【5】痛みと温度が同居した日 ~映画監督との出逢い~

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次話: 【6】痛みと温度が同居した日 ~処女の強さ~

東京は目黒駅を降りて 権之助坂をくだる。


向かった先はホリプロ。そこがオーディション会場だった。


とても緊張していたのと、迷ったら困ると思って早くに到着してしまい
待合室でまつも落ち着きません。
周りには同世代の女の子たちがたくさんいました。
目を合わせないように・・でも凛とした姿だけは必至でたもって。

目を合わせた瞬間に自分の決意が揺らぎそうで怖かった。
15歳のこれが精いっぱい。

ふるえそうな手を握って、そして席を立ちました。

まさかこの時の この行動が運命を左右するなんて思いもよらなかった。

席を立ったわたしはトイレに向かいました。
鏡に映る自分をみて 何度も深呼吸をした。
目をつむって そして 何度も祈りました。

そして 席に戻ろうとして トイレの扉を開けると
目の前には階段があって、そこに数人の男性が座っていました。

ちょっと強面のおじさんたちだったけれど
なんだか その瞬間 妙にホッとして そして
なんとなく なんとなく 彼らに一礼をしたのです。

このときは知る由もなく・・・・。

強面のおじさんの一人が映画「ファザーファッカー」の監督
荒戸源次郎さんでした。

一礼をしたその時に荒戸監督の中では
静子(役名)がココにいた、と直感で感じていたそうです。
そしてこの時 すでにわたしに主演を決めていた、とあとから聞かされました。

だからでしょうか。
その一礼のあと、席に戻っても緊張が起きませんでした。

実際にオーディション中 コトバ選びは下手だったけれど
わたしの中に息づいた確信だけは不思議とあって
自分らしさを表現できた気がしていました。

その後 二次審査を通過し 三次審査を通過し
最後に残ったのは 3人。

合否は自宅へ連絡が入るとのこと。

それからの毎日 電話が鳴るたびに胸が高鳴りました。

本屋へ駈け出したあの日の生きた心地は
この時には 逆に生きた心地を無くしたほどです。

そして 休日のある日 その電話は鳴りました。



15歳のわたしは ただただ 希望に あたたかな涙を流しました。


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