3.海外逃亡の準備

次話: 4.出国日当日

私は十分に準備をして日本を飛び出したわけじゃない。

むしろ逆。

急に今すぐに日本を飛び出さなければならないという事情が出来て、フィリピンに行くと決めてから約1ヶ月で日本を出た。


1ヶ月もの準備期間がかかったのは、私には飼っている犬がいて、ワンちゃんを置き去りにする事が出来ないので、その準備に約1ヶ月かかった。


ワンちゃんを海外に連れて行く際の書類を用意したり、受け入れるフィリピン側に事前に提出する書類があった。

私は現地語であるタガログ語が出来ないのはモチロン、英語だって一般的日本人のレベルにも達していない。

私は高校1年の2学期で学校をやめてしまっている。

完全なる中卒だ。

誰のサポートも借りずにワンちゃんの海外渡航手続き書類を英語で作成したなんて、今の自分でも信じられない。

なんてったって、連れて行ったワンちゃんは全部で3頭だ。


フィリピンへと飛んで行くのに準備する約1ヶ月は、まるまるワンちゃんの準備で終了した。


この準備期間中に、私はもう日本に帰ってくる事が出来ないと腹をくくった。

なぜなら、日本からフィリピンに動物を送り込むよりも、フィリピンから日本に動物を送り込む方が何倍も大変で、不可能じゃないけど限りなく不可能に近い事を知ったからだ。


ワンちゃんはもう老犬。

行ったが最後、日本には帰ってこれない。

その生涯をフィリピンで終える事が確定したわけだ。

自分勝手に犬をフィリピンに連れていき、ご主人の私だけが日本にやっぱり帰ろうとはいかない。


私には自信があった。

オレは天才だから、フィリピンなどという国なんて、難なく制覇してやる!

という、どこから湧いてくるのか根拠もない自信があった。

だから、フィリピンの地で、ノンキに南国の風に吹かれながら、ワンちゃんの最後の時を一緒に迎えてあげれる。

そう確信していた。


日本と違い凍死する事なんてないフィリピンという国だから、私1人だけなら、寝泊まりするところなんて、どこだって構わない。

だけど、ワンちゃんを連れて行くからには、住む場所を事前に確保しなければならない。


ワンちゃんの渡航手続きの書類を用意するのと並行して、寝床の確保をするのに準備しだした。

通っていたフィリピンパブの指名嬢にアパートを借りてくれ!と頼んだ。


オッケー! 

お姉さんに頼んでワンちゃんを飼っても大丈夫なアパートを探しておくよ!

と彼女は安請け合いしてくれた。


しかし…だ。

1週間経っても、10日経っても、アパートについての進捗報告が無い。

住所がないとワンちゃんの提出書類が完成しない。

ワンちゃんの荷物をダンボールに詰めて海外輸送しようと思って荷造りしていたのだけど、住所が無ければ送れない。


焦りに焦った私は、他人に自分の寝床の確保をお願いしている身でありながら、アパートは一体どうなっている? とフィリピンパブの指名嬢を責め立てた。


彼女の言い訳はこうだった。

あなたにフィリピンに行ってほしくない。

フィリピンは危ない場所だし、あなたは言葉も話せないし、誰も頼る人もいない。

私は遠く離れた日本にいるから、何かあっても助けてあげれない。

そもそも、どこまで本気で言っているのか分からなかった。


などなどの言い訳が続いた。

面倒くさいから、やっていなかったのかもしれないし、彼女の言う通りに私を思っての事だったのかもしれない。


彼女の事を私はカノジョと思っていた。

週7で店に通い、店が終わった後もファミレスでコーヒー飲みながら朝まで過ごし、お店を休んだ日にはラブホテルに行っていた。

お互いに使える全ての時間を一緒に過ごしていた。

何十年かぶりに

『いつか、この子と一緒に暮らしたい』と本気で思わせてくれる子だった。


だから、アパート探しも任せておけば、何とかしてくれると信じ込んでいた。

だけども彼女は動いていなかった。



彼女に本当に本気で行く予定で準備していて、もう時間が無くて困っている事を説明した。

お姉さんにちゃんと頼んでみるから!

と改めて言ってくれたけど、信じる・信じないの話じゃなく、もう時間が無く、急いで住む場所を確保しなければならなかった。


私は別のフィリピンパブの2〜3回指名した事のある子にも、フィリピンでアパートを探してくれないかと頼んだ。


すると、その子は1つ返事で

ウチおいで! スペースあるよ!!

パパとママにお願いしてみるね。

と返ってきた。


うぇっ?

オレだけじゃじゃなく、ワンちゃんが3匹いるんだけど…


彼女は涼しい顔で

大丈夫よ。

ウチにもワンちゃんいるし、みんな犬好きだから♫


彼女が言うには、ちょっと狭いけどホテルじゃないから宿賃もいらない。

自分で使うシャンプーや石鹸など用意してくれればいいとの事。


なんだか良く分からないが、後先なんて考えてる場合じゃない。

渡りに船とは、この事を言うんだと思った。

たとえ、その船がドロ船であっても、考えている猶予なんて無かった。

目の前に垂れてきたクモの糸を掴むしか無かった。


この事を私はカノジョに伝えに言った。

それは危ないよ…

お姉さんに言って今探してもらっているのに…

と言って、泣き始めてしまった。


カノジョ以外に、そんな事を頼める人がいるという事。

そして、家族に話をして今アパートを探しているという事。

自分の事を信じてもらえなかった事。

ホントのホントにフィリピンに行くのだという事。

いろんな事が浮かんで、信じていた私に裏切られた気分になり、カノジョは涙を流したんじゃないかと思う。


この瞬間から、カレシ・カノジョの関係は終了し、客と指名嬢の関係に変わったのだろう。


見知らぬ国フィリピンへと行く2週間前に、1番信じられるフィリピン人を失った。


全てを捨てて日本を脱出する覚悟だったとは言え、親身になって助けてくれる人が1人いれば何とかなると切り札的な存在があるからこそのフィリピン行きだった。

日本を飛び立つ前に、私は切り札を無くした。


ホントに誠に、何も無く、犬3匹というハンデを背負って、知らない国で生きていく事になった。

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4.出国日当日

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