姉として妹の夢を叶えたかっただけなのに、給食のおばちゃんからローチョコレート職人へ昇華した妹の話<5章>
「価値は自分で決める」
妹が多くの人に声をかけられるようになり、そのうえで考えるべき課題が出てきた。
その課題とは「ローチョコレートの位置づけ」、つまり「価値」。
いいものだから、沢山の人に知ってほしい。
沢山の人に知ってもらうには…
「値段、下げないとかな…?」
妹もこのワナにハマりかけていた。
もちろん、妹自信がローチョコレートの価値を一番わかっているので、闇雲に値段を下げようとしていたわけではない。
この時期、イベント出店などの話や委託販売の話も舞い込むようになり、多くの人に知ってもらえるチャンスが目の前に現れたからこその葛藤だった。
「小さな子供がいるママたちにも食べてもらいたい」
「子供たちの口に入れるチャンスをいっぱい作ってあげたい!」
思いが純粋すぎて、たまに見ていて心配になるほどに妹は素直な面も持っている。
私も子供がいる身としては、その気持ちはよくわかっていたし、同じ思いがあったからこそ新潟でローチョコレートを広めよう!と妹プロデュースを決めた。
だが、私からすると「値段を下げること」がそのチャンスを活かす方法だとは思えなかった。これも自分のかつてのミス…で痛感したことだったからだ。
ローチョコレートの価値が十分に伝わった後ならば、一時的に安くするのはアリだったが、まだこのときはその時期ではなかった。
でも、実際にこんな声はあった。
「1個300円とか400円じゃ。普通のママは買えません!」
「高いってだけで売れないよ?知ってもらうなら安くしないと!」
私も間接的に言われたことがある。妹の耳に入れないまでも。
で、どうしたか?
これを今読んでいる人の中で、妹が安くローチョコレートを売り出さなかったことを快く思わなかった人は当然いると思う。
それは、妹が…ではなく、私が「うん」と言わなかったことと、妹に「うん」と言わせなかったこと。決して妹がお高くとまっていたということではないことだけはここで伝えておきたい。
「人の財布は心配するな」
私が妹以外のクライアントにも共通していつも言っていること。これを伝えるとクライアントはみんなびっくりしている。
「1個300円とか400円じゃ。普通のママは買えません!」
「高いってだけで売れないよ?知ってもらうなら安くしないと!」
実はこれらの言葉は「言ってる本人の価値観」ということがほとんど。
これを多勢の意見だと勘違いして受け止めがちな人も多く、こんな意見を取り入れまくったらどんなに良い商品でも最後には0円で配ることになってしまうからだ。
世の中、お給料が同じ15万円でも「良いものにはお金は惜しまない」という人もいれば、「安いは正義!」という人もいる。
相手の財布を心配することは一見いい人のように思えるが、真実は…
ということなのである。
お客様のために…お客様目線で…お客様に喜んでもらえるように!と言いながらも、隠れた言葉が潜んでいる。
「価値の分からないお客様のために」「価値のわからないお客様目線で」「価値の分からないお客様に喜んでもらえるように」
もちろん妹も驚いていた。
「そういう風に考えたことってなかった…」
そして、
「自分がそう思われてたら…ムカツク…かも(笑)」
売る側が売る前からお客さんを見下している感じすら実はするのである。
良いものを「価値以上に高く売れ!」ということではない。そんなことをしたら詐欺だからね。
だからといって良いものを「提供側が本来の価値を下げるようなマネしてまで売る必要」もない。
実際に、原価からどう計算しても1個500円というゴディバを超えた価格で売らなければ、妹はローチョコレートを作り続けることはどうやってもできない。
本当にローチョコレートを必要としている人たちに届ける前に、辞めてしまったら本末転倒。100円でローチョコレートが欲しい人は、ローチョコレートじゃないものでもいい人たちなのである。
むしろ、1個500円で手に入れたことで
「やったー!念願のローチョコレートを手に入れた!食べることができたー!」
という感動体験をすることで購入者自身が自尊心を上げる1つの行動になるものこそが「良いもの」だと思っている。
特に食べ物ならば、口にしたものが人を作ると言われている。
それは栄養という意味でも、心を作るという意味であっても、だ。
1個500円のチョコレートは高い。チョコレート業界の中では圧倒的に高い。
だけど、お客様からしたら「手が届く」金額。ちょっとした勇気。ちょっとした勇気が世界を一気に広げる。商品以上の価値はそこにある。
「100円じゃなきゃ買わないです」
という人は結局、ローチョコレートじゃなくても、何を見ても100円じゃなきゃ買わないのである。それがアクセサリーであっても、化粧品であっても。
「100円」が好きな人たちに、売る「価値」はないのである。
だって、「100円」こそが「価値」だからね、そういう人たちは。
売る相手を決める!?
「売る相手を決める…ですと!?」
妹はドキドキしていた。いい意味のドキドキではない。どちらかというと恐怖の「ドキドキ」の顔だった。「また、ねーちゃんがとんでもないことを言っている!」というときの顔だ。
「それは…上から目線のような…!」
と言われ「あ、やっぱり勘違いしてるかも」とちょっと「プププ」と思った姉の私。
これまで価値を分かって応援してくれていたお客様もいる。
価値がわかるお客様を今後も大切にしていくための必要なことが「売る相手を決める」ということ。
今後どういった商品を作っていくか、ぶれない主力商品を作るためにも必要なこと。
価値がわかって購入してくれている人たちが一番イヤなのは「価値がわからない人と一緒にされること」。
その人たちのために良い商品を作り続けるために「お客様をふるいにかけなければいけない」のである。
これを読んでいる人の中でも「何様?」と思う人はいると思うが、もしそう思うなら次からの話は読んでもらわなくてもいいと思っている。
さきほどの「安いは正義」に価値観を持つ人たちは「自分のためにお前の価値を下げろ」と言ってることに等しく、価値相当でお金と商品を交換する人たちは「私はこの価値を手にするにふさわしい」と思えている人たち。
この2つの真逆のお客様を平等に扱ってはいけない。
平等に扱ってしまったら、結局どっちの層も大事にしていないことになるからだ。
「安いは正義」というお客様には「安いは正義」という価値観のクリエイターが商品を提供してくれる。妹がわざわざフォローすべき層ではないし、それをしたらそのクリエイターたちの仕事を奪ってしまうことになる。
いろんな人たちの中を荒らすことになるので、平和に仕事をするためにも絞ること。
一通り、こういった説明をした。
話を聞き終わった後には
「あー。そう言われればそうだー。別に上から目線でも何でもなかったぁ(ホッ)」
と妹は少し余裕を取り戻した。
「なんかねー、みんなの(すべての)要望に応えなきゃって、どっか思ってたんだよね」
「でも、みんなの意見に応えるのは自分ひとりじゃ絶対無理だとも思ってた」
応えられない要望もある。
ってことが自分にはあるんだなと思えたら、何をして、何を捨てていくかが決まる。
応えられなかった要望は、応えられるくらい大きくなってからでいい。
「今できることの中で、最大限をやっていくために、決めなきゃね!」
↑妹は素直が取り柄だなとつくづく思う…。
と妹が自分の生み出す商品に「ぶれない価値」をつけることに取り組むようになってから、さらに妹のローチョコレートの物語が加速することになった。
続く・・・・・・・・・・・・・。
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