発見や発明 2.1.1 見よ、さらば与えられん

前話: 発見や発明 2.1 細かな観察

 松下幸之助氏が二股ソケットを発明、製作、販売し今日の松下電器産業の基礎を作られたことはあまりにも有名な話です。これは人々の不便さをよく見て、その解決をご自身でなさり、ビジネスとして成功されたということです。

 私たちの周囲には多くの不便さ、理不尽さ、困難などがありますがこれらに愚痴を言っているだけで過ごしたのでは何の解決にもなりません。欲求不満が溜まるだけです。見つけた課題への解決策をまず自分が実践し、第三者に納得してもらえるような状態にまで具体的に物として提示し、動作実験までしなければ自分のアイデアだと世間に向かって声をあげて主張することはできません。先ずは良く観察することです。

 私が高校生時代にタイマー付き電気スタンドを作った時や、節電虫(益虫)の実験機一号を完成した時も同じです。利便性を求めて、あるいは不要な待機電力消費に理不尽さを感じる前には観察行為がありました。そして自ら観察することと同じように、先人の偉業を観察してそれを自らの力のレベルで解釈して自らの力に蓄えることも必要です。

 2000年度ノーベル化学賞を受賞された白川元筑波大学教授手記( 00.11.02 朝日新聞)を読んで私は以下のように自分の過去を振り返り、その時の私の希望を以下のように記録しています。

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化学を専攻され、導電性プラスチックで2000年度のノーベル化学賞を受賞された白川さんが寄せられた手記を拝見して、化学を少し勉強したという共通項だけで私も同じように過去を振り返ってみたい。

私はいつごろから理科に、特に化学に興味を持ったり好きになったのかはよくわからないし、きっかけがあっとも思えない。小学校や中学校では化学が独立して教えられていた訳ではないので、化学を意識したのは高校の科目として一週間5時間の授業があり、一学期の成績があまりもひどいものだった時だろう。

高校卒業までは尾道北部の田舎で育ち、田んぼや畑、山々と海に恵まれた土地で育った。周囲の動植物や環境が自然そのものであった。長い人生を考えれば人工的環境にだけに身を置かなければいけない最近の小学生、中学生などと違って、考え方によっては大変恵まれていたのかもしれない。

自然環境とのかかわりとして思い出されるのは家の前の池での魚釣り、山々での小鳥取り(兄が熱心であり、取ってきたメジロやウグイスなどをよく見ていた)、そして両親や祖父母の農作業での手伝いなどだ。

前述の通り化学を意識したのは高校になってからだ。一学期の成績は赤点すれすれの2か3だった。これが通知票の点(10点評価)だった。そこで自分なりに発憤して二学期は中間試験で100点満点、期末試験も90点台で通知票は10点評価で一気に10に跳ね上がった。単純にうれしかった。

今から思えば、化学という学問も他の教科と同じように我慢して基本的知識として一定量を覚え込むことが必要である。その基本的な暗記部分がしっかりと頭に入ってはじめて、反応や理論を理解できる科目だと思う。一学期の不振、不勉強への反発が私の化学の勉強に対する基本的な姿勢を教えてくれた。そして、これが現在の私の開発意欲への基本姿勢を形成しているのかもしれない。

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理科や化学への興味、もっと広くは科学技術への興味をいだく小学生、中学生は少なくないと思います。数学や国語などとは異なった面白さが存在するからです。実験で自分のアイデアを注入したり加えたりすることもできるのです。

知識の積め込みも上述の通り一定量は必ず必要です。その必要性を理解する意味においても小学校や中学校での実験を中心とした体験授業、実践教育を望みます。大学だけに限らず高校、中学校でも職場での職業経験インターンシップをもっと取り入れて欲しいと思っています。(これを記述したのは3年前の2002年ですが、現在2005年では生徒の職業経験インターンシップはかなり広く行われるようになっています。)

指導者には幅広い経験と人格者を登用するために、教職に就く前に一定時間、例えば10年くらいの教職外の経験を持っている人たちにも教職の門戸を広く開放してほしいと思います。むしろ、これを教師になるための義務、前提条件にしてほしいと思います。

次に私たち教育関係者以外の一般人で何が協力できるかを考えてみましょう。私は私の経験を話すように地元の高校、専門学校に依頼されたら、あるいは職業経験インターンシップのための場所提供や指導を依頼されたら、できるだけ積極的に応じています。

地元の産業、サービスなどを幅広く若い人たちに知ってもらう努力もしています。地元の尾道ケーブルテレビで「会社拝見」、「クローズアップ情報」などの番組を直接制作してその紹介を1999年から今日までずっと続けています。この番組紹介パンフレットには以下のような言葉を列記している。

