11月の3話 先生のお迎え

前編: 11月の2話 パリでまずピンチ
後編: 11月の4話 着いて1日目にすること

 ピンチを切り抜け、無事にブレスト空港へ着いた。ブレストという言葉は、世界の果て、という意味でもあるらしい。パリから西へ、モンサンミッシェルを北に見ながらまだ西へ、ずっと海まで行った場所、そこがブレストだ。

 空港では、予め連絡を取っていた、フランスでの指導教官が待ってくれていた。半年振りに見るその笑顔にホッとした。異国で自分のことをケアしてくれる人の存在はとても大きい。ひとまず安心だ。

 先生に長旅を労ってもらいながら、先生の車に荷物を詰め込み、まずは研究所へ向かって道路を走った。

 ブレストは、大きな都市ではない。それでも市役所があるような中心部はそれなりに都会で、両側にお店が立ち並ぶ大通りがあり、生活に必要なものは一通り揃い、映画館やプールなどの施設もある。大学があり、学生も多く暮らしている。

 北大西洋に抜ける湾に面した地形を生かし、以前はフランス一の軍港だった。しかし大戦で壊滅的な被害を受け、急いで復興したために、街の中の建物の大部分は、素っ気無いコンクリート造りで、あまり装飾の凝った建物はない。当時要塞だった建物は、博物館として残っている。郊外では、きれいに舗装された道が小さな町と町とをほぼ一本道で繋いでいる。道の両脇は芝生の土地が多く、たまに牛や馬の放牧も見かける。

 天気は冬の間は大体曇天、もしくは雨。日本と比べて、雲の高度が低い。雲というよりは、森や芝生からの湯気が、5、6階建てくらいの高さの中空で留まっているというような印象を受ける。手が届きそうに近いけど、届かない。風に流されるスピードも早く、見ていると、風の強さを連想して寒い気分になる。日本では雲の流されるスピードはとても穏やかで、見ているこちらも穏やかな気持ちになるものだが、こちらでは逆に気が落ち着かずソワソワしてしまう。

 しかし、たまにしかないが天気のいい日は、それはそれは美しい景色を見せる。雨が多いおかげなのか、空気に水分を含んでいるような透明感がある。

 殆どの日について風が強い。そのため、傘はあまり活用されず、自分のコートのフードをかぶって防いでしまう場合が多い。日本に比べて雨の粒が小さいので、それで十分な場合が多いのだ。

 ともかく、そんな場所が、これから1年間お世話になる研究生活の舞台である。

続きのストーリーはこちら!

11月の4話 着いて1日目にすること

みんなの読んで良かった!