スタートライン 24

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 服を脱ぎ、水着に着替える。上半身には黒いラッシュガードを着る。頭と手を入れ、腹までラッシュガードを下げる。腹にある大きな手術跡が視界に入った。しかしいつも僕は何も思わない。潜る時にはウエットスーツをその上から着るが、まだ時間があった。更衣室を出て、大きく手を挙げながら背を伸ばす。ゆっくりと休憩場所まで歩いて行く。
 さあ、今日はどんな海だろう。どんな魚がいるのだろう。いつも講習で潜る場所だからどんな魚に会えるとかは把握しているが、野生なので絶対会える訳ではない。それもあっていつもワクワクした。海の綺麗さも、毎回同じではない。加えて和歌山にはダイビングスポットが無数にあり、飽きない理由にもなっている。ダイビングといえば沖縄や海外でするイメージを持つ人は多いかもしれないが、実は関西の海で大阪から日帰りで楽しめてしまう。こんなに楽しくて癒される異世界に、気軽に行けるこの事実をもっと広めたい。もう15年続けているが、いつも楽しいし、癒される。この熱狂は覚める気配もない。ずっとこういう暮らしをして生きたい。

 僕の腹には手術跡がある。過去にしている。生まれて3日でして、それから12年間大きな病院へ通院していた。しかし、普段は大きな病気で手術したように思われないし、他にも病気あるのも気づかれない。僕は先天性の病気を持って生まれた。そしてほかにも色々と抱えている。成し遂げたい夢があり、長生きしたいから、健康にかなり気を付けてる。タバコやめたのもそう。本当はタバコを吸いたいが長生きしたいのでやめた。体調ばっちりの日のほうが圧倒的に少ないけど、病気のせいにしたくない。病気のせいにしてしまうのはラクだけど、とっくの昔に病気のせいになんかしないと決めている。
 困難ダラケだったけど、自分の一度しかないこの人生を、簡単にあきらめたくはなかった。
 あきらめない気持ちを持てる様になったのも、病気のおかげかもしれない。ある病気とか困難は一生治らないし、お腹にある大きな手術跡は絶対消えない。だから自分がどう頑張っても解決しないこういう事に比べたら、夢や目標は自分の頑張り次第で叶うから嬉しい。それってスゴイと思う。
 自分で運命を切り開ける可能性があるって。
 生まれた時から体調が悪いから、体調悪いせいにしたらキリがなかった。そんな事考えても全然楽しくないから、考えないようになったし、気にしなくなった。
 色々あるけど、まあいいんじゃないかな?それより楽しい事したり、ワクワクする事考えた方が楽しいのではないかな?すぐにこういう考え方にたどり着けなかったが、嘆くよりこっちの考え方の方が好きになった。こういう経験は、ハンディのある方と接する時に活かされている気がする。今は楽しいし前を向いているが、ずっと楽しかった訳ではないし、下や後ろを向いて生きた時代もある。

 毎日ずっと楽しいしかない!という人なんて本当にいるのだろうか?悩む時は悩むし、時には愚痴を吐く時もある。ロボットじゃないからそれで正常だと思う。僕らは人間だ。
 生きてたら色々あるけど、友達がいて良かった。
 生後3日で手術を経験したり、12年間の通院大変だったねとか、お腹に今もある大きな手術跡の事言われても、ピンとこない。
 過去の話だ。
僕は今この時間を生きている。手術跡も気にしてない。むしろ、かっこいいとすら思えている。なかなかあるものではないし、説得力あるとすら考え、跡があって良かったと肯定している。
 今、楽しいよ?
 嘆く時間があれば、楽しい事をしたいし、ワクワクしていたい。
 そもそも、自分の人生のメインは病気なんかじゃない。それを決めるのは僕だ。
 決定権は僕にある。
 病気や運命を、チャレンジしない理由にはしない。たったの1回しかない人生だ。
 どうあがいても解決しない悩みなんかに僕の人生は支配なんかされたくない。そんなの、とっくの昔に運命として受け入れてしまって、終わりにして前を向いてる。しんどいなーとか思うことなんて頻繁にある。生まれた時からしんどいのだから。
 友達や仲間たち、大切な人達がいるから頑張れる。応援いただいている方がいるから、頑張れている。

 そして、自分のコンプレックスも自分の一部として認めて、まあ、いっか!と思えるようになったのも大きいと思う。
「まあいいか!」
好きな言葉だ。
そういえば、ドラゴンボールの悟空も、初めてしっぽが切れたとき、ショックだったけどすぐに「まあいいか!」と言ってしまっている。
子供ながら、その悟空のポジティブ思考に衝撃を受けた。
 

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