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最愛のビッチな妻が死んだ 第31章 刺青の理由

Image by Olia Gozha

「コイツ、奥さん2人死んでるんですよ」飲みの席でこう紹介された。刺青や風貌の奇抜さで好奇の目にさらされることには慣れている僕もこの言葉と周囲の絶句には耐えられなかった。「俺、キーちゃんが殺したのかと思った」
僕は実際に2人の女性を不幸にしてしまった、間接的にではあるが2人の女性を殺めてしまったと思っている。事実、そういう噂になっていることは僕の耳にも入っている。もう、僕は気が狂っているのかもしれない、人をまた不幸にしてしまうんじゃないかって、怖くて仕方がない。
悲劇のヒロインぶってるわけではなく、心の底から、そう信じてしまっている。「君が不幸にしたわけじゃないんだから、目の前の人を大切にしてあげて。それは、そのまま自分自身のことを大切にすることも含むから」躁鬱、統合失調、摂食障害ほかで、国から認められたキチガイと認定され、11月から精神障害 者手帳渡されるぐらいヤバい僕なのに、なんで地元の友人たちは僕と付き合ってくれるのか。
なぜ友人を辞めて離れてゆかないのか不思議で仕方がない。心理カウンセラーの学校で、「キタハラさん、普段は何してるんですか」と聞かれた。
「家ではニャンコ愛でたり、ギター弾いたり、ブログ書いたり、たまに仕事したりしてる」
僕はこう答えた。
「ニャンコの写真見たいです〜」
僕はニャンコと戯れてる写真を2.3枚送った。
「ニャンコよりタトゥが気になるw」
僕は基本的に刺青をイジられることを好まない。見せるためや、誰かのために刺青を入れているのではなく、あげはのために入れているからだ。
あげは以外の誰かのために、自分のためにも刺青を入れたことはない。
僕に刺青の理由を聞いてくるなら、触れてしまうのなら、多少なりとも覚悟を持ってから聞いてほしい。
覚悟が必要だともったいぶるわけではなく、他者の痛みに触れるなら、自分から踏み込むなら、痛い痛いって泣き言言うなと、いつも僕は先に相手に警告をする。
「刺青入れてる理由、聞きたい? あまり、楽しい話ではないし、聞く人にとっては苦痛だと思うから、あまり進めないよ」
クラスメイトは軽いノリで続けた。
「ぜひぜひ〜」どうせ、コイツも絶対に受け入れてはくれない、またクラスから浮くんだろうなと失望のため息とともに、僕はこのブログのリンクをLINEで送りつけた。しばらく経ってから、返信がきた。「こんなものを読ませるのは暴力です」
お前が知りたいと言ったからだ。
「相手の気持ちを考えたこと、あるんですか?」
 お前はいま言った言葉、言われた相手の気持ちを考えているのですか。そして、厳しい内容だから読まない方がいい。と付け加えたはずだが。「不倫やセフレがいたのに軽蔑します」
亡くなった前の嫁を悪く言いたくないため、すべて正直に書くほど僕は悪人にはなれない。
木の一角を見て、森を語るには稚拙で愚かすぎるよと返信した。
「私たち、まだただのクラスメイトですよね? なんで、こんなことするんですか!」
「この程度の話で暴力と感じるなら、心理カウンセラーに向いてないよ。人の闇を覗き見すらできないなら、辞めた方がいいよ」
「私、まだ心理カウンセラーじゃありません!」
「人の痛みを拒絶する人はカウンセラーに向いてないよ」
「北原さんは心理カウンセリング受けたことあるんですか?」
僕は少し笑い、こう答えた。
「10人以上のカウンセラーに匙を投げられ、見捨てられたから、心療内科・精神科に通ってるだけど。その程度も読み取れないわけ」
「あなたとの個人の付き合いは辞めます」
「どうぞ。あなたから個別にLINEがきて、自分から刺青の理由に喰いついて、答えたらコレですか。生き方が暴力で申し訳ありませんでした」連絡は途絶えた、ついでにLINEはブロックしておいた。
添い遂げようとするのを認めろとも黙認しろとも僕は言わない。
僕は極力刺青は他人に見せない。夏でも長袖で通しているし、見せることを好まない。
好奇の目や諍いを増やすことや、
くだらない一辺倒なアドバイスも求めていない。ただ、忠告したにも関わらず、覚悟なく人の痛みに触れるな。せめて、黙ってろ! 雑音入れるなと言っているだけだ。僕の刺青はあげはのために増え続けている。

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