第2話『歌う資格』 ⭐︎夢を諦めている人へ!コードも読めないアラサーの私がプロのジャズシンガーになるまで⭐︎
第2話 〜歌う資格〜
「仕事がない生活」っていうものをしたことがない私にとって、OLを辞めてからの時間は、
今まで経験したことのないものでした。
一分一秒の重さが違うといいますか....
誰も、遅刻しても怒りませんし、仕事中、居眠りしてても注意なんてされません。
でも、オフィス・ミヨシカオリ(??)の社長となったからには、そんなことで喜んでいる場合でもないわけです^^;
とりあえず、知人のツテや、歌わせてもらえそうなバーやレストランをチェックして電話しまくり、
オーディションを受けに行きました。
オーディションはまず面接からで、
まだ開店前の店内で、従業員や、ホステスのお姉さんが、お客さんにメールとか打ってる横で始まりました。
怖そうなピアノのお兄さんが「レパートリー何曲あるの?」って聞いてきました。
このとき、実際10曲くらいしかレパートリーがありませんでした。が、
でも「時間はたっぷりあるのだし、急いで増やせばいいや!」と思い、15曲くらい、と答えました。
これが吉と出ました!
通常、ジャズの場合、30分~40分くらいのステージを2、3回やるケースが多いので、1ステージ5、6曲と考えると、最低でも15曲くらいはレパートリーがないとこなせないわけですね。
あの時、正直に答えていたら.....^^;今の私はないかも知れません。
まあ、今思えば、あのハッタリには「やる気見込み」が含まれていたので、許してね♪M氏。
オーディションで、スタンダードを1、2曲歌い終わると、店長に、
「なかなかいいので、そのまま歌っていてくれ」と耳打ちされました。
いつの間にやらお店が開店していて、お客さんが入ってきていて
きらびやかなスポットライトの下で、シャツにGパン姿でジャズを歌っている私がいました....
そんなわけで、晴れて合格し、週1回、その店で歌わせてもらえることになったのです。
順調にレパートリーも増やし、ぼちぼちあちらこちらの店に出させてもらうようになり、ステージで歌うことにも慣れてきた頃、
とある事件が起きました。
突然、店長に「ギャラを減らす」といわれたのです。
当然、どうしてなのか?と聞きました。
その理由は 、
その店に2年前から出演しているボーカリストと、たった2ヶ月ちょっとの私のギャラが同じなのはおかしいから、という理由でした。
当時、その店には歌っている女の子が日替わりで何人もいて、
その中のほとんどが、いわゆるホステスとシンガーを掛け持ちしているホステスシンガーでした。
歌は「歌わせてやってる」くらいの位置づけです。
で、2年前から出演しているというシンガーは、ホステスはせず、
歌のために呼ばれている「職業:ジャズシンガー」といわれる人達でした。
私の音楽への向学心が芽生えたのは、その頃からだと思います。
私が馬鹿にされるのは、音楽の勉強をきちんとしていないからだ。だから足元を見られるんだ、と。
それに、歌い始めてみて、どれだけ自分と似たような歌手志望が多いのかも知りました。
所詮、歌なんて楽器と違って、誰にも歌えるものなんだっていうことも気づかされていました。
自分が職業として歌うことを選んだ以上、
自分の歌にいかに”商品としての価値”があるか、
そして、それを身に付けるにはどうしたらよいのか、を考え始めました。
プロとして歌を歌っていく上で、どうしてもそれが必要なことのように思ったんです。
どんな職業だって、資格や経験を問われたりするのに、
歌手にはそれがないわけで...
歌を仕事としてやっていく理由みたいなもの。
「歌う資格」が欲しい!
性格上?!そう考えたら、きちんと納得できるだけのレベルになるまで、歌は歌いたくない、と思うようになってしまいました。
当時、唯一私がこの人のステージこそ、本物だ!って思えるシンガーがいて、
その人こそ、私が今でも尊敬しているGeila Zilkha(ギラ・ジルカ)さんなのですが、
どんな勉強をしたら、この人みたいになれるのだろう..って思い始めました。
ネットサーフィンするうちにたどり着いた、ギラさんの出身校である「バークリー音楽大学」。
何度か名前も聞いたことあるし、なんでも、ジャズを教える大学らしい。
かつて高校生時代に胸に秘めていた海外留学への憧れにも火がつき、これしかない!と思いました。
そして、そのページには「Asian Scholarship Tour」とありました。
バークリーに入りたい人の為の奨学金オーディションのアジア地区ツアーの告知でした。
もしも、これに受かったら、バークリーへ行こう。
お金のことももちろん ありましたけど、運試しのようなつもりもありました。
私は、歌うことを仕事として続けていけるのか?というような。
こうして、夜はなんとなく歌いながら、昼はオーディションに合格するため、
今まで勉強したこともない音楽理論との格闘の日々が始まるのです..^^;
To be continued..
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