『イラスト奮闘録。イラストレーターになりたい、と走り続けた日々の物語』第14章「厳しくなる仕事状況と、道半ばの別れ」

1 / 3 ページ

前編: 『イラスト奮闘録。イラストレーターになりたい、と走り続けた日々の物語』第13章「いざ、飛躍の年」
後編: 『イラスト奮闘録。イラストレーターになりたい、と走り続けた日々の物語』第15章「展示会と、ルポの仕事と、震災と」

その1「自衛隊基地をルポする」

この年の夏、ペチカ・イラストスクールで
お世話になったHさんから、お仕事の依頼が
ありました。それは自衛隊について書かれた
某作家さんのエッセイに、イラストを付ける
と言うものでした。

自衛隊は私にとって全く未知の世界です。
本来なら作家さんと一緒に取材に行って、
同じ経験をして描くのが理想的ですが、
今回の場合は作家さんの取材は既に済んでおり、
文章もほぼ仕上がっていました。

出来上がった原稿の内容が、わりと専門的なので
イラストを入れて少し柔らかさを出そう、と言う様な
意図での依頼でした。
それなら出来上がっている文章を読んで、それに
見合った絵を入れればいいのですが、この場合は
本当に対象が専門的過ぎて、映像イメージが
全く掴めません。また正確に描くにあたって、
かなりの知識や資料も要したので、お願いして
私も基地に赴き、追体験させてもらう事になりました。

こうして担当さんと二人で、航空自衛隊の入間基地を
訪れたわけですが、ここは折しも2年前、輸送機で
硫黄島に運んでもらった時と同じ場所でした。

自衛隊員の方の貴重なお時間を割く事になったので、
スムーズに取材できるようにと、事前にあらゆる資料を
入手し「自衛隊について」を一から勉強して臨みました。
例えばDVDを見たり、新聞記事や本を読んだり、
自衛隊関係の資料館に行ったり。
その甲斐あってか「こんなにちゃんと勉強して来て
くれる人は珍しいです」と隊員の方にも喜んで頂けて、
穏やかに取材できた事が印象的でした。

イラストレーターと言う仕事は、時としてこういう
特殊な所に入れてもらえたり、知らない世界について
勉強する機会があります。そのたびに「ルポが描けると
自分の世界が広がって面白いな」と、素直に思います。


その2「初心に戻ってデッサンをするべし、と人は言う」

ペチカ・スクールで、レベルが高い人たちに
囲まれ、衝撃を受けてから早1年が経とうと
していました。その間ずっと「私の絵は
何だか薄っぺらい気がする。 でも人と比べて
どこが違うんだろう?」と考えていました。

するとパレット時代の同級生が「もっとデッサンを
するべきですよ」と指摘してくれました。
デッサン?
この仕事を10年以上も経験して来て、
作品も沢山描いてきたつもりなのに、今更
初心に戻ってデッサンですって!?

けれど確かに、実際に絵がうまい人達を数人捕まえて
話を聞くと、どの人もみんな美大入学時や、入学後に
『嫌って言うほどデッサンをした』という答えが
返ってきました。なるほど。
そもそも私は美大に行っていないので、きっと何か
根本的な基礎の部分が緩いか、欠けているのかもしれません。

なので急きょクロッキー教室を見つけて、
数回通ってみたのですが、指摘をくれた
友人曰く「クロッキーではなく、やはりデッサンをすべき」と。
実は私、この時点でクロッキーとデッサンの区別すら、
良くわかっていなかったのです。

荒っぽい説明をすると、クロッキーは短時間でササッと
対象を捉えて描く物、デッサンは時間をかけて対象と
向き合って、その材質感やら陰影やらをじっくり描きとるもの
…と言う感じでしょうか。ともかく私には、描く物の姿を
しっかり見据える訓練が必要だったようです。

そこで試しに「短期集中デッサン講座」を行っていた
教室を訪ね、2日間、朝から夕方までみっちり
描いてみました。わずか2日で技術がどうにかなる
ものでもないのですが、とりあえず「デッサンとはどういうものか」
「私の何が足りないのか」を知る意味で、有効かもしれない
と思っての参加でした。
すると確かに、デッサンはものすごく対象物をじっくりと
観察し、その物の持つ全てを鉛筆一本でしっかり捉えていました。
語弊を恐れずに言うなら、執念深い感じです。

すると同時に、今まで見えていなかった部分が、見えてきました。
この「見えてきた」感覚を、言葉で表すのは少し難しいのですが
デッサンの先生の言葉をお借りすると、ずばり「調子を取る」。
少なくともその言い現し方が、その時の私にはしっくりきました。

そもそも私は子供の頃、マンガが好きで、それが高じて
イラストの世界に入りました。だから私が描くものは
基本形が二次元なのかもしれません。
実際の仕事では、それでも問題はないのですが、
それでもどこか、作品全体の「薄っぺら」な感覚は
拭えませんでした。

「物は二次元じゃなくて、三次元で構成されているんだな」
と、言う事に気が付き、そしてそれを意識して、描くことを
覚えた貴重な経験でした。
相変わらず3歩進んで2歩下がる様な、土台を
踏み締めながら、コツコツと経験を積み上げていく
日々でした。


その3「一段と厳しくなる仕事状況」

みんなの読んで良かった!