自己犠牲野郎の戯言(たわごと)【其の二・完】

前話: 自己犠牲野郎の戯言(たわごと)【其の一】

一言で片付けるとお金にだらしないということになる。ギャンブルも確かによくやっていた。


公金と私金の区別がつかないとまでは言わないが、若いうちにいいお給与をいただいてしまった反動なのだろう。とにかく金銭感覚があやふやなのだ。母が家計のやりくりをしっかりできる人間だったのが救いだ。


ある日、母から一枚の銀行カードを見せてきた。全く見覚えのないカード。


「なんだこれ?」


「実はね……」


そのカードは単に口座から出金するためのカードではなかった。キャッシングの使えるカードだった。最初は何の気になしに使っていたキャッシング。気がつけば限度額いっぱいのところまで来ていたのだ。どうやら母はそのカードを取り上げ、時間をかけてでも完済すると言ったらしい。


ただ、時間をかけてというのはかませだったようだ。1万、2万というような額ではなく一回当たりでそれなりの金額を返済していった。


本来こんな話は私の預かり知るところではない。だが母は私にその話をしてきた。他所様でできるような話ではないのでこれも致し方ない。一人息子の宿命か。


そして話を聞かされただけでは終わらない。現金を預かりATMで返済をする。その役目まで仰せつかったのだ。私の給与から返済を手伝ってくれと頼まれなかっただけマシな話だが、代わりに借金の返済をするという行為は何とも虚しかった。


完済後も念には念を入れる。カードは私が預かった。私が返済に出向いていることをあの人は当然知らない。だから都合が良かった。さすがに負い目があるのでカードを返してくれと母に言ってくることはなかったようだが。


決して悪い人ではないし自分にも半分その血が流れているので全く理解できないというわけではない。それでも結構振り回された。


まだまだ思い出すことがないわけでもないが、とりあえずここまでにしておこうか。なんだかんだ言っても今では血を分かち合うたった一人きりの人間だし。


私が我慢すればどうにかなる部分は大きい。それが自己犠牲野郎の宿命(?)

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