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拝啓パパへ、どうしたらちゃんとおとなになれますか?

Image by Olia Gozha

このストーリーは手紙仕立てとなってます。過去に投稿したストーリーの↓

精神障害の母とアル中の父から教えられた「実にシンプルな生きることの意味とは?」前編、後編

を読んで頂いた後にこちらを読んで頂くことをおすすめします。





拝啓 パパへ


私もすっかりパパがパパになっていた年齢になりました。パパどころか、もうおじいちゃんになっていた頃かもしれないですね。それなのに、いつまでもふがいないまま、毎日を過ごしています。結婚したらそれなりになるかとも想像していましたが、まったく変わりません。

私の年頃はパパは何をしていたんだろうかと思って、年齢早見表みたいなのを検索して、計算して調べてみました。その年は、私は小学校に入学、お姉ちゃんが高校卒業して家を出た頃でしたね。今の自分に置き換えて考えてみたら、想像するのも恐ろしいほど手の届かない別次元の世界のように感じるし、なぜだろうか震えてしまうほど、その事実に圧倒されてしまいます。

ママはその頃、完全にあたまがおかしくなって狂っていたように覚えているけど、パパはどうだったかな、まだお酒に溺れてはいなかったように記憶しています。もちろん、たくさん飲んでいたのは飲んでいたけど。当時、どんな想いでいましたか?そのことを聞くことができなかったこと、ちょっと後悔しています。いろんなプレッシャーとか自分との戦いとかあったはずなのに、どうやってそれらをやり過ごしていましたか?結局、最後はやり過ごすことができなくて、ぼろぼろになってしまっていたけど、それでもしらふのときには、穏やかで静かな仏のような表情をしていたことも頭のなかにちゃんと残っています。思い返したら、他人からどう思われるかなんて気にせず、自分のやり方を貫く良き父親でした。その分、酔っているときは、ひどい性格になっていたけれど、自分を貫くのってとても大変なことなんだと今はわかります。

後に考えると肝臓が悪いから歩くスピードが遅かっただけなのかもしれなかったけど、大人になった私も歩くのがとても遅いのです、そして静かに穏やかに笑います、背格好もそっくりだし、髪の毛の量までそろそろ似てきそうです。違っているとこといえば、当時のパパのように家族のために耐えることができず、つまらない遊びや気晴らしを使って、自分と向き合うことから逃げてばかりいます。どうしたら、ちゃんとおとなになれますか?甘い誘惑から逃げることができますか?逃げても逃げても忘れた頃にまた追いかけてくるのです。奇跡的に私にも分け与えられたこの目の前にある幸せたちを、日々大切にしていけば、いつかは報われるでしょうか?教えてください。

お姉ちゃんと会わなくなってから、たまにメールで「あなたはお父さんから、お母さんから愛されてるからね」と言っていたことに最近気づきました。そこには自分は愛されてないけどねという言葉が隠れているように感じました。もしかしたら、お姉ちゃんやお兄ちゃんも、もしかしたらママでさえ、そしてパパも、みんな愛に飢えていたのかもしれないとふと思いました。私は自分のことしか見えていなかったけど、みんな愛に飢えていて、家族は家族としての機能をなくしたまま空中を漂っていたのかもしれないと。実は、みな大人に見えていただけで、本当は弱い人だったのかもしれない。強いだけの大人なんていないのかもしれない。弱いまま、このまま生きていっていいのかもしれないと。でも、まだまだわかりません。ちょっとだけわかってきたような気はしています。

それに生まれてきてよかったと思ってます。人と違う経験もたくさんできたし、辛いこともあるけど、その分、うれしいこともあるから。そして、孤独だったパパには申し訳ないけれど、私には辛い気持ちを話せる人もいます。だから絶望と同時に希望も持ちあわせたりしています。苦しいなと思う回数は本当に減りました。それでもときどき襲ってくる苦しみ、寂しさ、悲しさは、もしかしたらパパを思い出すためなのかもしれません。パパのことがわかった分だけ、自分が優しい人になっていく気がするし、愛についてわかる気がしているんです。


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