ポストシリコンバレーの世界観(データエコノミー)

次話: ポストシリコンバレーの世界観(イノベーションセンターの分散化とWeb3.0の関連性)

世界のWeb3.0中心地であるベルリンの創業者やスタートアップ関係者と触れる中で考えている事を書いてみます。今回はいくつかのテーマと4回に分けて書いてみます。(かんたんに短く、専門用語極少。)

今回は2つ目のテーマ

  1. 暗号通貨は”必要な人”がいるから根強く広がっている(投機じゃない本当の価値)
  2. 世界一わかりやすいデータエコノミー(たぶん)
  3. イノベーションセンターは世界中に分散化している(Startup Genome:シリコンバレーのシンクタンクのレポートをみながら)
  4. 巨大市場を背景としたエクイティ経済の次(米中型じゃないやり方のごく一部の例)

背景:

ベルリンを中心に起きているあたらしいスタートアップの潮流をとおしてまだ日本に浸透してない”新しい働き方””新しい価値のつくりかた”を伝えたい。

日本で広まっている情報と、ベルリンのWeb3.0の渦中にいる立場で得る情報に大きく乖離があり、それを一部の専門家や起業家や技術者だけでなく、”ふつうの人”にわかりやすく、おもしろく伝えたい。

特にちまたにあるブロックチェーンやWeb3.0関連の話は難しい、難しすぎる。いまなお技術者しか分からない単語がギークなコミュニティで飛び交い、思想家しか分からない哲学がメディアで語られ、99%の人は”興味がない”/”つまらない”/”意味がない”/”だからなに?”となってしまっている。

元Google視点からシリコンバレーっぽさとベルリンぽさの違いを定性的に伝えて、GAFA/BATH一辺倒の日本の状況の偏り具合を伝えたい。

共著書: ネクストシリコンバレー(日経BP社)で書ききれなかった部分を書いています。

今回のテーマは2つ目

世界一わかりやすいデータエコノミー(たぶん)

データエコノミーに関しては色々な会社や団体が色々な説をいっていてまとまりがなく、むずかしい。10年前の黎明期のクラウドコンピューティングと同じでそれぞれがポジションを取りたがっている。

まず、あるサイトからの定義を引用

データエコノミーは、社会の中にある膨大なデータが価値を生み出す経済のことをいいます。これは、人の行動や企業の活動、機械の稼働などが生み出す膨大なデータを競争力向上やイノベーションに活かす新たな経済を指し、昨今では、人工知能(AI)やビッグデータ解析の実用化が進み、社会に及ぼす影響が大きくなっています。具体的には、広告や販促、商品開発、機器管理、与信判断、災害対策、選挙、日常生活などへとデータを活用する範囲が広がり、また将来的には、社会保障費の削減やインフラの管理、地域の活性化などにも期待されています。

こういう説明になるとわかりにくい。少なくともなにが変わったのか?なんでもっと理解する必要があるのか?難しい言葉でなく、簡単に話してくれる人が極端に少いのがこの界隈だ。

シンプルな説明だとこんなかんじになる。もちろん”正確”さを追求したものではないかもしれないが、ユーザー視点でなにがかわるのか?について

まず、UKに本拠地をおくVC、Fabric Venturesの資料にあるように

Web1.0はデスクトップとクラサバ

Web2.0はSNSとモバイル、クラウド

Web3.0はAIと分散型データアーキテクチャ(要は例えばブロックチェーン)とEdgeコンピューティング(要はIoT)

だという。これだけでもすごくわかりやすくなったけど、要はこのデータの部分で、データのオーナーが変わる、変わることによってこれまでのITサービスの運用のしかたががらっと変わる”予兆”がみえてそれにたいして多くのブロックチェーン企業が取り組んでいる(ICOやVC調達やプラットフォーマーのコンペや受託開発や企業研修で活動費用を捻出しつつ)

データのオーナーが変わるというのは

これまではGoogleやFBやAmazonなどの企業が、とても使い勝手がよくて思わず使ってしまう素晴らしいモバイルアプリを開発し、もちろんそれに加えてほとんどの企業はUXにこだわったみんなが使いたいサービスを提供するのだが(ビジネス視点で当たり前だが。。)

とりあえず使ってみよう→個人情報入力→無料でいろいろ情報をシステム上にアップデート、

そしてGAFA/BATHが情報(現在でいうお金)の巨大オーナーになるという仕組みが定着してきていた。もちろん、一般消費者のデータだけでなく、AWSやGCPやAzureやsalesforceに多くの企業のデータも、B2BもB2Cのデータも何億という世界中の企業を通して集約されてきた。

クラウドはとても便利で、導入企業側のリスクもすくなく、使いたい分だけコンピューターリソースを使え、デスクトップや自社サーバーで運用するより、セキュリティ対策もされてるというから企業から見れば、とっても最高であり、私自身も自信をもってそういったサービスを10年近く売り続けてきた。

