独立系?ユニオン、組合との遭遇 その5

前編: 独立系?ユニオン、組合との遭遇 その4
後編: 独立系?ユニオン、組合との遭遇 その6

ユニオンからの断行要求書に対して弁護士の先生の助言を入れた回答書を作成し、こちらもファックスで送る。日時、場所はこちらから指定。いよいよ関ヶ原?

場所はXX区民センター。

初めて行ったのだが驚いた事に各種団体のイベントで沢山ある部屋がほとんど満室。

割り当てられた部屋は普段ダンスの練習でもする所なのだろうか壁中に鏡が張り巡らせてある。

(蝦蟇の油のカエルみたいだな)

傍らにある物置のような部屋に椅子や折り畳みの机がうず高く積まれているものをいくつか出して来て2m程離して平行に並べる。

これで交渉場所は完成。

時間になるとざわざわと人が近づいてくる音が聞こえる。

⁉️

マネージャーと一緒に入って来たのは二人の初老の男性。

そう言えばこの建物に入ってくる時に入口の側の椅子に冴えない爺さんが二人の座っていたのがこの二人だった。

(これがユニオンの構成員? 随分とくたびれているなあ。半世紀前の闘士かいな。)

そして自己紹介で明らかになるのだが、この二人がXXユニオンの最高幹部。

組合委員長と書記長だと言う。


委員長は背が低く丸顔。ちょっと見がタレントの谷啓の様だ。

書記長は歳の頃からすると長身でメガネにグレーの髪。売れない作家の様な感じだ。

どちらからも反体制派、左翼思想に染まっていましたという雰囲気がありありと見て取れた。

場慣れしているのだろう、ニヤニヤと笑いながら静かに話を始める。

「連絡させてもらった通りこの人が我々のユニオンに接触して来て、会社に不当な取り扱いをされていて困っているので助けて欲しいと言う事で話を聞きましたが、こりゃ君達明らかに不当解雇だよ。」

と、マネージャーの方に頷きながら話を続ける。

「と言う事で断行を申し入れましたが、了承ありがとうございます。」

言葉使いは丁寧だがその奥に秘められた厭らしさ、相容れないものを感じ取っていた。

「こちらからの要求は2つ。

まず会社は自らの非を認めて本人を原職復帰させること。

そして今回の件に関する慰謝料としてXX百万円を払う事。」

(ほー、そう来たか。原職復帰だけでなく慰謝料も要求するのか)

それからマネージャーから聴取したと思われる一方的に会社が悪いストーリーを延々と並べあげる。

黙って聞いているのが認めている様に取られるのが嫌だったので言葉を挟んだ。

「と、そちらの解釈だけを一方的に述べられても事実と違うのですから。」

先程から売れない作家の方ばかりが喋っていて、谷啓は時々頷いたり体を揺らせているだけで何も喋らない。

(何か頭が悪そうな委員長だな。何で委員長に選ばれたんだろう。)

売れない作家が返す。

「本人が言っているんだから間違いないだろう。

それに人が喋っている最中に口を挟むとはどういう教育を受けて来たんだ。」

かなりカリカリしている。

(こう言う連中は自分が喋っている際は元気だけれど、理屈で責められると急に弱くなるタイプに違いない。)

人事部長がおちょくる様に、

「教育論や学歴について話すつもりですか。訳分かんないけど。」

「何だその口の聞き方は。年長者を敬う気が少しもかんじられない。」と、目の前の机をバンと叩いた。

(人間弱くなると大声を上げたり、粗暴に振る舞うものだよな。ここらで自分も仕掛けるか。)

こちらも目の前のつくえをバンと叩く。相手側がビクッとしたのが分かる。

「急に机を叩くとあなた達もビックリしたでしょう?

冷静な議論をしに来たのではないのですか?

でなければ我々は帰ります。」

学芸会並みの演技だと自分でも失笑ものだが、元よりプロであるユニオン側も自分達の役割を演じているに過ぎないことは重々承知。

経験がないとユニオンに押しかけれて大きな声で誹謗されて物音を立てられたら、それだけでビビってしまうだろう。

残念ながら、こちらはかつて日本最大の産業別労働組合と合理化でやりあったり、企業組合の書記長として他社や上部団体、経営陣と交渉をした経験がある。一番の違いは、自分は当事者として案件に向き合わなければならなかったのに対して、この人達はプロ組合執行部。

変に聞こえるかもしれないが、労働争議が仕事なのだ。ある意味、サラリーマンと一緒。

組合員のことを本当に考えているのか?確かに真剣に考えている人もいるだろうが、組合をどうやって維持して行くかが究極の目的になっている。

この見方が正しいことは人事部長のこんな質問でいみじくも明らかになった。

「慰謝料と言われましたよね。弁護士資格も無いものが慰謝料請求の交渉に携わって良いと思っているのですか?」

「いいや、慰謝料と言うか、色々と迷惑を掛けたわけだし、その迷惑料、解決金だ。」

と、しどろもどろに書記長が答えた。委員長は下を向いたままだ。

「払うと言っているわけでは無いですが、払うとすると本人に払うのですか?」

ふと思いついた疑問を口にしただけだが思いがけない効果があった。

「まずはユニオンに払い込んでもらって、本人にユニオンから払いこむ。」

「全額をですか?」

「そんなこと関係ないだろう。」

「幾らかユニオン側取るんでしょう?」

売れない作家の書記長、声を詰まれせていたがやましい事は無いと主張したかった様で組合の論理を展開してしまった。

「そりゃ組合だって全て手弁当で出来る訳じゃ無いんだ。」

「どれ位、本人に渡るのですか?」

「そんな事は説明する必要は無い。」

その時、今まで黙っていたマネージャーが甲高い声を上げた。

「ちょっと待ってよ。ユニオンの取り分なんて聞いてないよ。」

(おっと、やった!思わぬ敵失。)

このユニオンの取り分。調べた所、10〜15%程度が普通らしい。

少なく無い率なので、会社と同意に至った後で組合と組合員の間で揉めて裁判に迄進展した例も多いらしい。

だいたい弁護士費用を惜しんで月額数千円の組合員費で助けを得ようと考えたに違いないマネージャー。大金を搾取されるとなれば、もはや味方では無い。

(さてどうなることやら?)

「ちょっと外で話そう。」と、売れない作家がマネージャーを促して廊下へ出て行った。



続きのストーリーはこちら!

独立系?ユニオン、組合との遭遇 その6

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