私の物語の下書き8

知り得た経緯
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母が結婚し第二子を出産するまでの話はとある記事で読んで知った話で、家族や親族の誰かから直接聞いた話では全くありません。「オロセ」という声があったという点については、後年にそれを誰かに聞いた次男が酒に酔った勢いかで私に溢した話でした。

子供の頃と違いそこそこ対話ができるようになっていた私に対しついつい気を許し緩んだのかそれともイジリのつもりだったのか、私の顔色を窺いながら嬉々としてその話を吐露した次男の顔と振舞は私にとって非常に印象的でした。「暴露したくて今までうずうずしていた」というような風にも見えました。
悪いとも良いとも断定はしていませんし、それを言われた時に私自身が内心驚いていたのか不快には感じていませんでした。ただ、「この人はこういう言動振舞をすることがあるのだな」という印象は改めて刻まれました。


そしてそのとある記事について。

祖母が亡くなった折に葬儀関係で帰省した私は自室が無いので祖母の部屋に寝床を用意されました(育ちの実家とは違う家屋です)。その部屋の広縁に置いてあった書棚の目立つところに、祖母のものであろう過去の記事をスクラップしたファイルが目に入り何気なくパラパラと目を通したところ、母自身が昔書いたその記事の切り抜きを見つけました。母の宗教の定期刊行誌に掲載されたものでした。

   ※画像はイメージ演出です

それは祖母が目立つように置いたままにしたのか、母が知りながら放置した事なのかはわかりません。祖母は亡くなる前の数年ほどは病院兼老人ホームのような施設に移り過ごしており定期的に家にも泊りで帰る事もありましたが…。祖母も宗教をそこそこに嗜んでいましたが、系統としては近いものであったものの母とは別の宗教団体で、母ほどには過剰にのめりこんでいる様子は見受けられませんでした。

その記事は母がその宗教に身を捧げるに至った話を、結婚から次男誕生まで母の視点から書き綴られたものでした。記事の掲載日は三男の一歳の誕生日付近ではありましたが三男について記述はありませんでした。これからもその宗教と母として励む旨の宣言がそこには書かれていました。

私から見て、その記事を含んだファイルがそのように目につく状態で置かれていた事は祖母から母に対する示唆かあてこすりにようにもおもえました。或いは母がこれに気付いている可能性もありますし母は私に読まれても構わない、むしろ積極的に読んでもらいたいという意図があったのかもわかりません。考えすぎかもしれませんが「どうなのだろうな…」と思いつつ、ひとまず私がそれを読んだ事実は発生し母の過去の一部について仔細に知る機会がありました。



母は感情の起伏が人より激しい側面があり情緒的に偏った性質を持っていました。著しく不安定というわけでも無かったと思いますが、何事かについて責められると面倒な事を避けるように話をよくよく聞かずに理解しようともせずただ受け流す事が多かったりしました。比較的生理が重い体質だったのか頻繁に寝込んでいる事が多かったように思います。良く言えば感情豊かで明るい性格であるようにも見え、例えて言えば「サザエさん」のフグ田サザエから暴力性や毒を抜いたような感じでしょうか。そのように明るく共感性が高い一方で興味の無い他者に対し非常に冷淡な側面も持ち合わせており、フトした拍子にその片鱗が見え隠れするのを私は幾度も気付かされていました。

しかし、彼女としてはそうしたネガティブな性質性向は我が子に対しては『良き母』として決して見せるつもりは無い見せたくはない側面であったように思えます。実際に彼女は自身の子についてのみは、求められれば可能な限り応える寛容な振舞を採り続け、意識的にそうするように努力していたような印象があります。逆に言えば求めない限りは彼女自身の都合を優先し子を放置する傾向もまた有ったと言えます。

彼女自身は、学もそれほどなく飛び抜けた才能才覚も自覚できず各種家事についても秀でたものは余り無い、だけども情緒的で夢見がちな独特の感性を持ったかつて娘だった1人の女性だったのかもしれない。故に社会的にもアイデンティティとしても『母であることそのもの』が、彼女にとってのかけがえの無い拠り所だったのではないだろうか…と。

そのようにも私は考えます。​


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(2018-10-05記)
1日毎に記事をアップロードしておりましたが
STORYS.JPの記事掲載ペースとしては早すぎるようなので、まだ続きを書くつもりはありますが少し時間を置きます。

掲載しているテキストは気が付いた部分について随時加筆修正を行っています。ご容赦の程宜しくお願い致します。

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