暗黒時代 3

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1年の1学期、俺が五木地義則(仮名)とともにつるんだ仲間に上園和徳(仮名・通称カズンズ)というヤツがいた。 

カズンズは、身長は学年で一、二を争うほどのチビだったが運動神経がよく、スポーツは何でも平均以上にこなした。 


俺が6年生の時に一緒のクラスだったのだが、当時俺のクラスではサッカーが大ブームになっていて、クラスの男子の大半がサッカーに夢中になっていた。 

その中でも、特にカズンズは俺とともに熱中したクチだった。 


小学校在学当時から俺とカズンズは、中学に入ったらサッカー部に入ろうぜ!? と誓い合っていた。 


クラスこそ違ってしまったが、俺とカズンズは毎日お互いのクラスを行き来して、サッカーについて熱く語り合った。 

その中に、いつしかゴキジも入ってくるようになった。 

ある時、俺はカズンズにこう質問した。 

「カズンズ、お前ポジションどこ希望なの?」 


「どうすっかなぁ…、ミッドフィルダーかフォワードかなぁ…。まだ悩んでんだよね」 


悩んでるという割りにはカズンズは楽しそうだった。 
きっとサッカーの話をしてるだけでも楽しいのだろう。 

俺は隣に居たゴキジにも同じ事を訊いてみた。 
するとゴキジは思いもよらない事をいった。 

「キーパーかフォワードだな…」 



(何だとぉぉっ!?) 




俺と同じだった。 






俺は野球ならピッチャーかキャッチャー 

ラグビーならフルバックと、いわゆる専門職が好きだった。 


バレーボールも、当時はリベロなんてポジションはなかったが、それと同じような役割を担ってたし、だからサッカーも専門職であるゴールキーパーが志望だった。 


ゴールキーパーというと、擦り傷が絶えない損な役回りのように感じるかも知れないが、逆にそこが「見せ場」だと思っていた。 

ドリブルしてくる相手の足元目掛け果敢に飛び込んで行く。 

蹴っ飛ばされたり、太ももに「ビフテキ」と呼ばれる大きな擦り傷を負うこともあるが、チームのために体を投げ出す…。 

こういった処がキーパーの魅力だった。 

また、相手のシュートに対してダイビングキャッチをしたりだとか、そういった派手なプレーが日頃中心的な存在になれない俺を、表舞台に立たせてくれるポジションのような気がした。 


(その俺と、同じポジションだと!?) 


正直、ちょっとムカついたが、俺は自分のプレーに自信を持っていたし、ゴキジなんかには負ける気はしなかった。 


3人で、早く部活に参加出来る日が来ないかなと、しょっちゅう話をしていた。 



そんなある日、カズンズが突然こんな提案をした。 



「なぁ、みんなで夜練やらない?」 



「夜練?」 


俺とゴキジは声を揃えるようにして言った。 

「そう、夜練。7時位から9時位まで。どっかの公園に集まってみんなでやろうぜ!?」 


「いいね!」 


俺とゴキジはカズンズの話しに乗った。 
すぐに俺達は他の、サッカー部に入部希望の連中に声を掛けた。 

すると5、6人のメンバーが参加すると言ってきた。 



よし! 

という事で、俺達は小学校時代から本拠地にしている「大陽神戸銀行」の駐車場の空きスペースに集まって、早速夜練を開始する事とした。 


ここは一応駐車場だが、元はテニスコートだった場所で、下はアスファルトではなく、土と枯れた芝生になっている。 

周囲は高いネットで囲まれていて、車も敷地の外れに何台か停まっているだけだったので、サッカーをするにはもってこいの場所だった。 




俺は中学生になって、少し気がデカくなっていた。 

あれだけ俺を罵り殴った母は、一切何も言わなくなった。 

俺に対して無関心になった。 

なので、俺の方もタガが弛みっ放しだった。 
親父も長距離運転手でほとんど家に居ない。 


俺達はその後も週3日4日は、夜練と称しては集まっていた。 


だがそのうち、サッカーの練習だけでは飽き足らなくなっていった…。 

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