既婚44歳IT系会社員の俺が寅壱のニッカを返品交換する理由(1)

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私が初めて寅壱を身につけたのは、上京して二年目の夏でした。
今から23年前のことです。
当時、バブル崩壊とかいって騒々しい世の中だったように思いますが、夜学でワンダーフォーゲル部の私には、全く関係ない話でありました。
夜学の学生達は、日中働いているわけですが、私は何をやっても長続きしませんでした。早起きが苦手な上に、安いバイト代が末締め翌末振り込みとか言われて、最初の給料日を待てないことも多々あり、頻繁に「日払い」の現場作業アルバイトを利用していたわけです。
ところで、工事現場の学生アルバイトというのは、概ねジーンズ&Tシャツ姿で、一見してそれとわかるお粗末な身分でした。本職の鳶や左官は、老いも若きもニッカに地下足袋です。
最初のうちは気にもしませんでしたが、それなりに現場慣れしてしまうと「僕、バイトの学生です」みたいな恰好が恥ずかしくなってきました。それは、本職の人たちに対してではなく、自分より経験の浅い学生バイトに対しての意地でした。
でも、こちらも同じ穴のムジナ、技術がないのに職人面するほど馬鹿じゃない。所詮、ジーンズに足袋を巻く学生バイトに過ぎないわけです。そして、こちらが迷惑するほど頑張っちゃって、「たまにはイイネ!こういうバイト」とか言って、シャンプーの匂いを振りまく小奇麗な学生バイトに舌打ちする無精髭の私…。
そんな折、バブル崩壊の影響が出始めました。「明日出ます」「おう、よろしく!」で出勤が決まる、それまでの日雇い・日払いの事務所が「週5日じゃないと無理だ」と言いだしました。5件ほどの事務所に登録していましたが、ある時期から、軒並み同じことを言われました。
そして、やっと見つけた週3程度週末払いの事務所で、履歴書を持参した日に、寅壱の上下を支給されたのでした。

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