「こどものひとこと」

次話: 「くちごたえ」

幼いこどものひと言には、思わず唸らされることがあるものです。

病院の待合室のベンチに腰掛け、会計を待っていると大きな薄型テレビに
天気図の前で、その日と翌日の大気の流れや天気の推移を予報士さんが
丁寧に説明する様子が映し出されていました。
すると傍らに座っていた息子がひとこと
「父さん、天気予報の小父さんはさぁ、天気が当った日だけお給料もらえるの?・・・」
いやはや手厳しい限りです・・・。
また、自宅からほど近い、小さな動物園に出掛けたときのこと。
ひらがな、カタカナを覚え始めたころなので、動物の公開場所に移る度に
動物の名前を読み上げてゆきます。
「シベリアオオカミ」「ミーアキャット」「アミメキリン」という具合で
す。順路を進み日本原産の動物展示エリアまで来たところで・・・
「あれ?・・・ムササビ?・・・な~んにもいないなぁ・・・」
薄暗い檻の真ん中に、止まり木のように樹が立っていて、そこに大きめの
小鳥の巣箱のような木箱があるだけです。中央に繰り抜かれた穴も真っ暗なだけでなにも見えません。
「ムササビは夜行性、夜に活動する動物だから、きっと巣穴で眠っているんだね・・・」と説明する私をキッっとした怒気を含んだ、大きなふたつの目が見あげています。
「だったら、なんで動物園に連れてくるの?!夜になんか誰も来ないじゃぁない!可哀想じゃないか!!」
からっぽの檻を睨み、ぶつぶつ怒りながらスタスタと進む小さな背中に
「おっしゃる通り・・・」の心境でした。ひとこともありません。

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「くちごたえ」

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