「元素の勉強」に驚きと感動を!!熱狂と興奮を!!とある塾長の実録奮闘記

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次話: 驚きと感動の元素編 第2章

こんにちは、探究学舎代表の宝槻泰伸です。


突然ですが、子ども(小学校1年〜6年)に「元素の世界(化学)」を面白おかしく教えるとしたら、あなたはどんな授業をしますか??


このコラムは、「人類の叡智と自然の神秘」をいかにして伝えるか、「驚きと感動」をいかにして感じてもらうか、「熱狂と興奮の渦」にいかにして巻き込むか、というミッションに燃える、とある塾長の実録奮闘記(悪戦苦闘記)である。



※なおこのコラムは、2017年4月〜2017年5月にかけて延べ2ヶ月間にわたって実施された授業の実録(まとめ)である。


※探究学舎とは「驚きと感動の種をまく」をコンセプトに、既存の学習塾とは異なるプログラムを提供する東京都三鷹市の教室である。


※なおこのコラムの作者は約3年前に「強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話」を本サイトに書き記して殿堂入り記事となった。もしよろしければご覧ください。





驚きと感動の元素編 序章


さて「元素」と言えば、「スイヘーリーベー♪」という例の歌と、あの奇妙な形の表が真っ先に思い浮かびますね。


注:奇妙な形の表 → 「いったいなんでこんな形をしているの?上の方の空白はなんなのよ!!(怒)」ってだいたいの人が思う周期表 ← あとこの名前にもイラっとくる。ストレートに「元素表」にしなさいよ!ってだいたいの人が思う(はず)。


世界の女子の半分が「ワタシもうイヤ!」となるであろう元素(化学)の世界。受験の時は頑張ったけど今はサッパリという大人が大半の元素(化学)の世界。この世界の驚きと感動って何なのか?どうすればそれをまだ幼い子ども(6歳)にも伝えられるのか?


そんな問いから出発する2017年2月、からの手当たり次第に元素の本を読みあさる。そしてアイデアが降りてくる。



そうか!今回はこの周期表を見て「美しい!!!」って思わせればいいんだ!!!



そう、散々調べ尽くした結果、ワタシには見えてしまったのだ。子ども達が周期表に熱狂するであろうその光景を!!!熱狂を通り越して発狂するであろう子ども達の姿を!!


よーし、やってやるぜ。12歳の少年にはもちろん、6歳の少女にも「先生!!美し過ぎて悶絶しそうですぅ!」って言わせてやるぜ!!


ってみなさんは周期表を見て「美しい!」と感動したことがあるだろうか?おそらく答えはNOであろう。その理由は「あなたが元素の世界をよく知らない」からでも「あなたに美しさを見抜く審美眼が備わっていない」からでもない。理由はシンプルで「周期表という知識との『出会い方』が良くなかった」からなのである。


大半の人は元素について学校で習う。「水素と酸素を足すと水になる」とか「水素・ヘリウム・リチウム・ベリリウムっていう順番はスイヘーリーベー♪で覚える」とか「それをまとめたのがこの周期表だ」とか、そういった授業を受け取る。そして思う。「つまらない」と。そうなれば、もはや周期表を見て「美しい!」と感動する余地など残されていない。だから大半の人の答えはNOとなるのだ。ではなぜ「つまらない」と思うのか?それにも理由がある。




「結論」を「覚えさせられる」からだ!!!




学校の授業も塾の授業も大抵の場合、「まずこれはこうなる」と結論を伝えてそれを覚えるように指示する。「水素と酸素を足すと水になる」という結論を、ともかく飲み込むように指導するわけだ。しかし私たちは、好奇心や探究心をもった人間である。当然「なぜそうなるの?」「本当にそうなの?」という疑問や好奇心が湧いてくるもの。しかしそうした心の動きは丁寧には扱われず、カリキュラムの進度に「こちらが合わせる(生徒が合わせる)」ことを求められる。


元素だけに限った話ではない。「分数の割り算は後ろをひっくり返してかければいい」「マイナスとマイナスをかけたらプラスになる」と、算数・数学の授業でも結論を覚えさせられた人がほとんどだろう。しかし必ず思ったはずだ。「なぜそうなるの?」と。しかし残念ながら、そうした疑問や好奇心はスルーされてしまう。




もし反対に、そうした疑問や好奇心に寄り添ってくれたとしたら?私たち学ぶ側に「あちらが合わせて」くれたとしたら?きっと多くの子どもが今より「納得」するはずだ。「なるほどね」と。しかし感動とまではいかないかもしれない。ではどうすれば「感動」を作り出せるのか?その秘訣は「つまらなくなる流儀(結論を覚えさせられる)」の反対をやることだ。




1:「謎」が「問いかけ」られる。


2:「過程」を「追体験」できる。





この2つの流儀をおさえるだけで、子ども達にとっては劇的な学習体験となる。本当に「すごい!!!」「やばい!!!!」「感動した!!!!!」となる。


では元素の世界(化学)で、具体的にどうやればいいのか??


