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プロフィール第六回

Image by Olia Gozha

長いような短いような。

そんな高校生活が終わりました。

中学と高校は、青春というものを体験できず。かといって学費がなく、大学デビューもできず。会社へ就職することになります。

高校の斡旋で、いくつかある求人の中から、ある運送会社の事務職に就職することにしました。その会社にした理由は、母に「営業なんて無理。あんたは事務職でしょ」と言われたからです。

4月から社会人なので、私は社会人デビューの準備にいそしみました。髪の毛を染め、笑顔をうまく作れるように顔筋トレをしたり、洋服も買ったりしました。雑誌も穴が開くくらい何度も何度も繰り返し、読みました。日夜、メイクの研究を重ねました。

学生時代みたいに、冴えない人生で終えたくなかったので必死でした。今やらないと、一生手遅れになる。4月でこの先の人生すべてが決まる。高校デビューならぬ社会人デビューに向け、鬼気迫る思いでした。

とにかく社会人デビューというものにこだわっていました。中学生の時に部活でハブられたことや、高校生の時にイジられたこと。暗い暗い家庭の問題。何気なくクラスメイトが言った「カンナちゃんの見た目って暗い子に見える」という言葉。それらが私の心には、ずっとこびりついていました。それらを払拭すべく「なにがなんでも変わらなければいけない」と、鬼気迫る思いを胸に秘め、社会人デビューするのです。

とりあえず初任給では17冊のファッション誌を買いました。「初めてのメイク」系のムック本を片っ端から買いあさりました。置き場がなく机に平積み状態。どんどん積み重なる雑誌の山を見て「これだけあれば絶対に変われる」と強く信じていました。

買った中でも特に衝撃だったのが、popteenという高校生のギャル向け雑誌です。なんせギャルとは無縁の人生。ギャルモデルの子はメイクが濃く、みんな美人だし「何か参考になるかもしれない」と冗談半分で買ってみたのがきっかけでした。

ギャルメイクというのは、なかなか自由なもので、学びが多くありました。アイラインだって目の形を無視して引いたり、つけまつげを切って貼って目の形を自分で作ったり。「可愛けりゃイイじゃん」という明るいノリが、メイクを楽しくさせました。私もつけまつげをつけるようになり、それだけでとても顔が変わるのを実感しました。

高校生の頃は家にお金がなく、私が着られる服は2着しかありませんでした。制服があるので困りはしませんでしたが、会社は私服通勤だったため、そうは言ってられません。どんどん服を買いました。雑誌popteenに出会ってからは、ギャル服も着るようになりました。ギャルメイク&ギャル服で都会の街を歩いていると、なんだか気が大きくなり、自信を持って外を歩けたのです。

そうしていると「夜のお仕事に興味ありませんか?」というキャッチが異常に増えたのです。今までそんなこと一度もなかったので驚きましたが、「見た目が変われば反応も変わるんだなあ」としみじみ思いました。

ただ、笑顔をつくるのが苦手でした。なので、お風呂場で顔の筋トレを欠かさず行うようにしました。高校時代、憧れていたクラスの子がいました。いつも笑顔を絶やさない子で、その子と話すとみんなが笑顔になるようなマドンナ的存在。私とは似ても似つかない。だけれど少しでも近づきたい。その一心でした。そのかいあってか会社でも「笑顔がいいね」と言われるようになりました。

休日、高校時代のオシャレ好きな友達と回転ずしを食べに行った時のこと。「カンナちゃんが可愛くなったってみんなが言ってるよ」と言ってくれました。そんなこと言われたことがなかったので、驚きました。

入社したての春。

とにかく生まれ変わって美人になりたい。そう強く強く強く、望んでいました。

しかしこの時の私は、これから始まる“闘い”なんて知るよしもなかったのです...

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