地下芸人を辞めて会社員になって感じたこと

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おつかれさまです!


あ、このままじゃボケる(汗)!!


そう思った僕は、平日の語数を取り返す勢いで土日にとにかく人と会って喋りまくった。

そうやって精神のバランスを保っていた。

普通に社員の人に話しかければいいじゃんと思われがちだが、僕は会話をすべて拾いあげてツッコミを入れてしまう性格ため絶対に失礼なことを言う自信があった。なのでうかつに話しかけることが出来ない。

現に社員さんたちのわずかな会話のやりとりもツッコミたくてしょうがないのだ。

だから、僕にとってメッセンジャーは違った意味で便利なツールだったのかもしれない。


しかし、それからまた数週間が経つと当たり前のようにメッセンジャーでやりとりする自分がいた。

特に会話も無いが、その分は会社の外で補っているので問題ない。なんだかそういういう状況を内心楽しんでいたりもした。

このあたりから完全にオンとオフの自分が出来上がってきていることに気づくのだ。



仕事のオンとオフ

オンとオフの切り替えというフレーズをよく聞くが、僕は会社員になってはじめてそれが理解できた。

それもそのはず。地下芸人の場合、オンとオフの境目があまりない。

強いて言うなら仕事の大半がライブのため、ステージに立つときがオンなのかもしれない。

だが、ステージを降りたからと言ってオフになるわけではないのだ。

『売れるため』には、ステージを降りた後も何かしら考えて行動する必要がある。

ネタをつくり、ネタを合わせ、ネタ見せオーディションに行ったりする。その間にブログを書いたり、SNSで次のライブ告知をしたりなど売れるためにやることはたくさんある。だから常にオンの状態なのだ。


それと比べると、どうしても会社員というのは毎月給料が振り込まれる保証がある以上、ハングリーさに欠けている印象を持ってしまう。

通勤電車のつり革には『本気』というワードを使った就職サイトの広告が貼られていたが、僕が目の当たりにした社員の方々は早く帰るために本気で仕事をこなしていた。

会社員は『生活のため』に働いている。芸人は『売れるため』に生活している。

薄々勘付いていたが、働き方や仕事に対する考え方はやはり根本的に違うのだ。


仕事があることへの感謝

芸人時代は仕事なんてほとんど無かった。あったとしても驚くほどギャラが安かったり…。

仕事を取ってくるのは事務所の仕事ではあるが、当時の事務所はそこまで機能していない。

なぜなら売りになる芸人がいなかったからだ(悔しいが)。


だからライブにお客さんを呼んで知名度を上げていくしか自分たちに出来ることは無かった。

僕はこの時に仕事をもらう為の苦労を知ったわけだが、会社員になって驚いたのは常に仕事があるということ。

やってもやっても次々に新しい仕事が舞い込んでくる。

地下芸人からするとこの状況は売れていることに値する。さすがの株式会社だ、信頼と実績が違う。

社員の方はみんなやってもやっても仕事が舞い込んでくることに対して、


社員
あーこの案件あと少しで終わるぞ~
営業
はい!次の仕事(ポン)!
社員
休みが欲しい・・・


と嘆いていたが、僕からすると幸せな悩みでしかなかった。

営業してくれる人がいるってこんなにもありがたいことなのだと、制作部の誰よりも自分が思っていたに違いないだろう。


仕事が欲しい・・・
営業
あるよー(ポン)!
あざっす!


これも自分で仕事をしてみないとわからないことなのかもしれない。

僕は会社員になって組織の強さを知ったのだった。



福利厚生が最強

そして、会社員の素晴らしさを存分に味わえたのは福利厚生だ。

『完全週休2日制』

『交通費全額支給』

この2つだけでも涙が出そうだった。


飲食店の深夜バイトで生計を立てていた自分にとって土日祝を休めるというのは衝撃的な特典だ。

ゴールデンウィークを全日休んだのも数年ぶりの気がする。


そして、東京に来てはじめて定期を買った。

当時住んでいた杉並区から会社のある渋谷区まで自由に乗り降りが出来るようになったので休みさえあれば渋谷または代々木公園に繰り出していた。

芸人時代は池袋・新宿・渋谷は自転車移動圏内である。移動にお金をかけるなんてもったいない。

普通の人からしたら特にありがたいものでもないのかもしれないが、僕からすると気絶しそうなくらい嬉しい手当に感動していたのは事実だ。


芸人と会社員でわかりやすく違うことと言えば、福利厚生といった保証の有無だと思う。

芸人は保証が無いところで勝負している分、当たればデカイ。しかし、当たる保証なんかあるわけない。そんな中、ブレイクを夢見て乏しい生活を送っている。

一方会社員は会社に守られている。これほど安心なものは無いとつくづく思う。

僕が芸人だった頃はそういった保証というぬるま湯に嫌悪感を示していたのだが(とがってたので)、こうして与えられてみると本当にありがたみを感じてしまう。


僕は会社員になって視野が広がった。ちゃんと社会との接点を持つことも出来た。

会社のルール、社会のルールというものを知ることが出来た。

確かに会社員をやっていると納得できないことも多くあるが、僕は芸人から会社員になったことは後悔はしていない。むしろこのような経験を重宝している。

実を言うと今ではその会社も辞めて個人で仕事をしている。しかし、それも会社員の経験があってのことなのだ。

保証の無い生活から会社員を挟んでまた保証の無い生活に戻っているというのも自分自身なかなかおもしろいストーリーだなと感じるのであった。


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次第に自分にとって当たり前になってくる

このように会社員にとっては当たり前のことでも、元地下芸人のフィルターを通すと見え方や感じ方が違ってくるということが僕の言いたかったことです。

しかし、人間の慣れというのは怖いものでこの会社に入って1年する頃には入社当時の違和感やありがたみなどはだいぶ薄れて当たり前になってくるのです。

それが良いのか悪いのかわかりませんが、今回の記事で元地下芸人が会社員になった時にどんなことを感じているのか、その一例を知って頂ければ僕はそれで満足です。


余談ですが、1年後からこの会社は徐々にブラック化してきまして…当たり前のことすら出来なくなってきます(汗)。そのあたりから個人で働く考えが芽生えてくるのですが・・・。

それも今後、どこかのタイミングで書けたら良いなと思っています。


長くなりましたがこの辺で終わりたいと思います。

最後まで読んでいただき、


『どうもありがとうございました~』



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