試合当日 - チャンプア・ゲッソンリット戦
試合当日の朝になり慎太郎が家に迎えにきました。
僕の顔を見るなり、
「きんちゃん!寝てないやろ!」
と大爆笑。
僕も
「寝てない!!」
と大爆笑。
意外にもリラックスした状態で会場の大阪府立体育会館に向かいました。
会場に到着し自分の試合が近付くにつれ緊張感も高まり、試合を待つ控え室では作戦うんぬんよりも、
「たった5ラウンドやから!」
と自分に言い聞かせ続けました。
そしてついに自分の試合の時間になりライトに照らされた大阪府立体育会館のリングに上がりました。
当たり前ですが「超像」チャンプア・ゲッソンリットが僕の目の前にいます。
試合が決まった時点から湊谷先生からいただいた作戦とは別に自分なりの作戦も考えてましたが、結局湊谷先生には言えず仕舞いでした。
そしてついに自分の試合の時間になりライトに照らされた大阪府立体育会館のリングに上がりました。
当たり前ですが「超像」チャンプア・ゲッソンリットが僕の目の前にいます。
試合が決まった時点から湊谷先生からいただいた作戦とは別に自分なりの作戦も考えてましたが、結局湊谷先生には言えず仕舞いでした。
その自分なりの作戦とは
「蹴られる前に行ってまえ!!」
というものでした。
そしてゴングが鳴りチャンプア選手と向き合います。
そしてゴングが鳴りチャンプア選手と向き合います。
あのムエタイ選手特有の独特な構え。。
「蹴られる前に行ってまえ!」作戦を実行し、先に手を出したくてもあの独特な構えとリズムで前に行こうにも行けません。
例えるなら蛇に睨まれた蛙の状態です。
さらに気持ちの中で襲ってきたのは
「ついにあの左のミドルキックがくる!!」
という恐怖感でした。
咄嗟に湊谷先生にいただいた「左回りに動く」という作戦を思い出し、作戦通り左回りをするとチャンプア選手の左ミドルは元の鞘に収まりました。
安心したのもつかの間、遠くに構えていたチャンプア選手が少し動いたと思った瞬間
「ビシッ!!」
左ミドルを右肘に蹴られてました。
チャンプア選手の左ミドルを最初に右肘に被弾した感想は、
「速いけど思ってたより痛くない!」
というものでした。
「この蹴りなら大丈夫や!」
というズレた呑気なこの感想が後々大変なことになります。。
試合は進み左ミドルを蹴られているうちに、5発目くらいからでしょうか、僕はある事に気が付きました。
それは黄金の左ミドルの全容が判明した時でもありました。
気が付いた事とは
「この左ミドルキックは右肘の同じ部分に寸分の狂いも無く的確にヒットする精密な蹴り」
ということでした。
ヒザでブロックをしたりポジションを変えても同じ部分に的確にヒットします。
1ラウンド終了と同時に会場は大歓声でしたが、黄金の左ミドルキックの全容を理解した絶望感と
「でも勝ちたい!どうしよう?」
という気持ちでした。
このままでは僕の右肘は壊れてしまうと思い、完全に僕の意識は左ミドルキックをもらう右肘にしかない状態になってしまいました。
1ラウンド終了と同時に会場は大歓声でしたが、黄金の左ミドルキックの全容を理解した絶望感と
「でも勝ちたい!どうしよう?」
という気持ちでした。
このままでは僕の右肘は壊れてしまうと思い、完全に僕の意識は左ミドルキックをもらう右肘にしかない状態になってしまいました。
当時の僕は試合経験が浅く、ファーストラウンドを終えたインターバル中にセコンドの湊谷先生に体験した感想を上手く伝えられなかったことが今でも悔いが残っています。
また、インターバル中にはコーナーまで走って来てくださった、 格闘王・前田日明さんの
「きんちゃんな、やってまえ!!」
と言葉も印象的でした。
そんな状況の中、2ラウンド開始のゴングが鳴る前の数秒の間に僕の気持ちの中ではもう行かざる得ない状況になっていました。
行かざる得ない状況というのは、もう作戦ではなく「丁半博打」です。
こうなると勝負事はほぼ負けてしまうという事をこの試合で学びました。
2ラウンド目以降はこのように、前に行くだけ行って気持ちを折られるという状況を格闘技人生で初めて経験することになりました。
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