最愛のビッチな妻が死んだ 第14章

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第14章 交際24日目 3月12日

深夜2時、そばにいるあげはからLINEが来た。

「今年の嫌なことの前借り終わったから、あとはいいことしかないね」

あげはの精一杯の慰めだった。

ただやっぱり、あげはは自分以外の人のために涙する僕をよく思ってはいなかったと思う。でも、当時の僕にはショックが大きくて、あげはのケアまで頭が回らなかったのだ。

「そだね。もう死ぬまでいいことしかないよ」

「死ぬのなんかずっと先の話だよ」

「もちろん」

お互いに泣き腫らした顔を撮って交換した。

「すげー顔だ」

「安定の職質顔」

僕たちは思い思いにショックを受けていて、うまく笑うことができなかった。

交際25日目 3月13日

昼過ぎ、葬儀の準備で出かける僕に、あげはがいってらっしゃいのキスをしてくれる。

「本当は、『長い間、共輔と喜怒哀楽を共にしてくれてありがとう。これからはあげが共輔と喜怒哀楽を共にし、幸せにします』って、伝えてほしかったんだけど、安らかにと伝えといて。ちょっと横になる」

「伝えてくるよ。ありがとう。好きだよ」

「実家帰る」

僕たちの関係は、前嫁の死で何か変わったのだろうか。

あげはをウチに置き去りにして、駅に向かって歩く僕は、心の中であげはに頭を下げていた。あげはがLINEが来る。

「結婚するって言って」

「結婚しよう」

「ありがと。ごめんなさい」

まだお金を共有してなくて、偶然にもあげはの財布には実家に帰るお金が入っていなかった。

「優しくできなくてごめん」

「まだ駅に着いてないから、お金渡そっか」

「帰りたくない」

「十分優しいよ」

あげはは実際に優しかった。本当はショックと落ち込む僕を見て、具合が悪くなっているはずなのに。

「共輔とずっといたい」

「楽しくずっといたい」

「ワガママで馬鹿でゴメン」

「もうやだ」

「早く元に戻りたい」

「仲良くしたいだけなのに」

本当にその通りだった。

本来、僕があげはに言わなきゃいけないセリフだとはわかっていたが、僕にはその時、申し訳ないぐらい気遣いの余裕がなかった。

前嫁の死は、それまでの僕らが築き上げてきた関係性に一石を投じ、一変させてしまった。2人の気持ちには何の変わりもないはずなのに……。

「そうだね。早く元に戻したいよ」

「この世でもあの世でも、あげが一番にして」

「……あの世はそれぞれの心の中にしかないから」

「どうして、思ってなくてもアタシが助かる言葉をくれないの」

僕は思いつく限りの言葉をあげはにぶつけた。

「過去、現在で一番好きで」

「いっぱい一緒に」

「いてほしいな」

「あげはあげで誰かの代わりじゃないから、比べる方がおかしいよ」

僕たちは初めて本気でケンカをした。

「代わりじゃないけど」

「今一番好きなのはあげで、年月じゃないし」

「ごはん作るためや、辛いのを紛らわすためにいるんじゃない」

「年月でも経験でも、いっぱいいてほしい」

「いるよ! どっか行けって言われてもいるけど!」

「そのままでいてね。ちゃんと帰るから」

「アタシが悲しいのや怒ってるのは、共輔が優しくしてくれなくて、なりたくないのに前の嫁を嫌いになりそうだからだ」

あげはに言い分はもっともだ。僕は落ち込んでいる場合ではなく、もっとあげはに優しくするべきだった。 

「優しくなりたい」

「年月じゃないなら、生きてて今現在貴方を愛してるアタシの心もちょっとでいいから考えて」

「ちょっとそうしてくれるだけでいいから」

「愛してるの」

「共輔」

「わかった」

「ごめんどうかしてた。ゆっくりお別れを」

「帰るよ」

前の家では遺影を選んできた。僕には発言権はなかったし、それでいいと思っていた。僕はあげはに申し訳ないと思いつつ、前嫁の死を各所に伝える事務的な作業をした。 

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