プログラムの講師(2)

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研修の始まる前日、私と相方の講師のTさんは教室となる一室に案内された。

長机が横に4列、縦に5列。生徒の席と向かい合って長机が二つ。講師用の席だ。


私たちを教室に案内した女性は、教育の責任者を呼んでくるので、その間PCのセットアップなどしていてください。と言い部屋から出て行った。

私は講師用の席に設置してあるPCの電源をいれ、準備してきたディスクで教育資料をPCにインストールした。それから、TさんにもPCにインストールするようにディスクを渡した。

教育資料が再配布されないために、生徒に渡す資料は全て印刷され、事前に宅配便で会社から送られていた。印刷物が入ったダンボールが講師の席の後ろに各レベルごとに12箱並べられている。


実は前年度にも、同じように新卒を相手に二人の講師が出向していて、その時の段取りと同じく事は進んでいた。その二人の講師にヒアリングしたかったのだが、二人とも会社を辞めていて、残念ながら上司を通じて間接的にしか前年の情報を得ることが出来なかった。

「今年も頼んでくるってことは、うちの会社の研修に満足してもらったってことだ。」

と、無駄なプレッシャーを与えられた。


先ほど出て行った女性が、上司の50代くらいの男性を連れてきた。

「始めまして。今回講師を勤めさせていただきます。よろしくおねがいします。」

と私は言い、Tさんも挨拶をした。

「Kと申します、こちらこそよろしくお願いします。」とその上司は言った。

それからテーブルについた。

最初にKさんが口火を切った。


「御社の教育資料なんですが、前年度、12のレベル全て終わらせられたのが全体の40%。」


「そうなんですね。前任者と情報共有できていなくてすいません。」


「いやいや、謝っていただかなくていいです。今年はこれを80%にするためにどうするか。去年は補講などを行わなかったんですが、今年はやっていただきたい。それと、他にも定期的に進捗状況を講師さんと私でやっていきたいです。毎週木曜日でどうですか?」

うちの会社の上司から聞いてた話とずいぶん違うぞ、雲行きが怪しい。


「木曜日で大丈夫です。」


「では木曜日の20時からにしましょう。」

夜の8時って、、、朝8時出勤だから残業確定デーじゃないの。


「では、そういうことでお願いします。80%達成はマストでお願いします。」

そういい残して、Kさんと案内役の女性は部屋を出て行った。


唐突過ぎるノルマと、補講を考えると毎日が残業。私は残業が大嫌いなのだが、このスケジュールだと残業せざるを得ない。そんなことを考えているとTさんがこういった。


「でも、事務の人も一人追加されるみたいだから大丈夫ですよね^^」

私は一瞬言葉を失った。

「そうですね。ノルマが厳しいですが、なんとか頑張りましょう。それで、うちの研修資料目を通されました?」

「はい。でも下のほうのレベルのは大体教えれると思うんですけど、WEBアプリケーションあたりはちょっと教えるの難しそうです^^」

「なるほど。了解です。どうやってまわしていくか明日までに考えます。」


そして、研修前日のPCセットアップなどが終わり、教室を後にした。



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プログラムの講師(3)

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