外出」だ。
つづく
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