GlobalTravelBloggerSummit開催への道とこれから②
2. いざ天守閣最上階の旗本会議に出陣
2016年も暮れ。
前回、西新宿の天守閣に無理矢理忍び混んでから、1週間が経とうとしていた。
相変わらず、返事は無い。
これは、無理矢理持ち込んだ提案書が担当者Nさんから上長のMさんに上がったが、全く興味が無いということなのか、はたまた興味はあるが、わざわざ連絡をすることもない、という感じなのか。
このまま待っていても、どちらにしても連絡など来ないだろう、そう感じた。
どちらかというと後者の『興味はあるが・・・』の方に期待して、Nさんに電話を入れることにした。
今度は、名刺を見ながら、顔も知っているNさんに、堂々とした気分で電話をした。
『中西と申しますが、Nさんいらっしゃいますか?』
個人名で大企業に電話をするのにも慣れた。
会社によって反応が違うが、大抵、個人名で東証1部上場クラスの大会社に電話を入れると、0コンマ数秒の沈黙が流れる。
沈黙に耐えきれない場合、電話の向こうの窓口の方は絞るような声で『御社名を頂けますか?』と聞いてくる。
申し訳ないな、と毎度思う。
会社名が無くてごめんなさい。
御社名など、ありません。
個人です。個人。
個人事業主でごめんなさい!でも、みんな、突き詰めると最終的には個人だぞ!
などと思いながら受話器を握る手に力を入れながら待つと、先日お会いしたNさんが出てくれた。
『先日はわざわざお越し下さりありがとうございました!』
Nさんは、そう電話越しにお礼まで言ってくださった。
『Mにも資料を見せましたが、面白いアイデアだということで、一度詳しくお話を聞いて見たいと申しております。』
えっ?今なんと仰いました?
面白いから、詳しく話を聞きたい???
本当ですか?本当ですか??本当に本当ですか???
😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆
夢のような信じられない展開で、前回、西新宿の天守閣14階へ闖入してから2週間後、再度、この吉野杉が林立する杉林のような高層ビル群がそびえ立つ西新宿にやって来た。
今回、前回と全く違うのは、アポイントがある、ということだ。
これは、気分的に精神的に、全く安心感が違う。
今回は、堂々と、天守閣に乗り込めるのだ。
桜門の足軽にビビりながらお堀を渡ることもなく、正面玄関で『通行手形を出せ』と脅されることもなく、正々堂々と天守閣に入り込めるのだ。
なんてったってアポがあるんだから。
しかも大勢のグループ会社が集まる最上階29階の旗本会議にて、後ろの方で鎮座して会議を聴講して良いとのお許しを頂くことになった。
とうとう、14階ではなく、天守閣の最上階、29階の大広間に上がることになったのだ。
どうしよう、どうしよう。もし憧れの創業殿様、S会長に廊下で出会ったりしたら。。。
そんな心配は無用で、創業殿様S会長はここ数年、九州の唐津藩や平戸藩のテコ入れに精力を注いでいるようで、殆ど西新宿の天守閣にはいないということだった。
😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆😆
しかし喫茶店のマスターが、一体全体、何の要件があって、西新宿の天守閣まで来て旗本会議に参加するのか、と。
それは、飛びっきりの提案があるからだ。
旗本会議のメインの議題にはならないが、全国から参勤交代や出張で集まった旗本が今後の予定や議案を確認する会議後のブリーフィングの時間に、若干の自己紹介と提案の時間を下さるという。
いわゆる、オマケ、だ。
それだけでも非常に有難いチャンスだ。
旗本会議の開始時間、16時の10分前には天守閣の最上階29階に上がり、案内された待合室で一列に並んだ胡蝶蘭の鉢植えに書かれた贈り主の社名を、緊張を振り払うように心の中で読み上げていた。
・A航空会社
・B航空会社
・C航空会社
・D航空会社
・E航空会社
・F航空会社
・G航空会社
・A國政府観光局
・B國政府観光局
・C國政府観光局
・D國政府観光局
・E國政府観光局
・Aホテルチェーン
・Bホテルチェーン
・Cホテルチェーン
さすが一代で西新宿に立派な天守閣を構えるまでの企業を築き上げた殿様、胡蝶蘭の贈り主も錚々たるメンバーである。
自分の飛びっきりの提案が通れば、ここに並んでいる胡蝶蘭の贈り主と一緒に仕事が出来るかも知れない。
そんな風に、洗濯機の中に出来る淡い泡のような期待に無理矢理期待を膨らませ、旗本会議の開始時間までを潰していた。
『長らくお待たせいたしました。お時間が来ましたので、会議室の方にご案内いたします。』
