道草物語 第二話

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まず僕たちは物件を探し始めた。事業計画もお金のことも随分後回しにした。ちなみに貯金なんざない。貯金しない理由は、妻曰く「今を生きてるから」だそうだ。なんて都合の良い言葉なんだろう。え?僕が貯金しない理由?今を生きてるからだよ、わかるでしょ。
物件を探すために、仕事終わりや、休日、すべての空き時間をつかって、徒歩で行けるところまで行った。「へぇ、こんなところに可愛いお店ある」なんて発見の連続だったけれど、肝心の物件は発見できないままだった。僕はこのまま見つからなければ良いのに、と少し思ってしまった。だって見つかってしまったら夢物語が現実になってしまう。お金もすごくかかるし、いろいろ大変な思いをするんだろう。それなら見つからなければいいのに、って。
それから半年。もう潮時かと思っていたら、妻から「見つけた」とLINEがきた。それを読んだ僕は猛スピードで後ろを振り返った。軽く悲鳴も出たと思う。だって怖いじゃん。急に「見つけた」ってLINEきたら誰だって後ろを確認して身の安全を確保すると思う。僕はそうした。よく読んでみると見つけたのは僕のへそくりや、隠してたプリンのことではなく、物件のことだった。そうか、物件ね。はいはい。え?見つけたの?
不安が僕の全身を優しく抱きしめてくれた。夢物語が現実になろうとしている。グッナイ。

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