アメリカの野球は、なぜ、こんなにも面白いのか? 1

次話: アメリカの野球は、なぜ、こんなにも面白いのか? 2
カリフォルニアの輝く太陽が西に傾き始める頃。
今日も、砂漠の田舎町の小さな球場に、次々と人が集まり始める。
サマータイムのため、真昼の光を大分残した夕方は明るく、五月なのに、錯覚として、真夏の、なかなか暮れない夕方を思い出させる。
アメリカの学校などでよくみかける、ひょろ長い照明灯もには、この明るさでもすでに全灯され、ナイトゲームの開始をじっとまっている。
日本では、平成だ、令和だ、と大騒ぎしている頃、僕はアメリカ合衆国カリフォルニアの超のつくほどの田舎町の野球場にいた。
田舎町だから、いわゆるメジャーリーグではなく、マイナーリーグと呼ばれる、日本で言えば二軍、三軍の試合だ。
まず、簡単に、アメリカのメジャーリーグ(いわゆるアメリカ大リーグとも呼ばれるアメリカのプロの野球)のシステムから。メジャー球団は、全米の比較的大きな各都市とカナダの一つを合わせた30チームだが、その、各球団のいわゆる二軍以下のチームが、無数に存在する。その無数の、二軍以外チームを総称してマイナーリーグと言う。
二軍とは言ったが、厳密に言うと、日本で言う二軍とか、三軍とは少し違う。一軍にあたるメジャーリーグに対し、その二軍以下の無数にあるマイナーチームは、そのひとつのチーム単体でメジャー球団とは全く別に独立して経営されている、別会社の球団だ。メジャー球団とは単に、選手派遣供給契約を結んでいるに過ぎない。
例えば、あるメジャーリーグ球団が1年に何人もドラフトで選手を取って来ては、自チームが選手派遣契約している、いくつかのマイナーチーム(メジャー球団とは全く別経営の)に振り分けているに過ぎない。

ここまでは、すんなり理解できそうだが、問題は、マイナーチームは、どうやって試合をしているのか。

マイナーチームは、同じようなレベルのだいたい同じような地域の他のマイナーチームとそのマイナー同士のリーグいわゆる「連盟」に属し、リーグ戦を組んで一年戦うわけなのだが…

同じようなレベルでマイナーのリーグいわゆる「連盟」を組むと言うことなのだが、(リーグ戦を組んで戦うひとつのリーグを便宜上わかりやすいよう「リーグ連盟」と表記しよう。)マイナーでは、レベル別に、下からルーキー、1A 、2A 、3Aと階級分けされている。しかし、各階級ひとつずつの「リーグ連盟」が存在しているわけではない。例えば1Aの階級の、「リーグ連盟」は、複数種類の「1Aリーグ連盟」が別々に全米各地に存在する。もちろん他の階級でも3A階級レベルなら「3Aリーグ連盟」が、2A階級レベルでは「2Aリーグ連盟」が、それそれ全米中、不規則にいくつも存在する。しかも、その「リーグ連盟」同士、同階級だからと横のつながりなどはなく、各「リーグ連盟」が独自の方法で、独自の文化を持って運営されている。

さらに、ルーキーリーグなどの下の階級の「リーグ連盟」は全米中はもちろん、下手すると、カナダやプエルトリコ、ドミニカなど国外にも存在する。

ここらへんが、とてもややこしく面白い。

そして、メジャー球団にしても、各階級ひとつのチームとのみ選手派遣契約をするのでなく、球団によっては、1A 階級では、全米中で複数の1A チームと契約していたり、3Aレベルでは本拠地近くの一つのチームとしか契約していなかったりと、ホントに訳がわからない。

さらに…
面白いのは、その、マイナーチームを応援する地元ファンも、オラが町のチームがメジャーのどの球団の二軍なのかとか、あまり気にしていないし、子ども達は、どの球団との繋がりがあるのかは、全く興味がない。

僕が、これから観るカリフォルニアの、66ersも、今をときめく大谷翔平のエンジェズ傘下の、1A階級のチームのはずなのだが、地元ファンにとっては、66ersは、あくまで66ersであって、エンジェズとは全く関係なく地元チームとして応援する。

しかも、謎なことに、どのメジャー球団と、選手派遣契約を結ぶかは、何年か経つと契約完了で、全く別のメジャー球団と、選手派遣契約を結びなおし、その別の球団傘下に入ったりすること。当然選手も指導者も一斉に変わるわけだが、マイナーチームは、そうでなくても選手は毎年入れ変わる、つまり、もっと上のレベルのマイナーやメジャーに昇格したりクビになったりするので、全選手入れ替えになったとしても、大騒ぎされることもない。

さらに事情を複雑化させるのが、どこのメジャー球団とも選手派遣契約を結ばれろず、文字通り全く独立したチームとして存在するいわゆる独立リーグもある。がしかし独立リーグの話をすると話がややこしくなりすぎるので、その話はまた今度。


その昔、実は初めてマイナーリーグを観た時、まだネットもなく、どこにどのマイナーチームが存在しているのか、皆目見当つかなかった。とりあえずロサンゼルスに行けば、その大都市の、象徴チームであるドジャースのファンに聞けば、どこにドジャースのマイナーチームがあるかわかるはずだと思って出かけたものの、誰に聞いても、ドジャースが、全米どこにマイナーチームを持っている(契約している)のかを知らなかった。ホテルでも、旅行代理店でも、ツアーガイドでも知らない…

