フツーの女子大生だった私の転落に始まりと波乱に満ちた半生の記録 第33話

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後編: フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第34話

《これまでのあらすじ》初めて読む方へ

あることがきっかけでショーパブ「パテオ」でアルバイトをしている大学生の桃子は、少しずつ頭角を表し店のナンバーワンを目指し、ついに頂点に立つ。ところが恋心を抱いていた佐々木が突然店を辞め、店を取り仕切る立場の玲子に裏切られていたことを知った桃子は、玲子をいつか見返すことを誓う。そんな最中、ひいきにしていたシンヤというホストが半ば自殺のような形で死に至る。それに激怒したシンヤの同僚に恨まれるも、桃子はあえて冷酷な対応をし自身を奮い立たせ、本当の意味でパテオの頂点に立つべく、ある男に急接近するのだった。その男とは!?



私が、この男にこんなにも近づく日が来るだなんて

誰1人想像すらしなかっただろう。


私は男の部屋にいた。

都内の一等地に立つタワーマンションの最上階

ホールを思わせるような広々としたリビングルーム

見事なシャンデリアの真下にある高級皮のソファーに座っていた。


部屋の至る所に洒落た置物に混ざって民芸品のようなものが配置されている。

シーサーらしきものが目立つのは、男が沖縄出身だからだろう。


リビングのドアが開き

バスローブ姿の男が現れた。


「それ面白い?」


男は、大きなテレビの画面に向かって言った。

ハリウッドの人気シリーズ最新作が画面に映し出されていた。

ちょうど男たちが激しく銃で撃ち合いを始めたところだ。

酷い仕打ちをされた男が復讐するシーンだ。


「ええ」


嘘だ


本当は内容なんて、ちっとも頭に入ってなんかいない。

そもそもバイオレンスアクションは全く好みではない。

男の部屋にその類のDVDしかなかったせいだ。


「日本にも銃があったら、こんな感じなのかな」


私がそれとなく言うと

男は豪快に笑った。


「そりゃいい。今頃パテオなんか客や女たちの争いで血の海だな」


私は男の方を見た。


そこには浅黒い肌にちょび髭の小柄な初老の男が立っていた。

いつもの若作り風な派手なスーツにサングラスをしていないせいか

パテオを始めいくつもの店を経営している川崎は普段の姿より老けて見えた。



川崎が私のすぐ横に腰を下ろし

私の肩を強く引き寄せて来る。

目と目とが合う。

すぐにでも私を押し倒したいという目と…

これでもナンバーワンホステスだ。男の欲望などお見通しだ。


「やだ〜髪の毛まだ濡れてるじゃないですか」


私が恥ずかしそうに言うと


「ああ、そうか」


ハハと笑いながら川崎は立ち上がり、キッチンへと消えた。

冷蔵庫を開ける音がする。


私はホッとため息をついた。


きっとこの後、あの男と一緒にシャンパンを傾け合い

少しだけ言葉を交わせば

男の髪は乾くだろう。


そしてまるで口笛でも吹くように私に触れてくるだろう。

あの手慣れた動作で。


何回いや何百回、ここで女たちを押し倒したことだろう。

もちろん

あの玲子もだ。




今となってはオーナーの川崎は私の切り札だった。


パテオの本当の頂点に立つための…


でも、その切り札を出す決心をしたのは

最近のことだった。


前の晩に風邪気味だったにもかかわらず

客がどうしてもと言うからアフターに付き合った。


客は日本でも最大手メーカー会社の専務だった。

高級料亭で芸者まで呼んでご満悦だった。

週3回来客し、大金を使って帰っていく

金回りの良い客としては大切な1人に違いなかったので

同伴やアフターも月1ペースで付き合うことにしていたのだ。


ベッドに入ったのは、すでに明け方近かった。

悪寒があったが眠気の方が勝って、昼頃までぐっすり寝た。


ただし起きた時の症状は最悪だった。

身体中がギシギシ音を立てるように痛む。

這うようにして体温計で測ると38度を超えていた。


よりによって、その日は金曜日だった。

 受話器越しの佐野はとても困ったように


「知っての通り今日は杏さんのためにいらっしゃる

  お客様は二桁になる予想です。中には今日お誕生日の澤田様や

 駐在員の三上様も来る予定です」


澤田はテレビにもよく出る有名なジャーナリストだ。

三上は海外も含め飲食店やホテルを100以上経営している男で

日本と海外を行き来しており、多忙な中なんとか時間を作って

私に会いにくるのだ。

   

「でも熱あるし、お酒にも付き合えないから

まともな対応できないと思うし今日は勘弁してくれない?

ミユでも相手させといてよ。ね、」


ミユはまだ18歳で店でも人気急上昇のホステスだった。

可愛くて若い子でもつけとけば、とりあえず機嫌を損ねまいと

思ってのことだ。


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