ジャメイカないす。 -ファンキーな'90年代ジャマイカ旅行記-01 憧れの地に到着

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はじめに

 10代の頃からレゲエが好きで、いつか行きたいと思ってたジャメイカに行った時の旅行記というのか捕物帳というのか、です(笑)。

 ある種「恥書き手記」とも言うべき内容ですが(笑)、日本のようなかっちりと管理された社会ではなかなか体験できない面白いことを体験してきたのでそのことを書きます。ボブ・マーリーの歌まんまな"so much trouble"なジャメイカでのファンキー捕物帳&旅行記とでも申しましょうか…。

 年代的には90年代の話になるんですが、タイトルの「ジャメイカないす」は80年代に一世を風靡し現在も活躍中の伝説のダンスホールDJイエローマンの曲名からいただきました。



本文始まり始まり、です。

 ニューヨーク郊外にあるニューアーク空港から約4時間、飛行機はモンテゴベイ上空にやってきた。眼下には薄い雲のベール越しにジャマイカの小高い山並みと海岸線が見える。
 日本でのレゲエのコンサートに行く度に一度は行ってみたいと思っていた憧れのジャマイカが今自分のすぐ目の前(下!)に……。
 イヤイヤようやく夢が実現しました。どんな処でどんな人たちがいるのか今から楽しみ。否が応でも脳内に期待が膨れ上がる。

 空港で予約した空港近くのホテルで昼食を済ませ、シャワーを浴びて夏服に着替え、モンテゴベイのダウンタウンへ散策しに行くことにする。街の中心から離れているこのホテルからダウンタウンまでは歩いて約40分の距離である。

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 海岸沿いにのびる白いセンターラインの続く道は左側通行で、走ってる車も日本車ばかりなので千葉あたりに海水浴に来ているような気分になる。
 ところが5分も歩かないうちにスルスルと乗用車がすり寄ってきて、「どこへ行くんだ? 安くしとくからこのクルマに乗ってけ!」と男が声をかけてくる。御親切なお誘いを 丁重にお断りすると露骨に不機嫌な顔をして走り去って行ってしまう。しばらく歩いて土産物屋の立ち並ぶ界隈に行くと今度は道にたむろするジャマイカンたちが白い眼をギョロギョロさせながら「トーキョー!」「ジャパンッ!」「マイ・フレンドッ!」と言ってはクルマに乗れだのガンジャを買えだの云ってはつけまわす。
 ホテルから15分と歩かないうちに、このジャメイカンたちの押しの強さに辟易としてくる。僕は一人で歩いていたいだけんだ、ほっといてくれ! と心の中で叫びながら、頭ん中はグルグルしてきてしまった。

 気分転換に冷えたカンビールを買い、頭をクールダウンさせる。
 しばらくすると道端の大きな木の下で、男が木凋を作り売っているのが目に入る。他の店に比べると目立たない遠慮がちな店の出し方だし、声も懸けずに黙々と彫刻を彫っているし、なんなんだろうと思って売り物の彫刻の間を彼の方へ近付いていくと、木陰の涼しさとともに大木の根っこのほうから何ともいえないバイブレーションが足元を伝わってきた。
「この木にグッドバイブレーションを感じるので、ここに腰掛けたいんだけど。」と彫刻を彫る男に尋ねると、ゆるやかな調子のジャマイカ訛りの英語で「ヤー マン、そうかそうか、グッドバイブレーションを感じることはいいことだ。ゆっくりしていけ。」と言ってニッコリと白い歯を見せた。
 彼の名はken──ラスタマン(ラスタファーライというキリスト教系の新興宗教の信仰者。ボブ・マーリーもラスタマンだった)である。

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 しばらく雑談をした後、kenはゆっくりと話し始めた。
「リラックスして心の偏りを無くすことが大切だ。」
「偏りの無い心は永遠に死なない。そして全ての人が心の偏りを無くせば皆が同じであることがわかるだろう。」
「金儲けのために造ったビルに住むのは良くない。悪いバイブレーションが身体に溜まり、おまえに悪影響を与えるだろう。」
「もしオレの話にグッドエナジーを感じるなら、東京に戻ってからおまえの周りの人達にそれを与えるんだ。」
「ジャマイカには昨日と今日と明日の三日しか時間が無い。‘今日’そして‘今’何を感じてるかが最も重要だ。遠い過去や未来について思い煩わない。」
 そして最後に、一時間後に遭遇するオレのアクシデントを予想するかのように(今から思えば見るからにガードの甘そうな観光客に見えたんでしょうな)、こんな話しをしてくれた。
「おまえはこれからダウンタウンに行くのか。あそこには時々悪い奴らがいる。その中の誰かが金品を目当てにおまえのこめかみにピストルをあてるかもしれない。しかし奴が引き金を引こうとしても完全にリラックスしていろ。もしピストルを発射してもおまえは死なないで永遠に生きることができるだろう。しかし奴は死ぬだろう。なぜなら心が緊張しているからだ。」

 ボブ・マーリーみたいなことを話すラスタマンに会えたとすっかりウキウキしてしまった僕はkenと別れを告げ、ダウンタウンへ向かって再び歩き出す。
 しばらく歩いていると「ヘイ、トーキョーッ! フレンドッ!」と若いジャマイカンがまた言い寄ってくる。kenとの会話ですっかり気の緩んでいた僕は、“マッイーカ、オーケーオーケー”って感じで、それまでガードを固めていた心を解き放ちそいつと話しをすることにした。

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