ハロー!クロスアセクシャルマンの愉快日記3~お待ちかね絶望編1~

次話: ハロー!クロスアセクシャルマンの愉快日記5~恋愛すっ飛ばしたキスから学んだこと~
 おそらく、ひとつ前の「希望編(笑)」を最後まで読んでも尚ここにお越しくださったということは、そう言うことなんだろう。ならば、「こんなストーリー書いてる奴がいるんだけど・・」と、周りの人との話のネタにでもしてくれると大変僕は嬉しい。よく分からないままここのページに辿り着いてしまった人は、一つ前も是非御一読願いたい。
 さて、最初に宣言しておこう。今から語るのは全て全て笑い話だ。無論、最後にも念押しはするけれど、そう、これは大変愉快痛快な笑い話。間違っても悲劇語り等ではないので、認知フィルターの準備はしっかり整えておいて欲しい。
 絶望と言う程大層なものでは無いのかもしれないが、ある意味この絶望は調子こいて反抗していたからこそ生まれたものというか、例えるならば自身で漸く掴んだ自由の翼を自分でへし折らねばならないような、もしくは例えに倫理が無くて申し訳ないが、つまるところある種の自死のようなものである。エェ・・堅苦しい言い草はこの辺にしておいて、単刀直入に言おう。人生、凡そ好き勝手出来るのなんて高校生か大学生の間くらいまでなのだ、ということだ。ひとつ前で言った通り、僕は確かに高校でまず「あたし」を捨て、大学で「決定済みの性別」を覆した。ここまでは上手くいっている。けれど、大きく分けて二つの観点から、再度僕は「やはり体の性別を無視して生きていける訳など無いのだ」という事実を叩き付けられることになった。一つは入学して暫くに。もう一つは、ごく最近に得られた、観点。いい加減諦めが必要なのかと、それでも自由は捨てたくないと、悩み、悔しんで、初めて自分の体と頭の微妙な食い違いを激しく呪った。まぁ、よたよたとお話ししよう。
 一つ目の観点というのは、やはり体力差の事だ。これまでの小・中・高では、体力の事については「男女同等の基準で優劣を判定されること」というのはほとんどなかったと思う。僕は体力テストでも(持久力を除いて)は基本的に”女子”の中では上位だったため(運動は嫌いだけどね)、そもそも自分の基礎体力をそこまで疑ってかかったことも無かったのだ。
 だがしかし、今の学校に入学して相当色々な事で「男の子に、勝てない」という事を痛感させられることになった。例えば、溶接実習。あの絶妙な位置で、しかも片手で、トーチを保持していられるだけの腕の筋力が僕にはなかった。どうしてもぷるぷるするので、アークが安定しない。それがどうだろう、僕より細身に見える男の子は、平然と片手でトーチを保持していた。そりゃ、みんな素人だから下手くそだし、長時間やれば誰だって疲れてくる。とはいえ、そのようなことが立て続けに起きた。どうして、僕にはできない?例えば旋盤の四つ爪チャックを締める時だって、力が足りなくて、全力で絞めたのに先生に締めなおしてもらった始末で。その度に、先生方はま、仕方がないさ、と笑った。そして、こう言うのだ。
「女の子だからな、力が足りないのは仕方がない」
 ある意味、下手くそと言われるよりももっと、その優しい先生たちの言葉が辛かった。重い物持つのも平気だと思ってたのに。それでいて、こんなやって手伝ってもらってようやくで、「僕」だなんて。・・もっと嫌だったのは、周りより力が劣っているというその事実を、その辛かったのなんだの言った「女の子だから」という事を言い訳にして、傷ついた裏腹に仕方がないと握りつぶそうとしていたのだ。自分のプライドの為に。「まぁ女の子だから、わたしは・・・」だなんて、こんな、都合のいい時ばかり。
 酷く惨めで、滑稽だっだ。何が、僕だよ。「女の子だから仕方がない」だなんて言われた自分を可哀想がってるくせに、それを言い訳にして「できない」という現実から目をそらしてるんじゃないか。嫌だと辛いと言う割に、そこに安堵しちゃってさ。
 でももうちょい頑張ろうな、と去っていった先生の力強い背中を見て、部屋に帰るまでは絶対に泣かない、と唇を噛んだのが、1年生の時に突き付けられた一つの「観点」だ。

 とはいえ、この観点については、実は克服済みであったりする。というのも食費の為に始めたバイトはスーパーの品出し業務(レジもやったけど)であり、そこでは1ケース15kgの醤油の段ボールが届いたりするのが当たり前の日常なのだ。同じバイト先で勤め始めて2年半が経とうとするが、今年3月さらに重たい物が平然と届く青果部門の手伝いもするようになったため、何となく20kg(例えば玉ねぎ1ケース)くらいならよいしょよいしょと持ち運べる程度の腕力は付いている。そのおかげか、ある程度学校の加工実習では先生の手助けも要らなくなり、今は逆に力加減で注意されることの方が多いくらいだ。
 けれど、あの時の悲しみというか恐怖は、やはり消えはしない。というか僕が克服できたというのも恐らく体格差で生じる不都合の中でもごく一部であり、他にももっともっとたくさん、これから生きていく上で「男の子と同じようにはいかない事」が見つかっていくのだろう。そんな、逃れられもしない絶望のスタートを目の当たりにしたこと、これが僕の得た「観点」の一つだ。
 しかし、とりあえず3年生になった今、この体格という「観点」では不自由していないものの、新たに、下手したらこれよりももっと鋭く素早く僕に迫ってきた「観点」がある。まぁ、この時期独特というか・・なのだけれど。一過性という訳にはいかない、未来への足掛け。悪く言えば、これから続くことになるであろうことへの早急な準備。
 そう、就職活動という「観点」だ。
 自由なんてあっという間だな、と、僕をアングラなメンタルに突き落とした、スリラー映画の封切りである。・・はは、頭と体がちゃんと一致してれば多分こんな風には悩んでないだろうから、あくまでも「半端に頭と体の性別が食い違っちゃってる一人の人間の感覚」として、読んでくださいね。
 長くなってしまったので、二つ目の観点は次で。「たかがそんなことで絶望すんの?メンヘラかよw」と思ったそこの貴方、次の次以降の下らん日常ネタまでアクセスはお待ちください。ええ、でもアクセスはしてくださると、僕は嬉しい。
 あぁ、忘れておりました。念押し。これは、大変愉快痛快な笑い話です。

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