暗黒時代 5
英治の家は、14階建ての団地の最上階だった。
親父さんは居なく、年の離れたお姉さんと、おふくろさんの3人暮らしだった。
おふくろさんはとてもおとなしい人だった。
英治に対しても、強くものを言えなかったと記憶している。
英治とは小学校1、2年の時に一緒のクラスだったが、何せ目立たないヤツで、ほとんど口を利いた事がなかった。
背は低い部類で、体型としては痩せてるでもなく太ってるでもなくといった感じだったが、中学生になった英治は腹が出て太っていた。
髪は角刈りが伸びたようなアタマで目はつり上がって、見るからに人相が悪くなっていた。
周りが何か話し掛けても、
「バカじゃねぇ!? テメェ…」
を繰り返していた。
そして、いつも不機嫌そうで、何かに対して苛ついていた。
そんな英治を、次第にみんなは遠ざけるようになった。
ゴキジを除いては…。
英治は入学早々から態度が悪かった。
始業式の後、1年5組の教室にみんなが集まり最初に行われたホームルームで、クラスメイト全員が自己紹介をしたのだが、その時から斜に構え、名前をボソボソと言った意外は何も語らず席に着いてしまった。
阿国がひきつった笑いを浮かべながら、森くん、もう少し何かないの? と聞いても、頬杖をついて不機嫌そうにソッポを向いていた。
その瞬間、教室内が嫌な空気に包まれたのを覚えている。
そして阿国は、そんな態度をとった英治に対し、何も言えなかった。
この時に阿国が毅然とした態度で臨んでいたなら、のちの英治の暴走はなかったかも知れない。
────────────────────────────────────────────────────────
一方、俺とゴキジ、カズンズの3人は、相変わらず夜練を続けていた。
部活の方は、4月の20日過ぎから解禁になっていた。
ちなみに、サッカー部志望の者は、30人前後居た。
ただ、まだ仮入部期間だったせいか、出たり入ったりを繰り返すヤツもいて、正式には20人程度だったと思う。
折角、憧れのサッカー部に入った俺達ではあったが、来る日も来る日も球拾いばかり。
こんなんじゃ、自分達で練習した方がマシだな!? と言う事になり、俺達は部活には参加せず、学校から帰ったら練習。
それが終わったら一旦帰宅して更に夜練もやった。
夕方の練習は3人だけだったが、夜練になると他の1年のサッカー部員も集まるので、有意義な練習が出来たし楽しかった。
だが、一つ問題が起きた。
連日の練習のせいか、俺達は貴重なボールを度々紛失したり消耗させてしまってた。
夕方の練習は、河川敷のグランドでやったりしてたので、ボールが川に落ちて流されてしまったり、夜練の時にもボールを幾つかパンクさせていた。
ある日の夜練で、遂に俺達は手持ちのボールを全て失くしてしまった。
ガッカリした様子で、カズンズが誰に言うでもなく呟いた。
「あーあ、もう練習出来ねぇや…」
「高けぇからな、ボール…」
ゴキジも落胆の色を隠せなかった。
それを見て、コイツらは何をそんなに落ち込んでるんだろうと思った。
コイツらはバカか!?
そんなもん、どうにでもなるじゃねぇか…。
黄昏模様のゴキジとカズンズに俺は言った。
「ボールがなきゃ、かっぱらってくりゃいいんだよ!」
親父さんは居なく、年の離れたお姉さんと、おふくろさんの3人暮らしだった。
おふくろさんはとてもおとなしい人だった。
英治に対しても、強くものを言えなかったと記憶している。
英治とは小学校1、2年の時に一緒のクラスだったが、何せ目立たないヤツで、ほとんど口を利いた事がなかった。
背は低い部類で、体型としては痩せてるでもなく太ってるでもなくといった感じだったが、中学生になった英治は腹が出て太っていた。
髪は角刈りが伸びたようなアタマで目はつり上がって、見るからに人相が悪くなっていた。
周りが何か話し掛けても、
「バカじゃねぇ!? テメェ…」
を繰り返していた。
そして、いつも不機嫌そうで、何かに対して苛ついていた。
そんな英治を、次第にみんなは遠ざけるようになった。
ゴキジを除いては…。
英治は入学早々から態度が悪かった。
始業式の後、1年5組の教室にみんなが集まり最初に行われたホームルームで、クラスメイト全員が自己紹介をしたのだが、その時から斜に構え、名前をボソボソと言った意外は何も語らず席に着いてしまった。
阿国がひきつった笑いを浮かべながら、森くん、もう少し何かないの? と聞いても、頬杖をついて不機嫌そうにソッポを向いていた。
その瞬間、教室内が嫌な空気に包まれたのを覚えている。
そして阿国は、そんな態度をとった英治に対し、何も言えなかった。
この時に阿国が毅然とした態度で臨んでいたなら、のちの英治の暴走はなかったかも知れない。
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一方、俺とゴキジ、カズンズの3人は、相変わらず夜練を続けていた。
部活の方は、4月の20日過ぎから解禁になっていた。
ちなみに、サッカー部志望の者は、30人前後居た。
ただ、まだ仮入部期間だったせいか、出たり入ったりを繰り返すヤツもいて、正式には20人程度だったと思う。
折角、憧れのサッカー部に入った俺達ではあったが、来る日も来る日も球拾いばかり。
こんなんじゃ、自分達で練習した方がマシだな!? と言う事になり、俺達は部活には参加せず、学校から帰ったら練習。
それが終わったら一旦帰宅して更に夜練もやった。
夕方の練習は3人だけだったが、夜練になると他の1年のサッカー部員も集まるので、有意義な練習が出来たし楽しかった。
だが、一つ問題が起きた。
連日の練習のせいか、俺達は貴重なボールを度々紛失したり消耗させてしまってた。
夕方の練習は、河川敷のグランドでやったりしてたので、ボールが川に落ちて流されてしまったり、夜練の時にもボールを幾つかパンクさせていた。
ある日の夜練で、遂に俺達は手持ちのボールを全て失くしてしまった。
ガッカリした様子で、カズンズが誰に言うでもなく呟いた。
「あーあ、もう練習出来ねぇや…」
「高けぇからな、ボール…」
ゴキジも落胆の色を隠せなかった。
それを見て、コイツらは何をそんなに落ち込んでるんだろうと思った。
コイツらはバカか!?
そんなもん、どうにでもなるじゃねぇか…。
黄昏模様のゴキジとカズンズに俺は言った。
「ボールがなきゃ、かっぱらってくりゃいいんだよ!」
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