尾道ケーブルテレビ番組「会社訪問」の製作放送目的: 製造業へ応援  

 1)尾道を中心とした過去~現在の”ものづくり”を記録し伝承する。

 2)全国の他地域との番組交換・情報交換により地元地域経済を活性化する一助とする。

 3)若い人たち(小、中、高校生)に物のできる過程、苦労、喜びを少しでもた とえ間接的であっても知って、興味をいただいてもらう機会を提供する。

 4)独創的な考えや視野を養う機会を提供する。

5)経営面で局に寄与する。

地元尾道の隣町の福山では地元の社長さんたちの発案で、中学生のための電子工作教室が開かれますし、広島では小学生を対象とした「わたしたちのお店経営」という体験プログラムが経済産業局主催で行われ、メールマガジンとしてその様子が配信されてきました。以下の通りご紹介します。当時の西出徹雄中国経済産業局長の執筆です。

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 METI CHUGOKU TIMES<2002.12.24 No.124> 中国経済産業局メールマガジン

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「子供たちの心に灯をともす」【NO.49

 「わたしたちのお店経営」と題して、当局の主催で小学生を対象とした第1回目の起業家体験塾が広島で、先週、先々週の週末に開かれました。

 この企画は3日間のスケジュールで、小学生に会社を作り、品物を作って売ることを実際に体験してもらうベンチャー教育です。まず最初の土曜日に仕事をするとはどういうことか、勉強とどう違うのか、商品を作る、会社を経営するとはどういうことかの説明から始まり、5人ずつのグループに分かれて、会社を作り役割分担をし、それぞれの事業計画を作り、銀行から借り入れをするところまで。次の土曜日に事業計画にしたがって、材料を仕入れ、実際に作り、翌22日の日曜日に町に出て、実際に販売し、最後は決算報告書を作るところまでを行いました。

 今回の企画は起業家体験塾運営会社ルネサンスの山本紀道塾長によるもので、各グループにはコンサルタント役の方が付いて指導に当たります。整理と整頓はどう違うかなど、子供より大人が一々納得するような説明で、小学生だけでなく、中学、高校、大学、社会人に実施すれば、それぞれなりに意味のある企画であるようにも感じました。何よりもまず説明を聞く時の子供たちの生き生きした表情、指導されると即座に動く動作が機敏で見ていて気持ち良く、印象的でした。出来上がった商品は本通りの広島ガスLIPの前で販売されて見事即日完売し、利益も出たようです。是非学校の先生方にこの様子を実際に見てほしいものですが、新年1月19,25,26日に、もう1回予定しています。

 12月21,22日の週末、福山では備後半導体技術推進連合会(BISTEC)とポリテクカレッジ福山(福山職業能力開発短期大学校)の主催で中学生を対象とした「楽しい電子工作教室」が開かれました。

 ポリテクカレッジの教室を会場に、中学生20人がそれぞれに7石トランジスタラジオを組み立てるものです。ポリテクカレッジの先生が説明と指導を担当しますが、先生方に混じって、今回の呼びかけ人であるローツェの崎谷社長、アドテックの藤井社長は子供たちがハンダ付けしながら回路を組み立てていくのを熱心に指導しておられました。お二人は半導体製造用のロボット搬送機とプラズマ電源の分野ではそれぞれ世界のトップを走っておられますが、小さい頃にラジオの工作などを通じてこの分野に興味を引かれたご自身の経験から、自らの時間とお金を提供してこうした企画を実践されたものです。中学生たちも苦労して作ったラジオから音が出れば、なぜなのかラジオの原理も知りたくなるでしょうから、2日目はその理屈の説明に充てられています。

 普段の学校教育の場では消えつつある技術工作を実際にやってみることを通して、その楽しさを実感してもらおうという目的で始められたものですが、今回の電子工作教室は初めての試みで、20人募集のところへそれを大幅に上回る応募があったそうです。それだけ関心も高く、ラジオ作りを自分でやりたいと思う中学生が沢山いるということでしょう。今回はほとんどが地元の中学生でしたが、ほかの地域でも崎谷さんや藤井さんと同じような志をもった方々がこうした場を作っていただければ、まだまだ沢山の中学生がもの作りの楽しさを感じてくれるのではないでしょうか。

 企業も産業も地域も、発展の基盤が最後は「人」に行き着くとすれば、若い人たちの心に熱い思いの灯をともさないことには何も始まりません。

 教育の責任は家庭か学校かと論争するより、目の前にいる子供たちの目の色が変わることをみんなで始めることが先ではないでしょうか。

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私もかつて上述のケーブルテレビ番組制作の前に3年間ほど担当した地元FM放送局のパーソナリティーをしていた時に工業技術センターと家庭を結んで身近な科学実験体験を企画して子供たちが喜んでいたのを記憶しています。100の提言より1つの実行が大切なのかもしれません。

 しかし、すべてを与える、準備しては参加者の独創性や創意工夫の芽が出にくくなるかもしれません。予算的にそして物質的に少し足りないさじ加減が必要です。
 写真のファクシミリは無駄な待機電力をカットして節電する装置「節電虫」開発の出発点、技術開発のための発見元となった1990年前後のファクシミリです。私が実際に使用していたモデル型式はリファックス50でしたが、当時のファクシミリの待機消費電力は24ワット時くらいでした。


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