当時は今以上に、マイナーチームは、その地元のファンによる地元チームという位置づけだった。

結局、日本語の分かる旅行代理店経由で、チケットブローカーの事務所を紹介してもらい、そのブローカーが、直接ドジャースに問い合わせてくれ、幸運にも、同じカリフォルニアにマイナーチームが存在していたことを知ったのだ。

簡単に説明するはずが長々語ってしまったが、このような経緯なので、地元ファンにとっては、マイナーチームは、「マイナー」ではなく、オラが町のヒーローチームとして、町の娯楽のど真ん中に位置しているのだ。

カリフォルニア州サンバナディーノの66ersは、まだ、ロサンゼルスまで車で出ようと思えば、2時間程度で出れるが、多くの、マイナーチームのある田舎町は、大都市なんて、生まれてから行ったこともない子ども達が大勢いるような地域だ。下手したらメジャーリーグのチーム自体知らないんじゃないかと思えるほど、彼らの野球と言えばその町のマイナーチームなのである。

ポケットの中のスマホが、ブーぶーと音を立てる。多分ラインで友達が平成最後のなんちゃらかんちゃらを、つぶやいているのだろう。さっき、たまたま目に入ってしまったヤフーニュースで、渋谷で平成最後のカウントダウンがあるとかないとかを見てしまって、見たことを心の底から後悔したばかりだ。

球場の駐車場には子どものファンの姿が目立つ。ほぼ、全員グローブ持参なのは、最近では日本でも知られ始めた、アメリカではスタンドに、打ち込まれたファールボールは、もらえる、と。確かに、そのためだと思われがちだか、そのためだけではない。試合がつまらなくなったら、球場内の、空いたスペースで勝手にキャッチボールをするため、もしくは、グランドの選手に向かってグローブを構えると、驚くほど頻繁に、選手がボールを少年少女ファンに、投げ入れてくれるから。

勝手にキャッチボールするスペースは、スタンドの切れ目とか、ポール際のバーベキュースペースの芝生の上とか、それこそ無数にある。

彼らは、野球を、観に来ているのではなく、野球をしに来ているのだ。

日本では、子どもが遊ぶための公園で、キャッチボール禁止とか、訳がわからない事態が一向に改善される気配が無いが、こちらでは、スタンド脇のホットドッグ売り場の前のスペースで子どもが全力キャッチボールするボールは、硬球だ。軟球はアメリカに存在しない。

ケガをしたらどーしよー、とか、発想そのものがない。

ただ、ひところに比べて、スタンドとグランドレベルを隔てる防球ネットは増えたようだ。

これも、アメリカ野球が日本に紹介され始めた頃に、盛んにいわれたことだが、アメリカの球場には、バックネット以外の、防球ネットはなく、グランドレベルがものすこく近く一体感を感じることができると…しかし、最近の球場では、ベンチ上にはネットがあるし、観客の安全面への配慮ひところに比べと格段に進化している。

いっとき、日本の球場も、アメリカを真似て、ベンチ上のネットを撤廃したり、フィールドシートなんていう、グランドレベルに無理くり観客席を用意したりしてたが、無理矢理選手との距離感詰めても実際どうなんだろうとかおもったりして。高校野球の時には、ブラスバンドの子達にファールボールが直撃して危ないから、せっかくネットを取っ払ったのに、仮設ネットたてたり、同じく、高校野球では超満員なのにフィールドシートは解放しないで立ち入り禁止にしてるため、そこだけガッラガラの空席で変な空気感かもしだしたり、よく分からない対応で、アメリカ球場を形だけ真似した違和感がありあり。

ともかく、まだ、球場に入っていない、駐車場レベルから、もう、球場に入った後のワクワク感が子ども達からほとばしる。その、駐車場にしても、通常は球場の広さの数十倍はある広さで、航空写真で見れば駐車場の中に球場が埋没してみえる。

そして意外な事だが、その駐車場は、どこの球場も、ほとんど有料で、それなりの料金を取られる。

ファンサービスが徹底しているアメリカなのに意外に思われるかも知れないが、駐車場を無料にすることで、ゲームデーに、球場周辺が大渋滞することを避ける、これもファンサービスの一環らしい。

なるほど、日本の地方都市は、土日祭日は、イオンモールを中心に大渋滞を起こす。これにウンザリするする地元民は多い。

でも、試合終了後の駐車場を出るときの大渋滞は??これはまた、その対策が完璧になされているが、これはまたそのときに触れよう。

なにせこの文章は、まだ、駐車場に、とどまっていてまだ球場の中に入っていない。

駐車場から見える風景で面白いものをもう二つ三つ。

子ども達は、駐車場でも硬球でキャッチボールをしている。車にでもぶつけたら…という心配は、ほんとにしない。車はへこむもの、がこちらの常識。

もう一つは、大人たちは、駐車場でさえ、もうバーベキューを開始している。球場内にバーベキュースペースもあるが、開門まで待たず始めちゃうのもこちら流。バーベキューがメインか、野球がメインか、その答えは、試合開始後よくわかることになる。

開門時間まではこうして、駐車場で過ごす。

そこで開門時間だが、マイナーでは早くても試合開始時間1時間前。コアな野球ファンなら、試合前のバッティング練習や、シートノックから見たいもの…という考えは、根本から通じない。その理由は球場内に入ればすぐわかる。

最後に。球場、球場と表記して来たが、こちらでは球場の訳語である、stadiumという表現はほとんどしない。一般的にいわれているように、誰もが、ボーパークという表現をする。なんで、パークなのかは…まぁそれは、入って見ればわかる話で…

さて、それでは、いよいよボーパークに足を踏み入れよう!

続きのストーリーはこちら!

アメリカの野球は、なぜ、こんなにも面白いのか? 2

著者のAzusa Aragakiさんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。