案内役は、旗本会議の事務局担当、これもMさんだ。事務局Mさんとしておこう。
今回、僕の旗本会議の参加をOKしてくださったのもMさん。これはM室長としておこう。
30名近くの旗本とグループ企業の参加者がぞろぞろと廊下を歩いて事務局Mさんの後をついていく。その最後尾に自分も並んでついていく。
後ろの方で鎮座して会議を聴講して良いとのお許しを頂いているので、文字通り最後列の一番端に席を取り、出来るだけ目立たないようにチョコんと座っていた。
司会進行はM室長。初めてM室長の司会を聞くが、最初に場の空気を和らげようと、滑る気満々のネタを入れたりしている。なかなか好感が持てる。
その日の旗本会議のメインの議題は、参勤交代で江戸にやって来ている紀州藩の旗本による、ここ数年のインバウンドの高まりに対する具体的な施策と、今後の新たな取り組みについてのプレゼンテーションだ。しっかりとデータを取って、数字の組み立てをした上での施策や取り組みであり、非常に参考になることが多かった。さすが徳川御三家の流れを汲む紀州家、天晴れなプレゼンであった。
わが大和国にも見習ってもらいたいものだと思った。
その後、全国から集まった各旗本による発表、グループ企業各社による近況報告など約1時間半にわたる会議が滞りなく終わる。
M室長による、会議後のオマケの案内が始まる。
『今日は、初参加ということで、関西から中西さんという方が来られてます。海外にインバウンドプロモーションを行なうという取り組みの中で、ブロガーやインフルエンサーを起用する、というアイデアで、これからのFITの需要拡大のいう流れでは必然的に不可欠な情報発信の手法です。
当旗本会議でも取り組むべき課題だとは思いますが、まずは中西さん、自己紹介からどうぞ。』
はっきり言って、ここからは記憶にない。
デビューは、華々しく上手くいったのか、そうで無かったのか。
天守閣の最上階29階に集まった約30人が一斉に後ろを振り向き、最後列の自分に視線が集まる。
その視線ビームのパワーに逆らうように大声で気合いだけで発表する。
その時点では飛びっきりの提案でしかない。
アイデアと、世界中のブロガーやインフルエンサーから集めた、ぼんやりした『声』だけだ。
そこに価値を認めて『来て欲しい』とか『一緒にやりましょう』とか『お金を出しましょう』という人も企業も団体も、一切無い。
そんな状況ではあったが、オマケのブリーフィングの時間の間、幾つも質問され、
『具体的にはいつ、やるんですか?』
『具体的にはどこで、やるんですか?』
『規模はどれぐらいでお考えですか?』
どの質問に対しても答えなど用意していないので、しどろもどろでアドリブで適当に答える。
なんとか質疑応答の時間を終え、もう少し深い話がしたい、という旗本数人と1階の喫茶店で話をすることになる。
『非常に面白いと思いますねー。今度の江戸の大観光博覧会に一緒に出展したらどうですか?』
メディア企業のAさんが話を切り出す。
なんだ、その大観光博覧会とは?
なんだか知らないが、ものすごく可能性を感じる響である。
『2月の大観光博覧会に、当社の旗本会議として出展するんですよ。その中の一つのコンテンツとして”Global Travel Blogger Summit"として出展したらどうですか?』
さらにBさんが畳み込んでくる。
何がなんだか分からない。話が急展開過ぎる。
そこで、M室長から、トンデモナイ条件が提示される。
『当社の旗本会議の一部としての出展も全然アリなんですが、一つだけ条件があります。
私たち旗本が主体となって動くわけには行きません。
全国のどこでも良いので、藩主体となれば、私たち旗本は動けます。
なので、中西さん、当社の旗本会議の一部としての出展も、旗本会議としてスポンサー事業として進めるのにも、全国のどこでも良いので、藩を連れて来てください。
それが条件です。』
これが江戸のスピードなのか。田舎者過ぎて全然思考が着いて来ないが、必死で脳みそフル回転で頭の中を整理する。
これは、この条件は、飲むしかないのではないか。
全く当てがあるわけではない。
果たして藩を連れてくる、などということが自分には出来るのか?
想像もしたことがなく、挑戦しようと思ったことなど無いが、これはやるしかないのではないか。
もう、勝手に口が滑っていた。
『分かりました。連れて来ます。』
そう言って、年末年始も、1日も休みの無い新たな人生が始まった。
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