道草物語 第八話
さて物件。まだ見つからない。まだまだ見つからない。気がつけば2018年12月である。笑ってはいけないシリーズのニュースが流れ、紅白の出場歌手でSNSは盛り上がり、今年の流行語はピンとこないものばかり、挙げ句の果て流行語として発表されてから流行りだすような悲惨な光景を横目に、今日も元気に物件探しである。
みなさまは、東大宮東口の線路沿いにあった「麻こころ茶屋」というお店は知っているだろうか。僕らがこっちにきた時にはもうなかったのだが、お友達の一人がそこで働いていて、「あそこの物件、多分空いてるよ。すっごく素敵だし、たぶん2人とも好きだと思う!」とのこと。さっそく麻こころ茶屋さんの跡地へ向かう。1年かけてこの辺りはくまなく探索したつもりだったが、まだまだ知らないことだらけだ、なんて思うと楽しくなってきた。
跡地に着くと本当に空いている。いや、空いているのだが「テナント募集」の看板がない。なんだか嫌な予感がしつつも、その立地は本当に好みだった。奥まったアプローチ。白い柵と白い砂利。ここだ。ここでやりたい。妻の顔をみると、恵比寿様よろしく、ニヤニヤが止まらないご様子。さっそく近隣店舗の方に聞き込みをして、管理している会社様を紹介してもらうことにした。
内見当日。
いい広さだ。二階もある。確かに年季は入っているが、まだなんとかなりそう。イケる。イケるぞ。はぁ、やっと物件探しに終止符が。長かったなぁ、と涙を浮かべていると担当の方が「ここ、取り壊しになるので貸せないんですよ。取り壊しまでの間でよければお貸しできますが、あまりオススメはしないです」
アーメン。先は長いぜ。
後日談となるが、僕らのお店によく麻こころ茶屋さんの常連さんだった方が、何人も来てくださる。ちょっと嬉しい話。
著者の司 安藤さんに人生相談を申込む
著者の司 安藤さんにメッセージを送る
メッセージを送る
著者の方だけが読めます