家族の崩壊 4 「アンタ、大変なトコに嫁に来たね?!」

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『アンタ、大変なトコに嫁にきたね! お母さん芝崎さんのおばさんにそう言われたんだよ。初めはどういう事かと思ったけど、お母さんすぐにわかったよ!』 

その口調は苛立ち、刺々しかった…。 
母はそれ以上は言わなかった。 
言わなかったから、その内容はどんなものだったかは、当時はわからなかった。 
けど、隣近所の人でさえそう感じてたのだから、親父と、そして祖父母は余程おかしな家族だったのだろう。 

ついでに言うと、父には姉がいる。 
俺の叔母にあたる人だ。 
クセのある性格だった。 
正直、今も好きじゃない。 
叔母が来ると、俺は席を外す。 
外出する。 
叔母も俺が避けているのを知っている。 

祖母の顔を見に、頻繁にやってくる。 

一昨年から再び実家で暮らしているので叔母と遭遇するのは仕方ないが、苦手である。 

ニヤニヤしながら、アンタ、◯◯なんだろう? と、見透かしたような事を言うのが大嫌いだった。 
自分の娘…つまり従姉妹のY子でさえ、お母さん(叔母)は性格が悪い。などという始末。 

そして俺はこの家の人間の性格が大嫌いだった。 

今になれば、隣の芝山さんのおばさんが言ってた事や、母が言ってた事がなんとなくわかる。 

あ、多分、こういう部分を指してるのだな…ってのがある。 

今でもそうだが、祖母と親父はまるで恋人同士だ。 
まるで夫婦だ。 

どんなに親父が悪くても祖母は親父を庇う。それを指摘しても 

『何が悪いんだ!? いいじゃねぇか身内なんだから』 

という。 

どんなに親父が間違っていようが身内である限り叱りはしない。 
そして今でも親父が八時を過ぎても帰宅しないと心配して電話をかける。 

正直、気持ち悪い。 
気持ち悪いから俺が怒鳴る。 

『ほっとけよガキじゃねーんだからよ! そのうち帰ってくんだろ!?』 

こういうと 
『どうしてお前はそんな言い方しかできねんだか!?』 
と絡んでくる。 
しつこく絡んでくる。そのうち関係ない話まで持ち出して攻撃してくる…。 


そして親父は帰宅すると、今日あった出来事を楽しそうに話す。 
それを祖母は嬉しそうに聞いている。 

申し訳ないが、気持ち悪い! 

母からは細かくは聞いてないが、ここだけを見てもそりゃ嫌だったろうなと思う。 
母はよく親父に、アンタは本当にお坊っちゃんな! 
と悪態をついていたのを思い出す。 


そんな母の生まれ育った長野県に、母と、弟と、俺の三人で一度だけ行った事がある。 

多分、小学校に上がるか上がらないかの歳だったと思う。 
緑色の車体にオレンジ色の線が入った電車に乗った。 
電車の中で母が一つだけ買った釜飯を、母と、弟と、俺の三人で少しずつ食べた。 
いつの間にか窓の外は雪景色になっていた。 
これしか記憶にない。あとは全く思い出せない。 
恐らく母の生まれ育った育ての親の家に行ったと思う。 
一泊したのだと思う。 
向こうの家族とも会ったのだと思う。 

でも全く覚えてない。 
覚えてない処か行ってないんじゃないのか? って思うくらいだ。 

ただ、親子三人で食べた釜飯の記憶。 
それだけは何故か忘れない…。 

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