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最愛のビッチな妻が死んだ 第30章

Image by Olia Gozha

交際45日目 4月2日

「お疲れ様」「着いた」「おかえりなさい」「ただいま」 ちょうど12時に僕は家に帰ってきた。「アタシはどこにも行けなかったよ」「色々行ったけど」「そっか」「今どこ?」「わかんない」「帰ってこれる」「わかんない」「帰っていいかも」「わかんない」「帰ったきてよ」「居場所があるかもわかんない」「あるよ」「癒してあげられるかもわかんない」「癒さなくていいよ」「優しくしてあげられるかもわかんない」「一緒にいてくれたらそれで満足だよ」「これからは」「坂を転がり落ちる様に」「鬱転するだけだよ」「落ちたいの?」「双極性障害舐めてるでしょ。そういうもんなの」「付き合えばいいの? 何してほしいのか、わからない」「でしょ」「アタシだってわかんない」「具合悪くなるのを止められたらそれは、具合が悪いんじゃなくてただ機嫌が悪いだけ」「やめられたら、ね」「アタシは寝たきりになるし」「突然泣いたり発狂したりするよ」「鬱転したらね」「そういうとこ、共輔に見せたくなくて」「どこまで見せていいか」「わかんない」「いっそ2人目の夫の様に」「匙を投げてくれたら」「とも思うけど」「寝たかな」「お休み」「夢の中位平穏を」「アタシが与えられない、平穏」「起きて、全部なかったことにして」 午前1時過ぎ、あげはより着信。徹夜続きだった僕は死んだフリをしてるうちに眠り落ちていた。「今すぐ車で迎えに来て」 朝8時に起きてすぐにあげはに電話したが。不在着信だった。夕方になり、あげはからLINEが届いた。「LINEは届くのかしら」「連絡取れないのね」「生きてるのか死んでるのかもわからないのね」「まだ生きてるよ」「そのうち死ぬの?」「TwitterもFBも、アカウント消したんでしょ」「なんで?」「なんとなく」「そっか」「あんなに毎日触っていたのに」「ベッドでもぞもぞと」「西荻夫婦、ありがとう」「今日アタシにどこにいるべきだとか、そういった類の要望、ある?」「これをするべきだとか、あそこに行くべきだとか、あそこで寝るべきだとか、そういうの」「ウチのベッドで寝てくれ」「あとは太一がお見舞いにくるって」「わかった」「お金ないから買い物頼んだ。今日はおかえりは、何時に」「7時か8時には」「御意」「買い物して欲しい」「アタシ料理しかできることもすることもないから」「せめて料理の腕を磨こうと」「あはは、太一が馬鹿だよ」 あげはから動画が送られてくる。「エキソンパイの箱を利用して包丁ケース作ってるんだけど、芸大生過ぎて超几帳面な仕上がりに」「もう帰るよ」「お疲れ様ーー鍵空いてるよ。あと本、届いたよ」「あら…」「急な代引きにビビる。太一が貸してくれたけど。また本買ったのね」「代引き…ゴメンなさい」「太一まだいるし、払えばいいんじゃないの?」 あげはから、また動画が送られてきた。「二本目の包丁ケースが」「残念なお知らせ」「チャックは専門外って」 チャックは「何か壊れたものない? 太一、芸大出身だからなんでも直せるよ」と言われ、僕のスニーカーのチャックが壊れていたのをお願いしていた件だった。 この日は3人であげはの作った料理を食べ、太一さんは帰っていった。なんとなく、何気に、この夜はエッチをしなかった。 ただ寝る時にいつもより、ギュッと手を握り、お互いが痛がるくらいのハグをしたのを覚えているだけだ。

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