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13/5/17

憧れのインターネットベンチャー

Image by Olia Gozha

会社が始まって1年目の冬。スタッフの数も20人ほどになり、社内では好調なレンタルサーバーを運営する傍ら、ドメイン取得サービス、ブログASPサービス、ショッピングカート機能の3つのプロジェクトが走っていた。

そんな中、お客様担当の他に広報とマーケティングの担当だったボクは、社長と東京で開催されるブログのイベントに参加していた。日本でも2002年頃から目にするようになったブログであったが、ロリポップ!ではその当時主流だったMovable Typeというブログエンジンのインストールにレンタルサーバーとしてはいち早く対応し、Movable Typeを使うならロリポップ!とPRしてブログブームを牽引してきた・・・・・・・・つもりだったのだが、福岡で地味に活動してきたボクたちは会場の片隅で丸くなりながら、インターネットで有名な人達の姿を眺めていた。主催していたのは京都のドリコムというベンチャー企業だったが、福岡でマイペースにやっていたボクたちとは明らかに異なるエネルギーを持っていた。あれが、ベンチャーというものなのか。あれがインターネットのムーブメントなのか。


イベントが終わり、慣れない東京をさまよいながらできたばかりの六本木ヒルズに立ち寄り飯を食った。そろそろボクたちも東京を意識しないとね、そう社長と会話をした。そうして2003年は終わった。



2004年。モチナガさん主導で進められていた「ムームードメイン」は国内最安値のドメイン取得サービスとして華々しくデビューした。原価ギリギリの価格設定、今までにないデザイン、変なサービス名とそのインパクトに加え、年末のイベントに参加した際、東京のメディアへ事前の広報活動をした成果もあって、大きな反響となった。出だしは好調。これなら国内最大手のサービスを抜けるかもと、期待に胸を膨らませた。


ある日のこと、いろいろな会社を買収して事業規模が大きくしている上場企業であるエッジの堀江社長が福岡で講演するというので社長と講演を聴きに行った。堀江さんは講演の中で「創業メンバーは上場時にみんな辞めた。創業時のメンバーは能力も後から入ってくる人間と比べて劣ってしまうので、残っていると後で面倒ですよ。」という趣旨のことを事を話された。上場には遠い存在だったものの、このままpaperboy&co.が大きくなっていく過程の中で、ボクは面倒な存在になってしまうのか。もともと自分で会社を立ち上げたいと思っていたので卒業後も実家のある鹿児島へ帰らずに働き続けていたのは、小さな会社でいろいろなことを経験すればいずれ自分で会社を始めたときに役に立つはずと思っていたからだ。そろそろどこかで辞めるタイミングを見つけなければならない。


ちょうどその日、講演から帰ってきた社長宛に1通の封筒が。それはM&Aのエージェントからのものだった。資本提携のオファーだ。先ほど名刺交換をした堀江さんもpaperboy&co.の事を知っていたし、知名度が上がってきていると実感できた。その後、エッジともう1社からも資本提携のオファーが入ってきた。


その数日後、大名のとあるホテルのレストランで、グローバルメディアオンラインの熊谷代表、インターネットインフラ事業担当の渡邊取締役とお会いした。上場企業としての話、創業時の苦労話、乗っている車、手帳を常に持ち歩き夢を全て書き残しておくんだという話。ボクたちとは住んでる次元が違いすぎる。そのオーラに圧倒されてしまった。


さらに、ぜひ東京へ遊びに来てください。ということで、社長と二人で東京へ。叙々苑にさえ行ったことがなかったのに、さらにその上の游玄亭というお店をご馳走になった。通された部屋にはグローバルメディアオンラインの幹部、一方右も左も分からないボクらは終始ガチガチ。ありがたいお肉の味を嚙みしめることはできなかった。その後、初めての六本木。お酒を飲まなかった社長に代わり、全てのお酌を受け、高そうなワインとテキーラを飲み干した。


次の日、会社見学として渋谷の東急セルリアンタワーにあるオフィスへ伺った。渋谷で一番目立つビルに構えるオフィスを社長が見学している一方、ボクはトイレに籠もっていた。昨晩のハッスルによりダムが決壊していたのだ。トイレから戻り、社長は熊谷代表の部屋に進まれたということで、ボクも後を追った。2日酔いでうつろになっているボクがその部屋で見た光景は、社長が熊谷代表とガッチリと握手をする姿だった。


「家入社長、これからよろしくお願いします!」「あっ、はい、こちらこそ。」



2004年3月、paperboy&co.はグローバルメディアオンラインのグループとなり、ボクたちにインターネットベンチャーらしさが芽生えてくるのであった。



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