電話ボックスの図書館 35歳ロンドン留学記

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電話ボックスの図書館

英国と言えば、思い浮かべるものの一つにあの赤い電話ボックスがあるのではないだろうか。

当然、スマートフォンの普及で利用者はほとんどいないが、英国人は古いものを愛する気質があるから、今でも代表的観光地では現役だし、役目を変えて使い続けられているものもある。


ある時、大学へ向かう道すがら、スマートフォンで会話をしている女性が電話ボックスに入っていくのを見た。

電話を持っているのになぜ?と思って立ち止まると、なんとその中には数百冊の本があった。


人呼んで「英国一小さなライブラリー(図書館)」。使われなくなった電話ボックスを再利用し、地域の人たちが寄付した本を蔵書にして2013年にオープンした。電話機があった場所には小さな棚が備え付けられ、英国らしいミステリー小説や、シェイクスピアの古典、それに日本の漫画などが収められている。


本を読みたい人は、好きな本を自由に持ち帰って良い。当然24時間、いつでも開いているから、散歩の途中に寄る、子供と買い物のついでに寄る、会社帰りに寄るなど、様々な利用ができる。そもそも、電話ボックスが設置された場所というのは大勢の人が行き交う場所だから、かなりの利用があるようだ。


このような、電話ボックスをライブラリーにする取り組みは、英国内の他の都市でもあり、やはり地域の人が運営し、愛されている。


僕が住んでいたロンドン東部のルイシャムには前述のボックス以外にもう一箇所あり、それは子供向けの本専用だった。僕は大人用の近くに住んでいたから、度々立ち寄り、日本語の書籍があると借りて帰った。

ルイシャムというのはあまりエレガントな地域ではなかったが、この電話ボックスは美しく管理されていて、荒れている姿は見たこともない。(高価な本などはないからかもしれないが。)数年前にはキャメロン首相(当時)から地域をより良くする活動として表彰されたそうである。


この電話ボックスの元祖は1920年代にテートモダンを設計した建築家・デザイナーのサー・ジャイルズ・ギルバート・スコットがデザインした。古いものは文化財に指定されているため、撤去することはできない。


役目を終えた電話ボックスの中には、観葉植物の温室になっていたり、小さな自習室になっているものもあった。それでも徐々に比較的新しいものから撤去されだしており、ブリテイッシュ・テレコムによると、多い時には78000箇所もあったのに、今や8000箇所をきっているそうだ。


数年前には一基2750ポンドで売りに出されたりもした。日本円にして約40万円。古いものに愛着を見出し、結構なお金を出してでも買いたいと思うのが英国人という人たちなのだ。



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Matcha

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