独立系?ユニオン、組合との遭遇 その7

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第一回団交のを終えた我々、会社側は弁護士助言も受けて回答書を作成。約束通りにユニオン側にファックスした。

ユニオン側の要求書には我々の主張に根拠が無く退職勧奨は到底受け入れられないとの旨が書かれていた。

そこでこちらの作戦としては、如何にかのマネージャーの行動が常軌を逸していたかを詳細に記述する事。こういう時に威力を発するのが自身の記憶力。

生々しく相互の会話まで記述して反論があるならしてみろ、という作戦。

そうして第二回の団交となったのだが、今回は料理教室や絵画教室を開くコミュニティーセンターの一室。


前回と違って今回は開始からピリピリとした雰囲気。明らかに此方の先制攻撃が効いている印。

冒頭から厳しい言葉の応酬。こちらは望むところだ。

すると前回余裕を見せて喋らなかったマネージャーが立ち上がって話始めた。

「何でこんなデタラメを書くのですか。」

こちらは冷静に、「どこがデタラメと言うのですか?一つずつ確認しましょう。」

回答書には全部で10ページにも及ぶ位に生々しい会話や行動をこれでもかという程に並び立てている。

(まあ、ここまで書かれると事実でも起こるわな)

でもここはじっくりと攻めるところ。相手には耳に痛いことばかりだから、どうしても感情的になって論理的で無くなる。交渉では理性を失った方が負けだ。

「(回答書を読む)部下の技術的な説明が分からない時には個室に呼び出して詰問。

頭ごなしに部下の能力が無いことを指摘。マネージャーの技術的な理解が違っていると指摘すると、更に逆上して、上司(自分の事)にトラブルの原因はこの部下だと報告すると脅す。」

カッと鬼の様な形相になり、

「そんなことしていません。どこに証拠が有るのですか?」と毒ずく。

「証拠? 証言だったら本人を呼んでも我々は構いませんよ。時間が無いので続けましょう。」

その後も、こちらが説明する度にマネージャーは口を挟み内容を否定。そればかりか、段々とヒートアップしてきて自分のストーリーを話しだす始末。

「書記長。何とかしてもらえません。回答書を提出しろというので忙しい中用意したのに。」

売れない作家の書記長は苦笑いしながらこう答えた。

「約束を守って出してくれたのは有難いが、この内容じゃ誰でも怒るよ。」

「でも事実ですから。」

「事実と言っても色々な見方ができるわけでこれはそっちの見方で、こっちにはこっちの言い分がある。大体、こういう問題が起きること自体会社側に問題がある。出るところに出ればはっきりするけどな。」

(労働審判にでも持ち込むことを示唆してプレッシャーをかけるつもりか?)

労働審判は労働問題を解決する為の簡易の裁判所の手続きで審判は最大3回で終結。7割以上が3ヶ月以内に終結する。審判の決定は拘束力があるが不服なら訴訟に移行出来る。

会社側からすると弁護士費用と時間が掛かり面倒であることは間違いない。

しかしここで怯むと攻め込まれる。

「そりゃ双方の見解が違うからここに来ているのであって。それを明らかにするならこっちだって出るところに出るのはやぶさかでない。」

強気に押し返す。

それが功を奏したのか書記長は先に進めとジェスチャーで示す。

しかしそれでマネージャーの反論が収まる訳では無くしばしば当方の説明は中断。

なだめようとするユニオン側にマネージャーが食ってかかる場面も。

「何であなたたちは私を助けないの?言わすままにしておくの?」

「いいから。先ずは早く説明を終わらせてから。」

それからこちらの説明が一つ終わる度に、書記長が、「はい、これこちらは否認。お終い。次。」と、気の無い進行をしていく。

その後もマネージャーの場内乱入は続くも双方で無視する様な展開に。

そうする事でマネージャーのフラストレーションは益々高まっていく。

もはやユニオン側も抑えられない状態だ。

(少しはこちらの言っていることが分かってきたのでは。それに関わったことを少し後悔しているのでは。)

更に時間が経過しやっと最後迄行き着いた。

「さてと。という事で結論は要求に対して全面拒否という事ですか?」

「そうなりますね。」

「こっちだってわざわざ出てきているのにゼロ回答で済まされる筈は無いでしょう。」

内部のヤクザじみた本性が透けて見えてきた。

ここからがゴロ、たかりのスペシャリストの本領発揮か?

「次回までに何処まで譲歩出来るのかを持ってきてよ。

こちらも相談して来るから。」

ここで人事部長の放った一言がちょっとした波乱を生んだ。

「そんなこと言われても、こちらだって出先の人間なので本社の了解を取らないいけないし。」

(どうも外資系の日本法人の地位をよく理解していない様だ。所詮、出先で精々本社の部長程度の立場でしか無いのに)

「そりゃ聞き逃せないな。こっちは組合を代表して出てきているんだ。

そちらも決められる人を出して来ないならば、もう終わりだ。」

「終わり?」

「そりゃそうだろう。そうなりゃ、争議行動を取ることになるだろうな。」

(旗を翻らせてビラ配る奴か。。。まあ、良いけど。うちのお客さんは一般消費者でないし、組合と揉めてるからと製品を買わなくなることも無い。製品名は有名だが会社名は英語で意味も一般の人には分からないだろうから。)

「それは憲法で認められた権利だから構いませんけど、ビルの他のテナントに迷惑かけない様にしてくださいよ。」この人事部長、法学部出身。

⁉️

予期せぬ答えだったからだろうか、売れない作家の書記長の動きが止まった。

無用な混乱を招いてもつまらないので間に入った。

「私は本社役員の直属の部下で、本件についても逐次連絡をして方針に同意をしてもらっている。

ただ理解して欲しいのは会社だから適切な承認プロセスがいるということだ。上場企業だからより一層だ。」

書記長ジッーとこちらの目を見ていたが、「分かった。頼むよ。」

次回の日程を確認して2回目の団交は終了した。



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