プロフィール第五回

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苦しくて苦しくて息がつまるような日々。
そんなある日のこと、家に帰るとたまたまミセス向けの古い雑誌が置いてありました。
ホステス時代の母が残した遺物だと思われます。
なんとなくパラパラめくってみると、メイクのページに目がとまりました。ふと見よう見まねでメイクをちょっとだけしてみることにしたのです。
当時、母は職業柄のせいか、コスメ収集癖がありました。一緒に買い物を行った時も「この色可愛い~」と言ってコスメをよく買っていました。けれど使うのではなく、買って満足するタイプのようで、飽きたらポイっと乱雑に置いていました。
幼少期の頃から私は、化粧品は使わずとも接していたようです。
置いてあった雑誌をみながら、家にあった茶色のアイシャドウだけを、まぶたに塗ってみました。するとまぶたに色を付けただけなのに、なんだか目が大きくなったように見えました。きっと他の人が見ても、ほとんど変化はわからなかったと思います。
しかし私にとっては「なんだかいつもと違う!」と、胸が高鳴る思い。憂鬱な毎日を送っていた自分とは違う、別の自分になれたような気がしたのです。
それ以来、朝は毎日メイクするようになっていきました。
とはいえ、メイクについて全くの無知でした。右も左もわかりません。塗れたらなんでもイイと思って、家にあったグリーンのアイライナーをぐりぐり塗ったり、母が「あご先にチークをつけたら良い」と言ったので100均で買ったチークをこってりつけたり。
するとクラスメイトに「なんかへんだよ」とメイクを指摘されたり、「あごにチークついているよ」と笑われりもしました。なかなかパンチのきいたメイクで学校へ登校していたと思われます。
今ほど動画が主流ではない時代、メイクについての情報源は雑誌くらいしかありませんでした。
雑誌だと文章での説明になるので、「まぶたのキワ1㎜くらいに〇〇するように〇〇して」などと、頭でイメージするしか他ありません。私は不器用なので、塗りすぎたり、薄すぎたり、塗る場所が違ったり。それでも「これってこんなかんじ?」と、いつも鏡の前で悪戦苦闘していました。
雑誌で紹介されているコスメは値段が高いので、その代用として、100円ショップでいろいろ買ってました。全て100円なのに、バラエティーが豊富で、見ていてとても楽しいのです。新製品が入荷していないか、売り切れ商品が入荷していないか、チェックしていました。
飽きっぽい私でしたが、こればかりは無我夢中。あの頃のお絵描き熱にそっくり。
高校生活が進むにしたがって。
ほんの少しだけ母のうつがマシになります。
そしてメイクという共通の趣味と話題がこうじ、徐々にクラスメイトと打ちとけられるようになってきました。
仲良くなったとってもオシャレな子がいます。その子とは、帰り道に本屋さんでファッション誌を一緒に立ち読みしたりしてました。この服が可愛いだの、このモデルさんが気に入らないだの、さんざん立ち読みして、あーでもないこーでもないと好き勝手に言いあいました。
徐々に、その子とのつながりで、私とは決して仲良くならないような活発で明るいクラスメイトたちと話す機会が増えました。その中でも軽音楽部の子と仲良くなって、好きな音楽について情報交換したりもしました。その子は個性豊かなタイプで、分け隔てなく話しかけてくれました。
これまでの写真にうつる私の表情は、どこか暗い影がありました。けれどこの頃から表情が少し明るくなった気がします。
メイクをきっかけに交友の輪を広げ、少しずつ少しずつ高校生活を楽しく過ごせるようになっていきました。
いつしかラクガキ帳に絵を描くのではなく、顔にえがくようになったのです。

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プロフィール第六回

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