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17/4/17

新卒で証券会社に入社して1年間で100件以上の新規開拓を達成し、3億円の資金を導入した話(17)

Image by Olia Gozha

30万円の投資信託


社長や税理士の先生方によく、高崎の銀座通りのバーやラウンジに連れていかれた。

かなりさびれた商店街が高崎駅の近くにあって、そこに多くの夜の店があったのだ。

容姿が綺麗なお姉さんがたくさんいる店は苦手だったのだが、だんだんと僕も回数を重ねると慣れてきたのか、楽しくなってきた。

仲良くなった社長や税理士の先生と話が盛り上がり、朝まで飲み明かしたことも度々あった。

そんなある日、K先生の知り合いである税理士先生から電話があった。

F先生である。

F先生の事務所はなかなか大きい事務所だった。

むしろ、税理士事務所というより、経営コンサルタントの会社だ。

F先生の顧問先で、資産運用で相談があると言われたのだ。

僕は、資産運用の相談は久しぶりだなと思って、F先生に会いに行った。

F先生「どうも。実は顧問先で、投資信託を所有している社長がいてね。ちょっとみてあげてほしいんだよね。投資の知識はさっぱりで。」

「畏まりました。」

F先生「これが、所有している投資信託の一覧だ。3つあってね。許可をもらってるから、中身を見て、それを顧問先の社長に解説してほしい。」

なんてことはない。

本業なので、どういう投資信託なのかは調べればすぐに分かる。

しかも、よく銀行員が勧めるようなありきたりの投資信託だった。

持っている金額も合計で30万円くらいだった。

30万円の投信。

証券会社の人間にとっては、どうでもよい金額だ。

100~1000万円以上の投資信託を取り扱うのが証券会社にとっては普通の世界。

普通の証券マンならば、30万円の投信の案件は、もしかしたら嫌な顔をするような金額かもしれない。

面倒くさがる先輩も多い。

けど、僕は違った。

自分の成績などどうでもよいのだ。

僕は税理士のために仕事をすると決めたのだ。

僕は、30万円の投信の解説をする仕事を快く引き受けた。


社長へ、投信の説明

社長「初めまして、▼▼社の代表のRです。K先生から話は聞いてます。母が生前持っていた投信があってね、ずっとほったらかしにしてたの。ハガキは毎月届くんだけど、わかりづらくて。いったい何円持ってるのかもわかんないのよ。」

「初めまして。K先生から紹介で来ました。○○証券の福元です。証券会社から来るハガキはわかりづらいですよね。持っている金額も保有している口数で記載されていて、1口の価格も変動するものだから、はがきに何円か書いていないんですよ。」

社長「いったい何円分の投信を私は持っていることになるのかしら?」

「本日の金額になると、3つの投信を全て合わして、約30万円ほどですね。」

たったそれだけ?という怪訝な顔を見せた。

口数でいうと、100万口とあり、結構な金額があると思っていたのだろう。

社長「儲かってるのかしら?」

「分配金はかなりたくさん出ていますね。ただ、元本の金額も考えると、多少損をしていますね。結構、この投信はリスクの高い商品なんですよ。」

社長「知らなかったわ。このまま持っていたほうが良い?それとも売ったほうがいいのかしら?」

「今お持ちの投信は、ASEAN等の新興国に投資する投信なんです。今後ASEANは成長する余地がまだまだあります。特に、インドはIT産業が盛んであり、人口も増加する国なので今後の経済成長も期待できます。もし、今現在急なお金がいるというものでないならば、そのまま保有しておいてもよいとは思います。他の投信を購入すれば手数料もかかってしまいますし。ただ、日本株等に比べると為替リスクもあるので、安全な資産としてお持ちするのがご希望ならば、売ってしまってもよいと思います。」

社長「どうせ放ったらかしにしてたものだしね。ならば、そのままにしておこうかしらね。」

「良いと思います。とても良い運用先であると思いますよ。お母様のこの投信への投資判断は間違ってないと思います。」

社長「ありがとう。たった30万円ぽっちのお金のためにわざわざ来てくれて。」

「お礼なんていいですよ。」

社長「何かできることはないかしらね。おすすめの投信でもあれば、買おうかしら?」

「ありがとうございます!その気持ちは大変うれしいです。ただ、本日はK先生から投信の説明をしてくれと言われたもので、こちらから金融商品をお伝えすることはできません。そして、なんとなくで私も金融商品を勧めてしまっては、社長を損をさせてしまった時に大変申し訳ないです。もし、社長が自ら資産運用をお考えいただいたならば、その時にご連絡いただければ幸いです。」

数十万円でも投信を勧めていたら、買ってくれていただろう。

けど、繰り返すが、僕は今、成績なんてどうだっていいのだ。

とにかく、変に商品を勧めるのは辞めておこうと考えたのだ。


後日、私はK先生から電話があった。

K先生「やあ。先日は社長のところへいって投信の説明に行ってくれたんだね。ありがとう。めちゃ喜んでたよ。」

「本当ですか?よかったです!」

素直に嬉しかった。

ずっと前のK先生の紹介でした失敗を、許してもらえた気分だった。

K先生「そしてさ、社長がおまえのことを知り合いの人に話したみたいでさ。その知り合いがお前に会いたいっていうんだよ。」

「本当ですか?」

K先生「とても仲良い人らしくて、ぜひ会ってあげな。」

僕は、社長が紹介してくれる人と後日、3000万円以上の取引をすることになるのだが、この時は知る由もなかった。

続く

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