高卒でライン工をしていた僕が上京して起業する話-No.4(ラスト)

1 / 2 ページ

前話: 高卒でライン工をしていた僕が上京して起業する話-No.3

最初のストーリーはこちら


そうだ起業しよう



僕はまだ会社を辞めていない。

この話は僕がこれから起業する話しだ。


このストーリーを書き始めた理由は、起業という人生を左右する一大イベントを前に決意出来ずにいる自分を奮い立たせるためだ。そして自分の今までの人生を総括し、自分自身を見つめ直すためだ。


起業を決意した理由は入社して3年が経った頃、今から1年前に遡る。



違和感を覚え始めた日々


この頃から僕は副業のモチベーションが続かないでいた。


僕は完全に満たされていた。
別に貯金で何かを買った訳ではない。


仕事では役職を与えてもらい、自由に仕事をやらせてもらい、部下を教育し、大きな案件を任されるようになった。


僕はアイデアやビジネスモデルを考えるのが好きだったので、新規事業案を社長に相談してOKを貰い、予算を確保してもらった上で、自分で考えたビジネスを会社で始めたりしていた。


誰よりも仕事が好きで結果を残せていたので、前の職場同様、人から信頼してもらえるようになった。


仕事が終われば、みんなで飲みに行き、休日も会社の人達と遊びに行ったりと、物凄く充実した日々を過ごしていた。


僕にとっては人生の全てを占めると言っても過言ではない仕事で、自分の好きなことが出来て、人間関係が良いこの環境で、何一つ不満がない状態だった。


上流階級の人達から見れば、社員10人程度の会社で高卒として勤務する僕など、大した事ないと思うが、それでも僕は満たされていた。


しかし物凄く、違和感がある。


その違和感の原因は、すぐにはわからなかった。


ただ、この時は本業以外、何かに熱中出来ないでいた。僕は今まで不安を糧にモチベーションを保ち続けていた。


・高卒で人脈も金もない東京で暮らせるのかという不安

・チラシ配りからネット事業部に移動した時の不安

・副業を始めたけど果たしてこれで稼げるのかという不安

・素人に近い状態で転職して色々な仕事を任された不安


何も持たなかった僕は色々な不安があった。

だからこそ頑張れた。何かを犠牲にしてまで昼夜問わず頑張れた。


そんな努力もあってか、今では安定した楽しい毎日を暮らしている。幸福度は間違いなく田舎の工場時代より高いはずだ。


しかし、この頃は帰宅すると「NHK以外見ない、アニメ・漫画を読まない、毎日勉強する」といった自分に課したルールを破るようになり、テレビを見たりスマホでゲームをするような日々を過ごしていた。


たぶん、殆どの人達がそういった日常を過ごしているのだろう。ただ、僕は今まで自分自身を成長させるために、あらゆるものを制限して自己管理していた。


帰宅して何も頭を使わなくて良い毎日を何ヶ月か過ごすようになった。テレビやゲームは楽だ。悩みや心配事があっても現実逃避できる。


そんな日常を過ごす内に、違和感・虚無感を覚えるようになった。


「この人生、俺じゃなくても良くね?」

そんなことを自分自身へ問いかけるようになった。


ゲーム上の主人公をいくら鍛えて、いくら課金しても、実際の自分には何のインセンティブもない。全て仮想上の話だ。日本代表の試合を応援して日本が勝っても、自分の人生には何の恩恵ももたらさない。所詮は赤の他人だ。


ドラマに感情移入して泣こうが、やっぱり自分の人生には何ら関係がない。


一方通行な情報は、知らぬ間に考えることを放棄させていた。


僕はなぜ上京したんだろう。


工場時代に聞いた「アンパンマンのマーチ」をふと思い出した。


「何のために生まれて、何をして生きるのか、答えられないなんて、そんなのは嫌だ」


僕は生きる意味・目的を探しに東京へやって来たはずだ。しかし今では日常に流されてしまっていた。


受動的に、受け身に生きてしまってはダメだ。

僕はまだ何も答えを見出だせていない。落ち着くのはまだ早い。


僕が人生の主人公なんだから、当事者意識でこの人生を能動的に生きて、答えを探さないと。


今の日常には何一つ不満がない。

あるとすれば自分に課したルールを破っていたことくらいだ。


ただ不満がないことが何よりも不満だった。違和感の原因はこれだった。

そして僕はまた、新しい風を感じたくて仕方がなかった。


上京した時、一人暮らしを始めた時、副業を始めた時、転職した時...。そんな時にはいつも心地よい風が吹く。


そしてその風はちょっとしたチャレンジでは吹いてくれない。未来が想像できないくらい不安に駆られた時に吹く、不安とワクワクが入り混じった風だ。


不自由だからこそ本当の自由を感じれるように、不安や不満があるからこそ、本当の満足・幸福を感じれるのだろう。


新しい事を始めて周りが見えなくなるくらい熱中している時に、生きてる事を再認識できる。幸せが何かはわからないが、そんな熱中出来るモノがあるとワクワクして毎日が楽しい。


「明日はどうなるんだろう?何が起きるんだろう?」

明日でさえ想像がつかないような日常を過ごしたくなった。


今の会社に勤務し続ければ、数年後の未来が容易く想像できる。副業をやりながら、それなりに楽しく毎日を過ごしているだろう。


しかし、それじゃ僕は本当の意味で満たされないのだ。例え上場企業に転職して年収1000万円を貰っても、僕は満たされないはずだ。


お金や安定では幸せになれない。満足できない。


そうだ、起業しよう


気がつけば起業のことばかり考えていた。


入社する3年前から密かに考えていたことだ。


ただ、色々な社会経験を歩む中で起業というのはどれだけリスクが高いことかを知った。起業5年目で80%が倒産すると言われている。


会社では経営者のような気持ちで働いていたが、サラリーマンは事業に失敗しても自分の財布は一切痛まない。しかし起業して失敗すれば最悪のケース自己破産だ。


僕は満たされた環境を自ら手放すのに躊躇した。工場時代の自分から見れば間違いなく大出世している。これ以上は望み過ぎなのかもしれない。


今まで能動的に色々とチャレンジ出来たのは失う物がなかったからだ。何も持っていない、何者でもなかったからこそ、失敗を恐れずにチャレンジ出来た。


しかし今では、このホワイトな職場の環境に縛られてしまっている。良好な人間関係と大好きな仕事を見つけたので、失う物が出来てしまった。


色んなものが足枷となってしまい、新しいことをするのが億劫になっていた。

著者の森井 良至さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。