ふっふっふ。実はこのとき、ワタシには秘策があった。それを説明するにはまず、この「魔術師」と呼ばれた男を召喚しなければならない!!いでよ!!




え??ダンブルドア??



そう思ったあなたは、なかなかいいセンスしてますね。ハリーポッターの読みすぎですが。この人物こそが感動を呼び起こす張本人、ワタシから子ども達へ向けて放たれる刺客、19世紀ロシアの科学者、ドミトリー・メンデレーエフである!!!



え?だれ??



そう思ったあなたは、普通ですね。こんな髭もじゃオヤジ知らないのが当たり前です。実はこの人物こそがあの周期表を作り上げ、その後の科学史に絶大な影響を与えた男なのだ!!!



え?だからなに??



そう思ったあなたは、勘が悪いですね。もうほとんどワタシの授業はネタバレしてます。先ほどの流儀を思い出してみましょう。



1:「謎」が「問いかけ」られる。

授業の中盤戦、子ども達はある程度、元素の名前やその性質を理解している。「元素かるた」なるアイテムを使って繰り広げられる「かるた大会」に熱狂し、1つでも多く取ってやろうと夢中になって元素を覚え出す。かるたの表には元素の美しい写真が、裏には元素の名前の由来などの説明が書いてある。できる子は既に60枚近い組み合わせを暗記している。


しかし子ども達はまだ周期表はこの目にしたことがない。彼らにとってはまだ、元素の世界は無秩序に広がっているに過ぎない。そんなときに謎が問いかけられる。「もしこの元素カード(かるたのカード)の並び方に正しい順序があるとしたら、それはどんな順序だろう??」と。


これは少し説明が飛んでしまったが、子ども達の「謎が問いかけられる」体験とはこんな感じだ。いま彼らの目の前には数十個の元素が「カード」という形で無造作に並べられ、「かるた大会」なる競技に時を忘れて取り組んでいる。そんなとき!!「その無造作な並びに正しい順序があるとしたら??」の謎かけは、子どもの心を虜にする。なぜなら「考えてみたくなる謎」だからだ。


「え?カードに正しい並び方なんてあるの??どれどれ〜?」となる。十中八九だ。そうなれば「知りたい!」「どうやるんだろう!?」という好奇心が子どもを突き動かすことになる。


実際の授業の様子。みんなで手を動かしながら、正しい順序についての話し合いが始まる。


まっすぐ一直線に並べてみたり、ぐるっと輪にしてみたり。「表」というアイデアすら知らない子ども達は自由な発想でカードを並べてみる。しかし容易に答えは分からない。そんなとき!ここぞとばかりに第2の流儀発動!



2:「過程」を「追体験」できる。

元素カードの正しい順序など普通は見抜けるわけがない。というよりも、そんなものがあるなどと考えつく方がおかしい。だからこの謎は子ども達の中からは浮かんでこないのだ。そういう謎こそ問いかけるにふさわしい。ではどうやって、自ら思いつくはずもない謎の、その答えを求めて挑むのか?そこで登場するのが先ほどの科学者ドミトリー・メンデレーエフだ。


「実はこのメンデレーエフこそ人類で初めてこの順序を見抜いた人なんだ。ではどうやって彼はその順序を見抜いたのか??実は彼も君たちが持っているものと同じような約60個の元素(当時発見されていた全ての元素)のカードを手作りして、それを並べ換えるカードゲームをやってみたんだ!!さあ、君たちもメンデレーエフになったつもりでカードゲームにチャレンジだ!!」


※本当にメンデレーエフはカードゲームをやった。しかも一人で!笑

とけしかける。つまり、周期表という結論を先に見せて覚えさせるのではなく、それは謎として伏せたまま、それを過去の偉人が発見する過程を追体験できる、というわけだ。ここまでくればワクワクドキドキ。「よーしやるぞ!!」とみんなの気持ちに火が灯る。


ところがいきなり「60枚のカードを一気に並べてみよう!」とすると、子ども達は途方に暮れて課題に対する情熱を途端に失ってしまう。簡単すぎると飽きてしまうが、難しすぎると諦める。これは古くはヴィゴツキーの「最近接発達領域」としても有名だが、最近ではチクセントミハイの「フロー理論」でも指摘されている人間心理だ。


1. 自分の能力に対して適切な難易度のものに取り組ませる


取り組んでいる内容が、自分の能力と照らしあわせて難しすぎず、簡単すぎず、全能力を出しきることを要求されるレベルにあること。
そして、それをやり通すことによって、その自分の能力が向上するような難易度であること。


というように、その場の状況・子どもの知能に合わせて課題のレベルをチューニングする。具体的には複数のステップに区切り、いくつかのヒントを提示して、段階的にゴールへと近づけるように体験をデザインする。


ステップとヒントによって、徐々に正しい順序が見えてくる。子ども達もゴールが見えてきて、今後の展開にワクワクドキドキだ!

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