私の記憶だと、クラウドも最初はブロックチェーンと同じく、弱者のツールだった。クラウド登場以前は多くの中小企業は安くて粗末なパッケージしかつかえず、クラウドは出た当時はソフトウェアの民主化であり、どんな企業サイズでも最高のソフトウェアを適正価格で使える革新的なサービスだった。成功した初のB2B専業クラウドだったsalesforceはサンフランシスコに市内で一番高い自社ビルを建てた。いまではIBMの時価総額を遥かに凌ぐ。(2020年1月現在)

一方でWeb3.0新しい仕組み上では、個人データを企業につかわせる権利のオーナーは個人にあり、データを渡した個人は、利用した企業へその対価として報酬を自動的に受け取る。(理想)つまり、データをいれたら、いれた人がお金をGoogleからもらえる、という仕組みに変わりつつある。”超”簡単にいうとこれがデータエコノミーだ。(諸説あるが例えば上の図にあるOcean Protocolの目指す路線はそうだ)

しかも、お金をもらえるというのは理論上は暗号通貨で、自動的に報酬を振り分けるプログラム(スマートコントラクト)によってソフトウェアでできたお財布(ウォレット)に入ってくるイメージだ。

これまでのGAFA的な企業が個人データで稼ぐっていうモデルは、私個人はそんなに悪いとは思っていない。対価として便利すぎるサービスが無料で使えるし、有名人でない無名人のデータに何処まで価値があるかは正直謎だ。

ただ、これを変えようとしているのが世界の法の番人ヨーロッパだ。そもそも巨大テックのデータ収集転売モデルは欧州の法の番人達からはもう数十年と目をつけられていたようだ。それがようやく形になったのがGDPRとも言える。

ラップトップのカメラにシールを貼っているのは大抵ヨーロッパ人だ。ヨーロッパは政治的、歴史的背景もあり、個人のプライバシー意識については日本人の感覚からすると異様に高い。これを良いとみるか悪いとみるかは受け取り側の立場次第だが、現状様々な国際規格がEUで多く作られている現状をみると巨大企業でもやらざるえないし、米カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)のようの法律もでてきて、世界の大きなながれとしてはデータは個人のものにもどそう、というとインテリっぽい風潮を作っている。

話を戻すとデータ=お金であることはWeb2.0から変わらないが、オーナーがGAFAの様なIT企業だったのが、Web3.0になると個人になる。そしてデータで稼ぐ(ここで仮想通貨をつかって、というパターンがでてくる)という概念が浸透してくるとサービスの設計自体がいままでと大きくかわってくる。

きれいごととして書くとこうなる。

1.仲介企業を中抜できるのでより個人同士の価値のやり取りが効率的にまわるようになる。

2.個人、企業、マシンがプライバシーポリシーとセキュリティを担保しながらAIのちからをかりてよりフェアに経済をまわせるようになる。

完全に個人的な見方だと、極端な株式資本主義でデータの所有者が極端によって独占がすすみ新規ビジネスが生まれなくなってしまうので一旦シャッフルしてルールつくって、あるべき姿に戻しましょうという動きともいえる。そしてわかりにくいのは、これをみるとこういうことかとわかる実際に動いて使えるものがまだ少なく、実感しにくいということ。理想としてはデバイスにデータをいれて企業がそれを使うと使った分の一部が暗号通貨でキャッシュバックされる、あるいは分配されるので利用者側にデータをいれるインセンティブが生まれるなのだ、実用化レベルまではまだけっこう時間がかかりそうだということ。

ひとつ、規制分野がなかなか整備されず、各国状況がことなり、Web3.0の前提である世界中どこでもシームレスに価値が移動できるレベルが難しいこと。

もう一つはプラットフォーム側の(例えばイーサリアムの)仕様がどんどんかわり資金力がないと開発者に根気強く開発をつづけてもらうことが難しいということ。

例えばIOTAというIoTのデバイスで使うデータをマネタイズするのに特化した暗号通貨とプラットフォームがあるが、現状ウォレットがあるだけで、ビジョンで実際にIoTにデータをいれて個人が稼げるところまではすすんでない。

一つにまだまだ中央データ集約型のGAFA/BATHモデルにユーザーがなれてしまい、アプリも非常に便利なため一般ユーザがなかなかついてこないのと、

暗号通貨が社会において現状よくもわるくも”弱者のツール”となっているため(そのためソーシャル・ビジネスと相性がいい)一般の投資家の資本があつまりにくい(Web3.0系に特化したものもあるものの)

GAFA/BATHモデルに乗っかっているビジネスがあまりにも多いため事業者側もなかなかついてこない、等が挙げられるのではないか。

とはいえ、当たり前のようにデータを無料で企業に渡すというのは、ある意味非常にスマートな企業側からの洗脳であり、ユーザーは慣れ親しんでしまっているものの、一部企業にデータが集約してしまうことで、ユーザー主導型のデータビジネスが生まれにくくなっているのはある意味進歩を阻害されているともいえる。

GDPRに加えカリフォルニア州消費者データ保護法等もできて、データ企業大手も新しいデータ方に基づいたビジネスを模索している様にみえるので、まだ時間はかかるものの5〜10年かけてゆっくりじっくり、変化していくように思われる。


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