アホの力 4-22.アホ、事故る

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病院を移って以来、若いリハビリスタッフがマイナスのエネルギーに引っ張られているのを感じた私。せめて私のリハビリをしている時くらいは、マイナスにならないようにしようと心掛けて行動したのだが、それでは問題の根本的な解決にはならない。マイナスのエネルギーは病院のあちこちから出ており(それは入院患者が出しているのだが)、リハビリスタッフはそこに向き合う事が求められるからだ。
どうすれば、引っ張られる事なくマイナスのエネルギーと向き合えるか…。
 

入院患者でもある私がこんな事を考えるのには、『私が入院生活を楽しく送りたいから』という理由もあった。若いリハビリスタッフと仲良くなりたかったという事もある。若いスタッフ、特に女の子と楽しく話をしていると、私の気分もアップする。するとリハビリにもますます力が入る。良い相乗効果しか生まれない。
つまり『楽しい入院生活を送れる』わけだ。

 

それに、もう一つ思った事がある。

病院のこうした状況は、被災地にもあるという事だ。
入院している患者を被災者、リハビリスタッフを被災地復興の活動をしている人達に当てはめて考えてみる。復興のためにと作られた処方箋はあって、それを実行しようとしている人はいても、被災者の気持ちが治療(復興)に向かない限り、被災地の状況はよくならない。被災者の心を動かす取り組みが必要だが、そのために支は援者がどんな意識を持つと良いのか。
被災者の心のケアと同時に、支援者の心の在り方の構築も必要だった。
そう考えると、私が病院で感じた課題と、被災地の状況は同じ質のものだった。

 

どうしよう…私はどう振舞ったら良いのか。
そんな事を考えながら過ごしていたある時、リハビリ中に理学療法士にぽろっとこんな事を言った。

『俺『みんな未来センター』という場で、市民を集めてワークショップなんかやってたんだ。』
南相馬市民をみみセンに集めて『好きまちワークショップ』というフューチャーセッション(未来について忌憚なく語り合う場)を開いたりしていた。
それを聞いて理学療法士が

『何かお話会みたいなものでも出来たら良いんですけど』

と言ってくれたので、つい
『やるやる!暇だし無料でやるから是非やらせて!』

と言ってしまった。
半ば冗談のつもりだった。『まさか病院で入院患者がお話会なんて、病院が許可する訳ないし。』

…と思ったのだが、その理学療法士、何と院長に直接その話をして、次の日にお話会を開く許可を病院から貰ってきたのだった!

マジかよ…有り得ねえ。

これは事故だ。交通事故みたいなもんだ。
でも嬉しい事故だ。何でも言ってみるもんだ。
どうせやるなら

『ただのお話会じゃつまんないから、病院のスタッフを広く集めて、みんなでワイワイ賑やかにワークショップでもやろうよ。』

と提案したところ、そのままOKが出てしまった。

 

かくして、交通事故的に開催が決まった病院内ワークショップ。
ファシリテーターは私だ。
どうする?どうなる?

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