子どもを亡くして社畜をやめた話⑤嗚咽の家と恫喝の職場

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前話: 子どもを亡くして社畜をやめた話④妻からのメール

子どもを亡くして社畜をやめた話⑤嗚咽の家と恫喝の職場







中央線に揺られる



どこかの駅で人生に絶望した人間が線路に飛び込み
また今日もダイヤが乱れる



鬱屈した感情が車内に満たされていくと同時に
慌てて携帯電話を取り出した人々が
それぞれの会社への遅刻連絡を始める



次の駅に着いたら降りようと決める
遅刻すると会社へメールを送る
車両は微動だにしない



おれはメール送信の画面を閉じ
ブックマークしておいた記事を読み返そうとする




読めない




むすこの症状に関する記事は
同じ経験をしてきた他者の苦悩が広がるばかりで
諦めるという以外の解決策を提示してはくれない




携帯電話をポケットにしまう




また取り出して同じ記事を読もうとする
やはり読めない




昨日の夜も妻は泣いていた



おれたちは子宮の中のむすこに語りかけながら
疲れて眠りがやってくるまで
手を取り合って泣いた




電車が動き出す
おれは
どこで降りれば良いのかわからなくなった


13トリソミー

おれのむすこの脳は2つに分かれていなかった


染色体異常により
妊娠初期の細胞分裂が上手くいかなかったからだ


発症の原因を特定することは出来ず
自然流産200件に1件という割合で発生するというもので
発症した胎児の多くは発覚前に死産してしまう


脳が成長していない為に
生命維持に必要な臓器の形成が不十分である事が殆どで
そもそもおれのむすこのように
出産可能な月齢まで成長すること自体が稀であり
新生児2万人に対して1人の割合ということだった


おれはこの客観的な数字を眺めて
そのどこかに希望が無いか探していた


しかし


出生後は多くの子が数日から数時間しか生存できず
奇跡と言えるレベルでも持って数年という事だった
もちろん人工的な生命維持環境が必要である


つまり


何度この症状に対する情報を把握したところで
想像できる範囲の近い将来に100%死んでしまうという
事実を叩きつけられるだけなのだった


嗚咽の家

大学病院での診断結果の宣告を
繁華街の一角にある産科医で受けてから
妻の精神状態は安定を失った


女医は生存率の絶望的な低さを的確に表現し

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