姉として妹の夢を叶えたかっただけなのに、給食のおばちゃんからローチョコレート職人へ昇華した妹の話<6章>

前話: 姉として妹の夢を叶えたかっただけなのに、給食のおばちゃんからローチョコレート職人へ昇華した妹の話<5章>

「心拍数」


価値を上げていく。
とはいえ、カリスマを目指そうとか、チョコレート業界の重鎮に下剋上を仕掛けるわけじゃない。

世界に名前を轟かせているパティシエ、ショコラティエに挑むつもりでローチョコレートを始めたわけではないからだ。

妹がローチョコレートにのめりこんだのは

・自閉症の自分の息子にとって、よい食材だった

・アレルギーの子供たちが食べられるチョコレートを作りたかった

・自分自身のチョコレート中による肌荒れにも悩んでいた(私もだけど)

といった理由。


その理由のどこにも誰かに勝とうという思いはなく、私が妹にローチョコレートの情報を伝えたのも純粋に「妹は子供のそばで仕事をするのがいいだろう」と思っただけ。

 

ローチョコレートを作り続けてきた結果的として新しい働き方も確立できて、小さなころの「ケーキ屋さん」という夢ももれなく叶いだしているだけ。

周りの人たちに響く要素があったとしたら下手な小細工や演出や計算なんてしなかったことが功を奏したのだろうと思う。(そもそも妹に関しては素直さだけが取り柄と言ってもいいほど計算ができるようなタイプでもない)


大好きなチョコレートをひたすらブラッシュアップ。

それをそのまま発信し続けていた。

今どき流行らないかもしれない「いいもの追究」をずっと発信してただけ。


でも、世の中、「いいもの」を好きな人がいる。母数としてはとても少ないけれど。そういった人たちが自分たちのために1つ買い、ドキドキして心拍数マックスでチョコレートを口に運んでくれた。そのドキドキを伝えたくて友達に紹介してくれたり、SNS上で感想を上げてくれるようになった。


そこに「高い」なんてことを書く人はいなかった。


いいものに敏感な人は、自分の心拍数にも敏感な人が多い。心拍数は意識的にコントロールできるものではないから。妹がローチョコレートを見つけたときも同じように高鳴ったと思うし、私も「これだ!」と思ったとき、ローチョコレートと妹の実現したい働き方、チョコレートを食べた人たちがどう反応するかのイメージが繋がったとき…もう妄想段階でバクバクしていた。


心拍数って、連鎖するらしい。


「1つの悩みなら必ず解決できるもん」


妹は最初のころ超健康志向の人と勘違いをされた時期があって実は悩んだことがある。

周りのイメージ通りにそういう自分になって売り出し続けるかどうかという悩みだった。


妹はマクロビの人間ではないし、今はやりの肉も魚も卵も食べないようなヴィーガン、菜食主義のベジタリアンでもない。押し付けるような健康志向ではなくて、どちらかといえば「代替えの1つ」としてローチョコレートと向き合っている。


「今まで口にしてきたものを一気に全部を変えるなんて無理だよね」

「在るモノの中の1つを変えることで、いろいろなことを意識して変えていくきっかけになるといいよね」


という会話が妹と私の間ではよく交わされている。だって、世の中には美味しいものが沢山あるんだもの。美味しいものが好きな人間が美味しいものを辞めるなんて無理だもの。健康な人間なら。


できないことはやめよう。演出なんかしてもそんなもんスグ続かなくなるし。嘘のない素直な提案をしよ?

ということで、

贅沢の仕方の1つを変える…小さな悩みの1つを必ず解決できる贅沢なチョコレートがあるよ?

と等身大の提案をし続けていくことになった。


ブレない価値


いいものを高価格で売るなら誰でも出来るけれど、誰もが持つ小さい悩みが1つ減ることの方が「価値」だと思ったから。


妹のローチョコレートに何か魔法があるとしたら、


・罪悪感を消すことができる魔法


例えば、

真夜中に食べるチョコレート。これにはいつも罪悪感を感じてしまう。肌に良くないと分かってるから。これが習慣になっているチョコレート中毒の場合、習慣に簡単に打ち勝てる人間なんてほとんどいない。甘さの後に襲ってくる罪悪感は最悪。


例えば、

アレルギーのせいでチョコレートが食べられないケース。少なからず自分の子供にアレルギーが出てしまった場合、母親としては何かしらの申し訳なさを感じてしまう。お腹にいた頃の自分の生活や、引き金を作ってしまった原因が自分にあるのでは?と一生感じながら育てるのだろうと思う。(少なからず私は自分の子供に対してはそう感じてしまっている※そばアレルギーだけどね)


例えば、虫歯や肥満を心配しながら食べてしまうチョコレート。自分が食べるにしても子供に与えるにしても、愛する人にあげるバレンタインにしても。食べさせといて歯を磨きなさい!と怒らなきゃいけない場面がある。お酒もたばこも外食もほどほどにしてね!と言いながら企業戦略に乗せられて砂糖メインのチョコレートを渡す矛盾。心のどこかで感じてる矛盾の中に罪悪感が見え隠れしている。


少なくとも、この3つの小さな悩みは解決できるローチョコレート。だけど、この小さな悩みは小さいのに根が深くて、ズルズルと解決しない悩み。良くないとわかっていながらいつでも手が届いてしまうゆえの悩み。

 

これはチョコレートだけの話ではなくて、誰しもこういった小さな悩みを作ってはずっと抱えている。心のほうが生活習慣病になっている悪癖だらけ。すべての悪癖を解決はしてあげられないけれど、その1つは確実に減らせるのなら、胸を張って提案し続ければいいだけの話だった。


「仕事で忙しくてお昼ごはん抜いたけど、ローチョコつまんで乗り切れたよ!」

「残業で食べたけど肌が荒れるどころか逆に肌ツヤが出て「」

「風邪、ひきにくくなった気がする」


という声はこちらから入れ知恵したこともなく、純粋に生活の中に置いていたチョコレートをローチョコレートに置き換えた人たちの感想。


感想が続々アップされるようになり、ローチョコレートを作って2年たった頃、大手企業もローチョコレートに注目しだし、低価格のカカオ重視のチョコレートを陳列し始めた。


「ありがとう、ロッ●さん」


と感じたのはそのおかげで地方のメディアがローチョコレートの情報を集めだしたことだった。



続く


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