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大恋愛  ①

Image by Olia Gozha

フェーズ1:『そこには、30年前と変わらない彼女の笑顔があった。あの頃と唯一違うのは彼女が「パニック障害」になっていたこと。』

ある休日、友達に誘われゴルフの練習場へと足を運んだ。

AM9:30、友達と待ち合わせのゴルフ練習場。駐車場で友達の到着を待っていると、「30分くらい遅れる ゴメン」というショートメール。

「まったく…」 ちょっとだけため息を吐いた僕は時間を持てあまし、友達の到着を待たずに練習場の受付へチェックインすることにした。

はじめて利用するゴルフ練習場。歴史を感じる古い建物。自動ドアが開き、ドアから4m~5m先に受付のカウンターが見える。

カウンターのなかには女性がひとり。はじめての利用に少し戸惑いながらカウンターに向かう僕に、「いらっしゃいませ、お一人ですか?」と笑みをみせる女性に、僕はハッとした。

そこに居たのは、僕が30年前に心から愛した「彼女」だった。

彼女は僕に気付いていない。当然だと思った。あれから30年たち、僕はオジサンになっているし、中年のおなかと中年の髪は、彼女が僕を僕と認識しないことに十分な理由になる。

僕も彼女を十分に観察した。瞳、髪、表情、声…。

そのすべては、彼女を彼女と認識するのに十分なほどの情報を僕に与えてくれた。ただひとつ、彼女を彼女と断定するのに不安だったのは、僕の記憶が彼女を正確に記憶していたかということ。

すごく短い時間をとてつもなく長く感じながら、意を決してようやく僕の口が動く。

「あの…」 明らかに動揺を隠さない僕の様子をいぶかしげに見つめる彼女。

「麻衣子…、だよね」 声を振り絞る僕は彼女を見つめる。

じっと僕を見つめていた彼女が、一瞬、はっとした表情に変わり、声を震わせながら絞り出すように、「拓也なの?…」とつぶやいた。

このときは二人とも気づいていなかった。いま何が起こっているのかも、そしてこれから何が始まるのかも…。

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