今でも私の支え。犬のピピの物語(1) はじまりの詩

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犬がやってくる

すると
魔法のように 空気がかわる

天から
風と雨の群れが
さあっ
と 駆けてくる

日が照らしだす
旅する雲と 闇
星ぼしが動きだし
海のように しめって匂う

いっぽんの草
いととんぼの羽
小さな影がのびる
音が聞こえてくる

犬がやってくる

わたしたちの知らない世界
ずっと昔に 知った世界から

かるがると笑って
わくを越えて

じゅもんのように
しっぽをふって やってくる



***ピピは、1993年生まれのビーグル犬です。若く元気なさかりのある日、突然命を落としました。かかりつけの獣医は毒殺を疑い、私は警察に届けましたが、犯人などはわかりませんでした。その同じ月、おむかいの犬も夜のうちにナイフで切られ、死にました。卑怯に、無理やりに、踏みにじられた小さな命・・。

ピピのきらめく命と、ピピがくれた美しい世界や楽しい日々を書けば、どうしても「その日」に近づいていくことをご承知おきください。何より、私自身がそれに耐えられるだろうか?書くことができるだろうか? 書きながら、今でも泣き、くじけそうになる。  

でも、ピピはたしかにこの世界に生き、輝いた。逝ったあとも、ピピに恥じないように生きることが、私を支えてくれました。

 プロフィールの背景画像や本文中のイラストは、すべて私が描いたものです。とくに「はじまりの詩」の後のピンクの絵は、あの酷い死から四年たって、どん底まで落ちて、でもそれはピピに恥じるものではなくて、だからこそ描くことができた、初めてのピピの絵。

この絵が描けたことで、私の人生が大きく変わっていきました。


それと、物語は今から二十数年も昔の話です。当時の社会ではペットに対する意識もまだまだ低かったことをご了承ください。


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