第45話 パパが女(アリッサ)になったとき LA発LGBTトランスジェンダー家族日記
「カミングアウト後に悲しみ、怒り、絶望を感じたことはありますか?」
前髪切ってもらって、ご機嫌アリッサ。目に力があって美しい
アリッサに直撃インタビューシリーズ、第4弾。
「カミングアウト後に悲しみ、怒り、絶望を感じたことはありますか?」
一番悲しかったのは、事実を知ったパートナーの愛から「怒り」を感じたこと。そして、「子供がいなかったら即離婚」と言われたこと。カミングアウトする際に、一番恐れていたことは、愛や子供たちを失うことだったので、離婚という言葉に絶望感を覚えた。
愛が怒りを感じたのは当然。先に子供たちに真実を伝えたのはわたしの過ち。子供たちが母親に話すとは予想もしなかった。このことは今でも後悔しています。
カミングアウトの後しばらく、愛が泣いているのを頻繁に見かけた。それが自分のせいだとわかっているのに、なにもできないのがつらかった。
家族に対して怒りを感じたことはありません。会社ではあります。人事課の代表者が新任の上司ふたりに、わたしがトランスジェンダーであることを伝えたこと。これはわたしが自ら伝えるべきことであって、第三者が伝えることではない。
後に、わたしの許可なしに新任の上司に事実を伝えた理由を人事課代表者に聞きました。すると彼女は「あなたに働きやすく安全な職場環境を提供したかった」と答えました。それは違うでしょ。社内でのカミングアウトはとてもうまくいき、わたしはすでに働きやすく安全な職場環境を得ていた。新しく来た上司にわざわざわたしがトランスジェンダーであることを知らせる意味なんて、まったくなかった。
みんなゴシップが大好き。知り合いの誰かがトランスジェンダーだと知ったらみんな喜びいさんで噂話に花を咲かせると思う。ほっておいてほしい。噂話をやめてほしい。怒りを感じる。だから、もし立場がいれかわったら、自分は噂話なんか絶対しない。噂話をして浮かれてる人は、暇でかわいそうな人間だと思う。
タイの両親は、カミングアウトの前は年に2回はわたしたちに会いにロサンゼルスに遊びに来ていました。カミングアウト後はまったく来なくなりました。ときどきメールで写真とともに近況報告をするのですが、母親から「女性になったあなたと孫が一緒にいる写真を見るがつらいから、写真を送らないでほしい」と言われました。母親の気持ちがよくわかる。彼女の気持ちをレスペクトして、写真はもう送らない。母の心情を思うと胸が痛む。
学校で「父と娘のダンスパーティー」とか「母と息子のダンスパーティー」というようなイベントが開催されるとき、学校側はなんて無神経なんだろうと腹が立ちます。今、家族の形態は様々で片親がいない家庭は少なくない。片親もしくは両親のいない子供たちの気持ちを考慮して、みなが楽しめるイベントを開催してほしい。
自分の体のことを思うとときどき悲しくなる。大きな手、骨太なところなど、努力しても変えられないことがたくさんある。鏡を見て、自分の体に男を感じるとき、とても切なくなる。昨日、職場でプロの写真家を招いて、写真撮影がありました。できあがった写真のなかのわたしは、まだまだ男らしくて、その写真を見た人はわたしがトランスジェンダーであることに気付くのではないかと、不安になりました。セルフィーでしたらもっと上手に取れるのに。
アリッサ、わたしはもう怒ってないよ。もう、隠れて涙を流すこともない。そう簡単に流れないだろうけど、お互い過去のいろいろを水に流せたらよいね。
噂はコントロールできないよ。他人には好きなように言わせておけばよい。人がどう思うかなんて気にしないで、堂々と生きられるようになりたいね、お互いに。
次回の質問。「どんなふうに紹介してほしい?」
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